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序章

第16話 冒険者登録と新たな船出『晶石の舞』

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 帰還した後2日は休みとなっており、解体場の仕事は夕方に顔を出すだけで良いと言われていた。アイアンランクへ冒険者になる許可を得たロイは、アイアンランクの冒険者であるソニアと共に、正式にパーティーを組むことを決意した。二人はギルドの規定に従い、ロイの冒険者登録と、パーティー申請、ホーンラビットの常時納品依頼を受けるためにギルドの受付へ向かった。

 いつものように受付の行列に並んだ彼らの並ぶ先には、リラがいた。
 彼女はギルド職員の中でも最底辺と見なされている解体場のロイを以前から役立たず、グズだのと散々馬鹿にし、言葉で足蹴にしてきた過去がある。

 職員の格好ではなく、剣を携えた姿を見たリラの目は大きく見開かれた。きのうのことで恨まれており、腹いせに来たのかと感じ、驚愕で唸り声を漏らす。

「ひぃ~」という小さな声だったが、周りの冒険者たちの耳に入る。
 人気の受付嬢で、それらは取り巻きという名のストーカー予備軍だ。

 その声に反応して、ロイがリラに絡んでいると勘違いしたそれらの冒険者たちが、リラに相対している位置にいるロイに向かって怒鳴り始めた。

「おい、お前、何をリラちゃんに絡んでんだ!死にてぇのか?」

「何だとゴルアァ!ふざけてんじゃねえ!」

 怒鳴り声が飛び交うが、ソニアはすぐに状況を把握し、冷静に仲裁に入った。

 ロイとその冒険者の間に両手を広げ、割って入ったのだ。

「誤解です!大丈夫です!ロイさんは何もしていません。多分普段の格好と違うから少し驚いただけだと思いますよ。単に手続きをしにきただけですから。何でしたら私が代わりに手続きをしますから。それにリラさんは時折私も受取をしてもらっていますし、いざとなれば私が間に入りますから・・・」

 ソニアは周りの冒険者たちをなだめた。

 リラはソニアの思いがけない優しさにさらに驚き、今までの自分の行いを恥じ入るように下を向いた。
 彼女にも馬鹿にしたように冷たくぶっきらぼうに接していたのだ。
 正確にはソニアをこき使う冒険者が苦手で、関わりを持とうとしなかったのだ。
 特にロイにはきつく当たっていたので、昨日のことと相まって嫌がらせにでも来たのだと勘違いしたのだ。

 周りの冒険者はロイをジロリと睨み、何かあったら殴りかからんばかりに睨みを効かせ引き下がった。

「あっ、その、ごめんなさい。驚かせてしまったようですね。えっと、今日は解体場の仕事は夕方だけなんで、今は冒険者活動をする為に来ました。僕の冒険者登録をお願いします。また、ソニアとパーティーを組むので手続きをお願いします。はい、これ、ギルドマスターからの許可証です」

 リラは許可証を見ると驚く。

「う、うそっ!?」と声を上げる。

「てめぇ!やっぱり何かしてやがるな!」

「あっ!ジルさん、違うんです。書類に驚いただけですから。はい、大丈夫です!大丈夫じゃないときはキャーと悲鳴を上げますから」

 リラはその後は粛々と受付業務をこなし、ロイは正式に冒険者となった。次にパーティー申請を済ませたが、パーティー名は『晶石の舞』とした。(ショウセキノマイ)

 リラにパーティー名は?と聞かれ、ロイが考え込んでいると、ソニアが候補をつぶやいた。しかし、ロイはそれだ!と即決したのだ。

 そしてホーンラビットの納品依頼を受注した二人は、これまでの自分たちの立ち位置が変わったことを実感する。ソニアはロイの寛大さを見て、新たなパートナーとしての信頼を深めた。

「ところで、パーティー名はかっこよかったからソニアのつぶやいたのにしたけど、どういう意味があるの?」

「『晶石の舞』という名前は、私たちの冒険が魔石のように輝かしく、そして美しく舞い上がることを願って。それに、晶石は強くて美しいけれど、簡単には手に入らない。私たちもそうなりたい。困難を乗り越えて、誰もが憧れる存在になるんだ!それに、この名前は私たちの旅が、ただの戦いだけじゃなく、人生のダンスのようなものだってことを思い出させてくれるわ。どんな時も、一緒に踊り続けようねって」

「うん。良い名だね!これからはお互いを支え合って、一歩一歩前進していこう」

 ロイは力強く言い、ソニアも同意の頷きを返す。リラの態度の変化もあり、特にロイを知るギルド職員たちも二人の新しいスタートを暖かく見守った。

 これが、ロイとソニアの新たな冒険の始まりだった。彼らの前には数多くの試練が待ち受けているが、二人の絆と決意は、これからの道を切り開いていく力となるのだった。

 序章完


後書き失礼します。
これにて序章は終わり、次から冒険者編として物語が大きく動きます!宜しくお願いします!
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