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第三章 事業発展編

第108話 指示

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 ロイは唸っていた。

『どうしてこうなった?』

 そう、ありふれた、【何故こうなったのか?】という呟きだ。
 どうしてこんなことになってしまったのか?ロイは心の中で苦笑しながら、再びスタンピードに対処し、しかも陣頭指揮を取っている自分の状況を振り返った。

 まさかまたこんな大混乱に巻き込まれるとは思わなかった。
 何故陣頭指揮をしているのか?
 王都の中にいる限り、建物の外に出る時に爵位を示す徽章や馬車に紋章をつける。
 それにより爵位持ちの責務を果たさざるを得なかった。
【力ある者は弱気を助け、平安と繁栄をもたらすべし!】

 守らない貴族が多い中、新任貴族だからではなく性分として、本質的にその原則に従った。

 ただ、助けることができたはずの1人の女性を見捨てた。
 多分死んだだろう・・・
 よりお奥の人を助けるために、誰かを犠牲にしたり、今回のように見捨てる選択を迫られ・・・決断した。
 悔しいが、より多くの人を救う門の安全確保に動くしかなかった。
 今のロイに両方を選んで実行出来るだけの力の持ち合わせはない。
 二兎を追っても・・・である。


 門を閉め、一先ず安全を確保し、第2陣の襲来に備えようとした。

 その時、不意にミネアが護衛の騎士と共に現れた。彼女はロイを門のところに見送りに来ていたらしく、なし崩し的に巻き込まれていた。
 そして難しい顔をしているロイにそっと近付くと、その腕に触れると話しかけた。

「先程の女性は私が助けました。既に治療を行い安全なところに送りました」

 ミネアが報告し、言葉を続ける。

「私も魔法が使えます!」

 ロイに杖を見せると、そう言えば学園に通っていたな!魔法学園だからそれなりに魔法を使えるのか・・・見たことがないから実力は分からないが、今は1人でも戦える者が欲しい。

「分かった。決して無理をするなよ。じゃあソニア、エリナと共に防壁の上から魔物を倒して欲しい。出来れば防壁の上にいる者に対し指揮してくれ。ミランダ、君は3人を守ってくれ」

 ロイがミランダ、ソニア、エリナと共にミネアに防壁の上からの攻撃をお願いすると、4人は移動を開始し始めた。

 ミランダは3人を守る盾としての役割を果たし、ロイは門に張り付き、魔物が取り付いたら即座に魔石を抜き取る作業に集中した。

 少しするとロイは、近くの兵士に向かって叫んだ。

「誰か城に戻り、俺に魔力を供給するためのギフト持ちを至急連れて来てくれ!」

 その間、ロイはベリーズとリラに自分の護衛を頼んだ。リラが盾で防御し、ベリーズが盾と剣を駆使して対処する。この連携により、ロイは魔石抜き取りに専念することができる。

「よし、みんな!もう少しだ!押し返すぞ!」 

 ロイの呼びかけに、仲間たちは一層の奮闘を見せた。

 魔法による攻撃が防壁の上から降り注ぎ、ミネアはミランダに守られながら的確に指示を飛ばす。
 どの魔法をどの方面に飛ばすか?
 なるべく門の正面に魔物を集めるようにだ。

 ソニアとエリナの攻撃も効果的に魔物を削っていた。

 ロイは息をつきながら、再び魔石抜き取りに集中する。

「今度もスタンピードを食い止めるんだ・・・!」

 心の中で強く誓いながら、ロイは仲間たちと共に戦い続けた。 
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