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第三章 事業発展編

第111話 終息

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 フィーネの勇気ある行動によって、ロイの体内に膨大な魔力が注ぎ込まれていった。

 ロイの目はその力の奔流に大きく見開かれ、新たな力に燃え、疲れの色は一掃された。

 そして得も言われぬ恍惚と快楽が襲ってきた。
 興奮にその唇を蹂躙するのを堪えるのが辛いほどに。

【この女を犯し蹂躙せよ!その力が貴様にはある。我に身を委ねるならばさらなる快楽を約束しよう!】

 頭の中に悪魔のような囁やき声が響く。
 魅惑的で抗いがたい誘惑。

 理性を総動員しなければ、目の前の女の服を破り捨て、その柔肌を蹂躙しかねないほどの誘惑が襲いかかっていた。

 初めて見る魔法学園の生徒。
 魅惑的な顔立ち。
 一言で表せば美人だ。
 そんな美人と唇を重ね興奮しないはずはない。
 それを無理やり抑えなければ己が怪物になる。
 魔力譲渡、特に効率の良いやり方ほど理性が飛びかねないと知っていたが、その奔流は予想より激しかった。

 彼女は目の前の男が力に振り回され、理性を保てなければ己がどうされてしまうか分かった上で、接吻による魔力の譲渡を選んだ。

 理性が勝ったロイは、よだれを拭いながら立ち上がる。
 ロイは周囲にいる仲間や兵士に向けて一言発すした。

「みんな、もう大丈夫だ。俺が前線を守るから背後を引き続き頼む。町の守りを固めてくれ」

 そのように力強く宣言した。

 そしてその恍惚から抜け出し周りの女性に助け起こされたフィーネの姿を見て、微笑みながら倒れた魔道士たちのもとへ駆け寄る。
 そして魔力切れ寸前で何とか意識を保っている者たち一人一人へ感謝の言葉を述べていく。

 東門に取り付いた魔物は一旦排除し、第3陣に備える。

 ロイは再び東門の前に立ち、今度はさらに強化された魔力で魔石を抜き取る速度を上げる。彼の手から放たれる魔力は、魔石を瞬時に抜き取り、次々と魔物を倒していく。

 門の外からみれば異様な光景だ。
 直前まで力を持て余し、暴れまわっていた魔物が獲物を目の前にして次々と崩れ落ち、動かなくなるのだ。

 その様子を見たスタンピードの先頭にいた高位の魔物たちは、恐怖を感じ始め動きが鈍くなる。
 魔物にはほとんど理性がないと言われているが、上位の存在の中には理性や恐怖の感情を強く持つ個体がいてそれらが魔物を率いる事がある。

 一方、初老の魔法師はエリナが指摘した危惧を受け、さらに土の壁を高く、厚くする魔法を展開。その壁は次第に魔物たちが乗り越えられない高さとなり、東門への直接的な脅威を遮断することに成功する。

 フィーネが魔道士たちと共に魔力を譲渡したおかげで、ロイたちの戦況は好転。スタンピードの勢いは次第に衰え、魔物たちの間には混乱が広がる。

 その時、空から一筋の光が降り注ぎ、騎士団の本体が到着する。彼らは天を割るかのような勢いで魔物たちを一掃し始める。ロイは一瞬の安堵を感じつつも、すぐに騎士団の先頭に駆け寄り、共に戦いを指揮する。

 また、ようやく城の方からの集団魔法が発動したのだと分かる。
 ロイたちはそれらが発動するまでの時間稼ぎをすれば勝てたのだ。
 ただ、城へ魔物が到達すれば、集団魔法が発動することもなかっただろう。

 情け容赦ない攻撃が魔物を飲み込んでいき、一部の魔物以外駆逐した。
 その生き残った一部は狡猾で、他の魔物を肉の盾として生き残ったのだ。

 それらは尻尾を巻いて逃げ去ったが、己より下位の魔物を置き去りにしていた。

 戦いが終わりに近づいていたが、いつの間にか夜が明け、朝日が地平線から昇ってきていた。
 その光の中で、ロイとフィーネ、魔法師たち、そして騎士団は互いに助け合い、困難を乗り越えたことを実感し、新たな絆が生まれたことを確信するのだった。

 戦いが終わったと確信するとソニアやミンディー、エリナも防壁を降りロイのもとに駆け寄った。

 そしてロイはフィーネに向かって頭を下げた。

「君の勇気がなければ、この勝利はなかった。感謝する」

 ロイが言葉をかけると、フィーネは少し照れくさそうにしながらも堂々と答えた。

「私たちみんなで守ったのです。これからも、どんな困難があっても、一緒に乗り越えていきましょう」

 そんな彼女の言葉に、ロイは心からの納得と、これからの未来に対する希望を感じたが、急激に目眩がしてきてフィーネを押し倒す形で倒れ込んだ。
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