16 / 125
序章
第16話 冒険者登録と新たな船出『晶石の舞』
しおりを挟む
帰還した後2日は休みとなっており、解体場の仕事は夕方に顔を出すだけで良いと言われていた。アイアンランクへ冒険者になる許可を得たロイは、アイアンランクの冒険者であるソニアと共に、正式にパーティーを組むことを決意した。二人はギルドの規定に従い、ロイの冒険者登録と、パーティー申請、ホーンラビットの常時納品依頼を受けるためにギルドの受付へ向かった。
いつものように受付の行列に並んだ彼らの並ぶ先には、リラがいた。
彼女はギルド職員の中でも最底辺と見なされている解体場のロイを以前から役立たず、グズだのと散々馬鹿にし、言葉で足蹴にしてきた過去がある。
職員の格好ではなく、剣を携えた姿を見たリラの目は大きく見開かれた。きのうのことで恨まれており、腹いせに来たのかと感じ、驚愕で唸り声を漏らす。
「ひぃ~」という小さな声だったが、周りの冒険者たちの耳に入る。
人気の受付嬢で、それらは取り巻きという名のストーカー予備軍だ。
その声に反応して、ロイがリラに絡んでいると勘違いしたそれらの冒険者たちが、リラに相対している位置にいるロイに向かって怒鳴り始めた。
「おい、お前、何をリラちゃんに絡んでんだ!死にてぇのか?」
「何だとゴルアァ!ふざけてんじゃねえ!」
怒鳴り声が飛び交うが、ソニアはすぐに状況を把握し、冷静に仲裁に入った。
ロイとその冒険者の間に両手を広げ、割って入ったのだ。
「誤解です!大丈夫です!ロイさんは何もしていません。多分普段の格好と違うから少し驚いただけだと思いますよ。単に手続きをしにきただけですから。何でしたら私が代わりに手続きをしますから。それにリラさんは時折私も受取をしてもらっていますし、いざとなれば私が間に入りますから・・・」
ソニアは周りの冒険者たちをなだめた。
リラはソニアの思いがけない優しさにさらに驚き、今までの自分の行いを恥じ入るように下を向いた。
彼女にも馬鹿にしたように冷たくぶっきらぼうに接していたのだ。
正確にはソニアをこき使う冒険者が苦手で、関わりを持とうとしなかったのだ。
特にロイにはきつく当たっていたので、昨日のことと相まって嫌がらせにでも来たのだと勘違いしたのだ。
周りの冒険者はロイをジロリと睨み、何かあったら殴りかからんばかりに睨みを効かせ引き下がった。
「あっ、その、ごめんなさい。驚かせてしまったようですね。えっと、今日は解体場の仕事は夕方だけなんで、今は冒険者活動をする為に来ました。僕の冒険者登録をお願いします。また、ソニアとパーティーを組むので手続きをお願いします。はい、これ、ギルドマスターからの許可証です」
リラは許可証を見ると驚く。
「う、うそっ!?」と声を上げる。
「てめぇ!やっぱり何かしてやがるな!」
「あっ!ジルさん、違うんです。書類に驚いただけですから。はい、大丈夫です!大丈夫じゃないときはキャーと悲鳴を上げますから」
リラはその後は粛々と受付業務をこなし、ロイは正式に冒険者となった。次にパーティー申請を済ませたが、パーティー名は『晶石の舞』とした。(ショウセキノマイ)
リラにパーティー名は?と聞かれ、ロイが考え込んでいると、ソニアが候補をつぶやいた。しかし、ロイはそれだ!と即決したのだ。
そしてホーンラビットの納品依頼を受注した二人は、これまでの自分たちの立ち位置が変わったことを実感する。ソニアはロイの寛大さを見て、新たなパートナーとしての信頼を深めた。
「ところで、パーティー名はかっこよかったからソニアのつぶやいたのにしたけど、どういう意味があるの?」
「『晶石の舞』という名前は、私たちの冒険が魔石のように輝かしく、そして美しく舞い上がることを願って。それに、晶石は強くて美しいけれど、簡単には手に入らない。私たちもそうなりたい。困難を乗り越えて、誰もが憧れる存在になるんだ!それに、この名前は私たちの旅が、ただの戦いだけじゃなく、人生のダンスのようなものだってことを思い出させてくれるわ。どんな時も、一緒に踊り続けようねって」
「うん。良い名だね!これからはお互いを支え合って、一歩一歩前進していこう」
ロイは力強く言い、ソニアも同意の頷きを返す。リラの態度の変化もあり、特にロイを知るギルド職員たちも二人の新しいスタートを暖かく見守った。
これが、ロイとソニアの新たな冒険の始まりだった。彼らの前には数多くの試練が待ち受けているが、二人の絆と決意は、これからの道を切り開いていく力となるのだった。
序章完
後書き失礼します。
これにて序章は終わり、次から冒険者編として物語が大きく動きます!宜しくお願いします!
また、【お気に入り登録】をお願いします。お気に入り登録が作者の励みになります。少しでも面白い、先を読みたいと思って頂けると幸いです。
いつものように受付の行列に並んだ彼らの並ぶ先には、リラがいた。
彼女はギルド職員の中でも最底辺と見なされている解体場のロイを以前から役立たず、グズだのと散々馬鹿にし、言葉で足蹴にしてきた過去がある。
職員の格好ではなく、剣を携えた姿を見たリラの目は大きく見開かれた。きのうのことで恨まれており、腹いせに来たのかと感じ、驚愕で唸り声を漏らす。
「ひぃ~」という小さな声だったが、周りの冒険者たちの耳に入る。
人気の受付嬢で、それらは取り巻きという名のストーカー予備軍だ。
その声に反応して、ロイがリラに絡んでいると勘違いしたそれらの冒険者たちが、リラに相対している位置にいるロイに向かって怒鳴り始めた。
「おい、お前、何をリラちゃんに絡んでんだ!死にてぇのか?」
「何だとゴルアァ!ふざけてんじゃねえ!」
怒鳴り声が飛び交うが、ソニアはすぐに状況を把握し、冷静に仲裁に入った。
ロイとその冒険者の間に両手を広げ、割って入ったのだ。
「誤解です!大丈夫です!ロイさんは何もしていません。多分普段の格好と違うから少し驚いただけだと思いますよ。単に手続きをしにきただけですから。何でしたら私が代わりに手続きをしますから。それにリラさんは時折私も受取をしてもらっていますし、いざとなれば私が間に入りますから・・・」
ソニアは周りの冒険者たちをなだめた。
リラはソニアの思いがけない優しさにさらに驚き、今までの自分の行いを恥じ入るように下を向いた。
彼女にも馬鹿にしたように冷たくぶっきらぼうに接していたのだ。
正確にはソニアをこき使う冒険者が苦手で、関わりを持とうとしなかったのだ。
特にロイにはきつく当たっていたので、昨日のことと相まって嫌がらせにでも来たのだと勘違いしたのだ。
周りの冒険者はロイをジロリと睨み、何かあったら殴りかからんばかりに睨みを効かせ引き下がった。
「あっ、その、ごめんなさい。驚かせてしまったようですね。えっと、今日は解体場の仕事は夕方だけなんで、今は冒険者活動をする為に来ました。僕の冒険者登録をお願いします。また、ソニアとパーティーを組むので手続きをお願いします。はい、これ、ギルドマスターからの許可証です」
リラは許可証を見ると驚く。
「う、うそっ!?」と声を上げる。
「てめぇ!やっぱり何かしてやがるな!」
「あっ!ジルさん、違うんです。書類に驚いただけですから。はい、大丈夫です!大丈夫じゃないときはキャーと悲鳴を上げますから」
リラはその後は粛々と受付業務をこなし、ロイは正式に冒険者となった。次にパーティー申請を済ませたが、パーティー名は『晶石の舞』とした。(ショウセキノマイ)
リラにパーティー名は?と聞かれ、ロイが考え込んでいると、ソニアが候補をつぶやいた。しかし、ロイはそれだ!と即決したのだ。
そしてホーンラビットの納品依頼を受注した二人は、これまでの自分たちの立ち位置が変わったことを実感する。ソニアはロイの寛大さを見て、新たなパートナーとしての信頼を深めた。
「ところで、パーティー名はかっこよかったからソニアのつぶやいたのにしたけど、どういう意味があるの?」
「『晶石の舞』という名前は、私たちの冒険が魔石のように輝かしく、そして美しく舞い上がることを願って。それに、晶石は強くて美しいけれど、簡単には手に入らない。私たちもそうなりたい。困難を乗り越えて、誰もが憧れる存在になるんだ!それに、この名前は私たちの旅が、ただの戦いだけじゃなく、人生のダンスのようなものだってことを思い出させてくれるわ。どんな時も、一緒に踊り続けようねって」
「うん。良い名だね!これからはお互いを支え合って、一歩一歩前進していこう」
ロイは力強く言い、ソニアも同意の頷きを返す。リラの態度の変化もあり、特にロイを知るギルド職員たちも二人の新しいスタートを暖かく見守った。
これが、ロイとソニアの新たな冒険の始まりだった。彼らの前には数多くの試練が待ち受けているが、二人の絆と決意は、これからの道を切り開いていく力となるのだった。
序章完
後書き失礼します。
これにて序章は終わり、次から冒険者編として物語が大きく動きます!宜しくお願いします!
また、【お気に入り登録】をお願いします。お気に入り登録が作者の励みになります。少しでも面白い、先を読みたいと思って頂けると幸いです。
502
お気に入りに追加
1,807
あなたにおすすめの小説
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!
八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。
『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。
魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。
しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も…
そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。
しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。
…はたして主人公の運命やいかに…
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた
砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。
彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。
そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。
死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。
その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。
しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、
主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。
自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、
寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。
結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、
自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……?
更新は昼頃になります。
【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる