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第72話  強襲

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 ミーニャは領主代理にラングレイが来ている事を知っているかを聞いたが、式典の来賓で来ていたが、既に町を出た事になっていると言うのだ。
 これはこれで犯罪なのだ。王位継承権を持つ者は、町の出入りを格下とはいえ領主か領主代理に報告しなければならない。これは隠れて兵を募り、反逆をするのを防ぐのと警備上の問題だ。下手をすれば今のライ達の住んでいる屋敷の持ち主だった者のように国家反逆罪に問われ兼ねない。

今回は恐らく王位継承権剥奪と、公爵家からの放逐だろうと領主代理がそれが妥当な線でしょうなと言っていた。もしも死刑にしてしまうと国王の弟の大公家と深い溝ができてしまい、内乱の火種になってしまう。

その為処刑は出来ない。地方の町に館を与えられ、贅沢は出来ないが数人の愛人と過ごすだけの金を与えられ、表舞台から消されるのが関の山だと。

 ただ、ミーニャの婚約者を殺そうとしたと知れば、ミーニャの母親が黙っていないだろうと確信していた。普段は温厚なのだが、ことミーニャの為ならば苛烈な事をする御婦人の為、十中八九暗殺者を差し向けるのだろうと。因みにオリオンとは実は母親の仮の姿だ。流石に公爵がダンジョンにいる訳には行かず、メイド長に変装しており、ミーニャも母親の名によりメイド長として扱うように言われており、ライの事を勿論愛娘の恩人として恩を感じ、人となりも好ましくミーニャの夫になる者として歓迎していたが、ライはその小体を知らなかった。ステータスを見ていたらひょっとしてメイド長ではないと気がついたかもだが、ミーニャがダンジョンから出た翌日には屋敷に戻り、本物のメイド長とバトンタッチしていた。

 なんだかんだと夜明になっていた。慎重に一角を取囲み、ラルファとパトリシアは屋根にて見張っていた。

 包囲網が完成し、ミーニャは突撃を命じた。領主代理は館にて待機で、捕縛の為の兵の指揮権をミーニャに与えたのだ。与えた事になっているが、領主代理はこの手の事が苦手で、ミーニャが私が兵を率いたいので兵を貸して頂きたいと言われ、渡りに船状態だ。しかも顔を立ててくれており、指揮権を領主代理の権限で貸与する形になった。

 5分もせずに、悪態をつくラングレイをミーニャの前に引き出した。部下や妾たちも捕らわれており、一人も逃げ出せずにいた。また、隠れ家として商人の館をを選んだようだった。
 
「っち、ミーニャか。儂は悪くない。陛下に仇なす国賊を討っただけじゃ!離せ、儂は大公家の嫡男だぞ!」

「愚かなラング。残念ながらライは生きているわよ」  

「ば、ばかな、確かに儂は討ち取らせたあやつの首級を検分したのだぞ!」

「自白しましたわね。あれは良く出来ていますがあくまで傀儡ですわ。残念ですわね。私の夫になる御方を、将来この国を背負っていく御方を殺そうとしたのです。楽に死ねるとは思わないでください」

 ミーニャは隊長を手招きした。

「この者達を国家反逆罪の現行犯で身柄を拘束し、領主代理の所に連れて行きなさい。お勤めご苦労様でした。ところで犠牲者は?」

「はっ!賊の中に逃げようとして転倒して足を挫いた者が1人いるだけで、我らの方にはかすり傷一つありません」

 ミーニャは頷いた。

 館の検分の為ある程度の兵が残ったが、ミーニャはラルファと部屋の中を見ていった。しかし特にめぼしい物もなく、ラルファが隠し扉等が無い事を確認してから領主代理の所に向かった。

 ライは朝日が眩しく、まぶしいなと感じて目覚めた。まだ魔力の大量放出の影響から頭が痛かったが、左腕に感覚があり、辛うじて動かす事が出来た。握力が子供並みだったが、つねると痛いし、目の前にあったものを揉むと柔らかな感触がつたわってきた。

「ちょっとライのむっつりすけべ!朝っぱらから何をしているのよ。こういうのはふたりきりの時じゃないとこまるよ?」

「あっ、ごめんなさい。寝ぼけて触っちゃったようだ」

「もう仕方がないわね。気をつけてよね」

 あれ?と思うが、ちょっとした苦言をされたが、怒られなかったのだ。

「弥生、メアリー、ちょっとお願いがあるんだ。左右の手を10数える間握って欲しいんだ。10数えたら左右を入れ替えて同ようにね。左腕の感覚を確かめたいんだ」

 不思議そうにしながら二人は言われるがままに触れていた。

「ありがとう。力が無いけど、感覚は正常そうだ。まさかこんなふうにして腕を取り戻す事が出来るなんて思わなかったよ」

 そうしていると、ニースが部屋をノックした。

「お兄様、お客様よ」

「こんな時間に誰だろう?それとミーニャ達は?」

「えっと、ミーニャ様達は兄様を襲った者を退治に行かれましたわ」

 首の無い傀儡を指さしていた。

「えっと、お客様はダンジョン攻略の時に待機所でご一緒したミレールと言っていましたわ」

「うーん。名前は聞いていなかったな。メアリー、分かる?」

「ほら、私がやり過ぎと言ったビキニアーマーの子よ。確か王都の子でミーニャ達の次に入っだ子よ。どうしたのかしら?」

「うん。メア姉より胸が大きい綺麗な方ですわ。でもビキニアーマーじゃ無かったよ」

「なんだろう?ニース、悪いけど応接に通してお茶を出しておいて。流石にこの格好じゃ失礼だから着替えてから行くよ」

「ハーイ!伝えてくるね!」

「よし、急いで着替えるか。寝間着なのは俺だけだね」  

 左腕はボタンも外せなかったので、弥生とメアリーに着替えを手伝って貰った。また左腕が思うように動かせず、着替えが難しかったからだ。    

 幸い今日は学園は休みの日だったから、この後の事を考え、動きやすい服にした。まだ襲われる危険が有るから、貴族の着るような服は避けたのだ。

 着替えてから応接に入ると見覚えの有る少女がそこにいた。普通の女性が着るようなお洒落な服を着て、首には華やかなスカーフを巻いていて、つい見惚れていた。

 ライを見るなりライに抱きついたのだが、その手にはナイフが握られており、ライの胸に深々と刺さり、ライは胸を押さえながら刺したミレールに向かって倒れ込んだ。ミレールは泣きながらごめんなさいごめんなさいと言い続けていたのであった。
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