勇者はいいですって言ったよね！〜死地のダンジョンから幼馴染を救え！勇者？いらないです！僕は好きな女性を守りたいだけだから！〜

第42話 説明

　取り敢えず軽い食べ物と水を渡され、ゆっくりと噛みしめてから腹に入れた。食べている最中にライがダンジョンから戻った後の事を皆が各々分かっている事を話していった。こういう時に慌てて食べると胃が受付けなく、無理に食べるとまずもってして掃いてしまうのは前世の記憶から分かっているのでゆっくりと胃に流し込んでいた。

　ライはダンジョンの呪いにより正気を失い、パトリシアを強姦しようとしたのだと聞かされた。
　皆が早々に取り押さえたので未遂に終わったが、かなり暴れていた為やむを得ず手足を縛って監禁した。そこから３日が経過し、今目覚めたと。

　彼女達は翌日、遅い者でも翌々日にはダンジョンの影響からほぼ抜けていた。ただ、まだ精神の起伏が残っているという。他のダンジョン生還者も隔離したが、男はやはり凶暴になる者がいたそうで、そろそろ皆隔離が開けそうだと。

　ライの事は皆で世話をしたと言う。恥ずかしそうに下の世話もしたという。また、叫ぶので猿轡をしていたというのだ。

　ライは一旦皆に部屋を出て貰い、用意してあった服を着た。また、生活魔法を使い体を綺麗にしていった。どうやらダンジョンから出て意識を失くしている間に生活魔法を取得していたようだった。やはり相変わらず魔法はレベル1しか使えなかった。
　国にいる数少ない生活魔法を使える者が隔離者の部屋を回り、１日に一度クリーン魔法を使い、体の汚れを取り、ライには頭に刺激を与える為、生活魔法でお湯を掛け続けながら頭をマッサージしていたそうだ。

　ライは自分がした事に対してケジメをと決意した。それが例え己の意思ではなく、記憶にはなくてもだ。最後に覚えているのは、パトリシアを見てむしゃぶりつきたい良い女だな！めちゃくちゃに犯してやりたい！あの胸を揉みしだきピィーピィーといわせたい！と思った事だ。

　そんな感情を必死に抑えていたが、やがて欲望に支配され意識を手放した。

　皆を部屋に入れるとライは頭を下げた。

「みんな、迷惑を掛けたね。その、今聞くべきじゃないのかもだけど、ダンジョンはどうなった？」

　その後は王都のパーティーが4階層止めで、他は3階層止めで全員無事に出てきて、今年のダンジョンは終わったと。ライが意識を無くし、助太刀が出来ないからと、ライのお陰でダンジョンのボスの強さはワンランク下がったが、それでもミーニャ達はライが来なければ全滅していたと伝えるととてもじゃないが５階層は無理だとなったと聞いた。

　それを聞いてライは安堵した。そしてパトリシアの前に向き合うとそれはそれは見事な土下座を敢行した。

「決して許される事じゃ無い事をしたと聞いた。申し訳ないとしか言えない。その、僕も男だ。やった事の責任を取らせて欲しい。その、僕の妻になってください。そんな事じゃ駄目なんだろうけどケジメをつけたい」

「お断り致しますわ。ライ様には取るべき責任なんてございませんわ。それに私はライ様のモノ。あの時ライ様にお仕えすると契約した段階で何をなさっても良いと言った筈ですわ。私、卑怯者にはなりたくないのです。妻にして頂けるのは勿論嬉しく思いますわ。でも義務ではなく、一人の女としてなら妾でも性奴隷にもなりますが、こんな形では嫌です。どうかお顔をお上げください。どうしても責任をと言うのでしたら、私の事をメアリーさんやユリカさんの様に一人の女として扱ってくれませんか？その、いつもあのような目で見られるのが辛いのです」

「ご、ごめん。その、本当にそんな事で良いの？その、パトリシアさんは綺麗だし、素敵な女性でその、スタイルも抜群で和服美人だし、上品で好ましく思っているけど、その、僕も一つお願いがあるんだ。その、僕のモノ！っていうのを止めて欲しいんだ。そうしたら僕もパトリシアさんの事をちゃんと見るから。それに下僕扱いはしないから。あくまで対等な仲間として、相棒としたいんだ。ね。僕の事を上の立場に見るならパーティーリーダーとしてだけだよ。それ以上は嫌だな」

「うふ。では交渉成立ですわね。では改めて宜しくお願いしますわね」

　その後今後の事を話し合ったが、ミーニャ達とは一旦距離を置く事になった。
　と言うのも、ライ達が地元に帰らなければならないからだ。ミーニャがライ達の所に行くと言い出したが、ライは駄目だと言った。残りの学園生活は一ヶ月だ。ミーニャ達がライの所に来てしまうと、ダンジョンクリア者が王都にいなくなり、関係者の面目が潰され、軋轢を生む可能性があるから卒業までは良くないと。卒業後に先ずは冒険者になるが、卒業後ライ達はもう一度王都に来る事になる筈だった。王都の学園の卒業式には毎年各町のダンジョン生還者を招いて卒業式に参加するのだ。王都の卒業式は地方より８日遅いので、彼は２回卒業式に参加する。
　その後国王に謁見し、卒業の報告をすると聞いていた。

　一旦地元でダンジョンの影響から完全に抜けるのを待ち、それでも尚一緒のパーティーに入りたいならその時は受け入れるし、どうせ卒業後は国王との謁見が待ってるからとの流れになった。

「そうですね、次にこちらに来た時にまだ僕の事を好ましく思っているのなら、その時に冒険者として一緒にやっていきましょう。一度頭を冷やした方が良いと思います。それと、次にくる時までに出来ればギフトは開放しておいてくださいね。それとフォッカーさんは？」

「あいつはあの後モーリーと愛し合い、即時結婚したよ。取り敢えずザインと3人でスタートし、義務期間をこなすと言っていたよ」

「そうですか。僕はダンジョンの事を来年以降の後輩の為に申し伝えをする為のガイドを作りますね」

「分かりましたわ。明日の朝出発になると思いますので馬車の手配をしておきますわ。その、私の事はミーニャと呼んで欲しいわ。ミーニャと言ってくれたら先の話を了解します。ラルファもクラウディアも同じです。呼び捨てにして頂いた方が嬉しいのです」

　ライは呼び捨てにする事で一旦距離を置いてくれるのならと思い、呼び捨てにする事にした。しかしまだ頭がよく回っていなかった。

「じゃあミーニャ、ラルファ、クラウディア、暫くのお別れだ。良い子に待ってるんだぞ。次に僕を見て幻滅していない事を祈っているよ。それとこれを」

　ライは急ぎシングルCDサイズの手鏡を作り３人に渡した。

「これで女を磨くんだよ！僕からのささやかなプレゼントさ。この大きさなら普段の外出にも持って行けるでしょ？それと、人前ではともかく、僕らしかいない所ではライと言ってくれると嬉しいな。ユリカもだよ！」

「わ、分かったわよ。その、ライ、早く体を治すのよ。ライは無理し過ぎるのよ。だからね、くれぐれも無理しないでよ！」

　そんな感じで今年のダンジョンは終わった。パトリシアが学園や国の関係者にダンジョンの詳細を伝えており、その内容を元にガイドが作成されるとの事だった。ライはそれに対して補足をする事になったのであった。