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第二章 美容薬販売編

第67話 放火未遂

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 夜が更けると、リックガント魔法道具店の周辺は静かな時間を迎えるはずだった。
 だが、その平和を乱すように、暗闇の中で火をつけようとする不審な人影が現れた。
 店の安全と大切な商品を守るため、警戒していたロイたちは即座に行動に移った。

 不審な気配を探っており、反応があったのだ。
 その者たちは工房の裏手に置いてある空の木箱に火を放ったのだ。

 ロイたちの迅速な対応により、即座に火は消し止められ、お陰で火災を未然に防ぐことができ、不審者は逃走した。
 しかし、予め指示してあったように、ミランダがその者たちの後を尾行していた。
 晶石の舞の中で唯一斥候が可能なのがミランダなのだ。

 サイラー商店の裏手に入っていったのを確認すると、ミランダは戻ってきた。

「ロイの様の睨んだ通りだったぜ!奴等サイラー商店の裏口から中に入っていきやがった!」

「ありがとうミランダ」

 ロイが頭をくしゃくしゃと撫でると、ミランダはにたぁっとして満足そうだった。言葉遣いをなんとかして欲しいところだが、言わないロイだった。

 この事件は、リックガント魔法道具店にとって安全対策を再考するきっかけとなったが、全ては想定外で、後手後手に。

 一方、ヴィーナスラヴェール販売2日目は、客足の増加を予測していた。今の店は完全に手狭になっているし、行列により近隣への迷惑を考えなければならない。ただ、悪い話ばかりではない。最初こそ、近隣の店から自分の店の前にも人が並んでいると文句が入ったが、結局ついでに近隣の店を覗いて帰るものだから、客足と売上も伸びたのだとか。

 反対に翌朝は自分の店の宣伝を兼ねているものの、行列の整理に協力さえし、近隣の商店は相乗効果に湧いていた。

 とはいえ、リックガント魔法道具店の状況を打開するため、そして、より多くの顧客のニーズに応えるために、化粧品をメインとした2号店の出店計画が急ピッチで進められることになった。

 タニスはこの新たな挑戦のために、特別に引っ張ってきた人材だった。彼女のリーダーシップと、新店のメンバーとなるリラの妹たちの協力により、準備は着々と進められてはいた。だが、先ずは今の店で慣れてからの予定だった。完全な新規の店は難しく、あくまで2号店とするのが好ましいと判断していた。

 それもあり石造りの店を借りて、看板の準備までしか出来ていなかった。内装は小綺麗だがまだ棚の一つもなかったのだ。

 2号店の出店に向けて、ロイたちは市場調査から商品の選定、店舗デザインに至るまで、多岐にわたる準備を行った。

 特に化粧品に特化したことで女性客を中心に、新たな顧客層の獲得が期待された。
 この準備はこの町に住む女性にとって別の意味で良い結果をもたらすとはこの時、誰も想像していなかった。
 ミラクル、つまり奇跡に繋がる・・・ 
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