外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow

文字の大きさ
上 下
6 / 125
序章

第6話 咲かせたい花 - 約束の始まり

しおりを挟む
 アルディスの町は朝の光に包まれていた。ロイがこの町に来てから早、2ヶ月が経過しようとしていたが、いつものように解体場での仕事をすべく、ギルドの扉をくぐり抜けた。
 しかし、今日はいつもと違う。ロイの心はある計画に向けて高鳴っていた。その日、ロイは休みの日にソニアの薬草採取に同行する約束をするつもりだった。
 彼女は時折ポーターの仕事をするが、主に薬草採取で生計を立てていた。

 ソニアは、ギルドに来る冒険者やサポートメンバーの中で一際目立たない存在だった。彼女の服はいつも古く、肌の手入れもろくにされていない。しかし、ロイは彼女の真価を知っていた。食事の時に聞くソニアの話から、薬草に関し、誰にも負けない知識を持っているのだ。

「ソニア、ちょっといいかな?」

 ロイは食事の最中に話しかけた。
 この頃になるとソニアさんからソニアに変わっていた。

 今では2日に1日は夕食を一緒に食べている。毎度遠慮されるが、一人では淋しいからと、僕の都合だからと誘っていた。ただ食べ、その日のことを話すだけだが、その時間が高級レストランの食事以上の何よりのごちそうだ。
 店も気取ったところではなく、最低ランクの安い大衆食堂なので、女性をエスコートするような場ではない。単なる飯食って帰るか!のノリに近い。
 そんな中改まって聞いたのでソニアは驚いたように顔を上げた。

「あ、ロイさん。どうかしましたか?」

「実はね、僕、明日休みなんだ。もしよかったら、薬草採取に僕も一緒に行かせてくれないかな?」

 ロイの目は真剣そのものだった。

 ソニアは少し戸惑いながらも、彼の提案に興味を示した。

「でも、私、いつも一人ですし、ロイさんに迷惑をかけたくないのですが、その、良いのですか?」

「いや、迷惑なんて全然思わないよ。むしろ、ソニアの知識から学びたいんだ。それに、もし何かあったら君を守れるように剣も持っていくから」

 ロイは優しく微笑んだ。

 ソニアは少し考えた後、頷く。

「わかりました。それでは明日の朝、東の門で待ち合わせしましょう」

 約束を交わした二人は、それぞれの準備に取り掛かった。ロイはソニアとの薬草採取がただの作業ではなく、彼女との絆を深める大切な一歩になることを感じており、今では友達以上の感情を持っていた。

 翌日、朝の光がアルディスの街を柔らかく照らし始めた頃、ロイはソニアとの薬草採取に向けて準備をしていた。ロイの心は、共に過ごす時間への期待でいっぱいだった。ソニアは普通の冒険者よりも早く出て、薬草採取に最適な場所へと向かうため、ロイはギルドの裏手で彼女を待っていた。

「おはよう、ソニア。今日はいい天気で、薬草採取には最適な日だね」

 ロイが明るく挨拶を交わすと、ソニアは小さく微笑んだ。

「おはようございます、ロイさん。今日は特に必要な薬草があるんです。」

 ソニアの声にはいつもの仕事への真剣さがにじんでいた。

 ロイはリュックに水筒と食料、そして応急処置用のキット、非常用に回復ポーションを詰め込んでいた。ソニアの昼食も忘れない。彼はソニアのためにも、万全の準備を整えたかった。ソニアもまた、自分のバスケットに丁寧に薬草を入れるための布と、採取用の小さな鎌を持っていた。

「ソニア、森の中は予期せぬことがあるかもしれないから、僕が剣を持って守るよ。」

 ロイがそう言うとソニアは、頬を赤らめながら感謝の意を込めて頷いた。
 戦闘向きの加護を持たないと言っているが、体は鍛えており、剣の構えはいつも同行する冒険者より洗礼されている。
 騎士の子というだけあり、技術はあるというのも頷ける。

 二人は町を出ると街道を外れ、薬草が豊富に生い茂る森へと足を進めた。
 道中、ソニアは薬草採取のための知識をロイに共有し始めた。

「目的の森にはヒーリングハーブや、フィーバーリーフがたくさんあります。ヒーリングハーブはその名の通り、傷の治癒を助ける効果がありますし、フィーバーリーフは発熱を抑えるのに役立ちます。姿は…」

 ロイは興味深くソニアの話を聞きながら、彼女の知識の深さに改めて驚かされた。彼はソニアがどのようにしてこれほどまでに薬草に詳しくなったのか、その過去に思いを馳せた。

 森の入口に差し掛かると、ソニアはロイに向かって言った。

「ここから先は、私がよく知っている場所です。薬草の種類によっては、日陰を好むもの、日光を好むものがあるので、それに注意しながら探さないといけません」  

「うん。色々教えてね!」

 森の縁に立ちさあ、ひと仕事しようとソニアとロイは、緑の中へと歩を進める。
 木々の間を縫うように小道が続いており、その先には薬草が自生する一角が広がっていた。春の息吹が森全体を包み込み、新緑の葉が日差しを受けてキラキラと輝いている。そんな中、二人は会話を交わしながら、目的地へと足を運んだ。

「この森は昔から薬草の宝庫として知られてるんだよ」ソニアが教えてくれる。

「へえ、まるで秘密の庭園だな。」

 ロイが周囲を見渡しながら感心する。

 薬草を探して歩くソニアの足取りは軽やかで、時折しゃがんでは葉の裏を覗いたり、土を掘り返したりしていた。彼女の手際の良さに、ロイはただ見守ることしかできないが、その姿に心を奪われていく。

「この葉っぱを見て!触るとちょっとひんやりするでしょ?」

 ソニアが一枚の葉をロイに差し出す。

「本当だ。涼やかな感触だね。」  

 ロイは葉を触りながら応じた。

 彼女はそっと葉を取り、自分の手の甲に軽く押し当てる。その姿はまるで、古の知恵を引き継ぐ賢者のようだった。

「ソニア、君は本当に色んなことを知ってるなあ。」

 ロイが感嘆の声を漏らす。

「ううん、まだまだだよ。でも、少しでもこの知識が役立てば嬉しいな。」

 ソニアが控えめに微笑む。

 夕暮れ時、二人は重たくなった荷物を持ちながら、同じ小道を戻る。と言っても、荷物は異空間収納の中だ。ロイはたまに視線を彼女に向け、その表情からソニアの心の内を読み取ろうとする。一方のソニアも、彼の視線に気づきながらも、それを優しく受け止める。

「今日は本当に楽しかったよ。ありがとう、ロイ」

 ソニアが感謝の言葉を述べる。
 一度ロイって言ってよ!と頼むと、最初はぎこちなかったが、それでもロイと言ってくれたことにより、グッと距離が縮まったような気がした。

「いや、こちらこそありがとう。今日学んだことは、僕にとっても貴重な経験だったから」

 ロイが答えると、二人の心は自然の中で共に何かを成し遂げたことで、一段と結びついた感覚になっていた。
 これから訪れる日々が、どんな花を咲かせるのか、その予感に胸を膨らませながら、ソニアとロイは人々の活気にあふれる町へ歩を進めていった。
しおりを挟む
感想 106

あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!

よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。 10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。 ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。 同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。 皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。 こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。 そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。 しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。 その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。 そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした! 更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。 これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。 ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

処理中です...