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第33話  2人目の脱落

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 ミーニャ達は全滅の危機に瀕していた。

 戦い始めて5分位が経過していただろうか、お互いにかすり傷程度しか与えられず、小康状態が続いていた。

 だがミーニャ達は段々と追い込まれていた。ついにミーニャとラルファが肩で息をし始めたのだ。他の仲間二人は棍棒の一撃をもろに喰らって吹き飛ばされていた。

 死にこそしなかったが壁に叩きつけられ、二人共気絶していたのだ。

 肉の壁要員はサイクロプスからは無視されていた。正確にはミーニャの闇魔法で気配を殺しており、こちらから仕掛けたり、まぐれ当たりを喰らわない限り倒されないようにし、攻撃の機会を伺っていた。

 今はラルファが必死になりミーニャを守っている状態だ。
 そんなラルファも遂に吹き飛ばされてしまい、残ったミーニャにサイクロプスが襲い掛かり、あわやという所にまで追い詰められていた。そして肉の壁要員の男の子の出番である。振りかざされた棍棒がミーニャを捉えようとしており、食らえば即死だろうと言うのを理解し、意を決したザインはミーニャを弾き飛ばし、位置が入れ替わった状態になった。そしてあっさりと棍棒により首より上が吹き飛ばされた。

 そう、勿論即死である。本来であればその場に死体が残り、ダンジョンにより徐々に吸収されていくが、その場から霧散していった。ミーニャはライの言っていた死亡時の設定が正しく発動したのだと理解した。

 これでもう手駒がなくなった。だがしかし、彼は期待以上の仕事を成し遂げてくれた。

 死なせて良いのは検証の為この男の子一人と決めていた。なので最悪は離脱をする事をを考えていたのだが、今は離脱ができない。ミーニャも今は走り回わり攻撃を避ける余裕はあるが、こちらからは物理的な攻撃ができない。当たってもミーニャの膂力ではダメージが入らないし、隙を点かれ、即時に反撃をされ、避けられない。

 ただ暫くは順調に攻撃を躱していたが、体力というものがある。そう徐々に尽きてきたのだ。

 余裕で躱していたのが、徐々に紙一重で躱すようになってしまった。3人が意識を取り戻し、離脱する迄の時間を稼ぐつもりだった。

 そうこうしていると先ずはラルファが回復し、サイクロプスに斬ってかかった。

 隙を点いての攻撃であったが、細かい切り傷を負わす事ができたが、大きなダメージが入らない。

 そうこうしているとラルファが蹴られ、やはりまた壁に叩きつけられ血を流しながら意識をなくした。そうして何とか一人で凌いでいたミーニャも遂に体力が尽きてしまい、もう一歩も動けなくなった。

 そしてミーニャの脳天目掛け、致命的な一撃が振り落とされたのであった。

 時は少し戻り、ミーニャ達がサイクロプスと戦い始め、最初の離脱者が出た時に戻る。


 ライは意識を取り戻してすぐに状況確認をした。進展がなく、ダンジョン設定について変更する事にし、リタイアを可能にするように設定をして直ぐに気絶し、そこから一時間程で目覚めた所だ。

 目覚めてからは暫くの間ぼーっとしていた。何を言っても反応が薄かった。まだ頭が痛く、回復しきっていなかったのだ。メアリーがひたすら心配をしていた。胸でぐりぐりしたり、お触りをさせていた。と言うか、手を胸に持ってきて触れさせていたが、ただただ手の温もりをかんじるだけで、反応がなかった。おっぱい星人のライがである。
 更にユリカ、パトリシアも交代交代で行ったが反応がないし、胸も揉んでこなかった。意を決したメアリーが下着の下に、つまり直接胸に手を持ってこようとライの手を握った。

 すると誰かがノックもせずに部屋を開けた。一人戻ってきたと告げた。  

 ライはその言葉にハッとなり、慌てて部屋を飛び出した。

 その子はミーニャ様が、ミーニャ様が、それにあの方が!と泣いている。そこにはメイドに思えてならなかった女の子がいた。因みにメイド服はモーリーの想い人の趣味だ。

 ダンジョン内の事については、基本的にダンジョンに入った事がある者にしかその内容を話す事ができない。その為、彼女は入り口に待機していた者に何があった?と聞かれるも口をパクパクするだけで答える事ができなかった。

 ライは慌てて待機室にその子を引っ張っていった。そしてダンジョンから戻ってきた者以外を部屋から追い出した。

「何があったのか話して。僕の事は分かるよね。ダンジョンをクリアしたライだ。だから僕には何でも話す事ができるよ。その女の子はビクビクし震えていたので、とりあえず水を差し出し、落ち着かせる事にした。また、傍らにメアリーとユリカが寄り添い、背中を擦っていた。

「私は5階層のボス部屋に入った途端にリタイアしたんです。ミーニャ様に言われていて、5階層のボスと戦い始めたら離脱するように指示を受けていました。その結果私は今ここにいますが、その、サイクロプスが出たんです。皆愕然としました・・・」

 モーリーは話し始めた。

 ミーニャはサイクロプスとの相性が悪いと。得意属性が土のミーニャに対し、サイクロプスの属性もまた土である。このままではみんなやられてしまう!助けて欲しい!何でもしますからとライに縋っていた。

 ライも確かにこの子の話からこのままではミーニャ達が倒されるのかな?と思い始めていたが、モーリーの話を聞いている時にさらに悲鳴が起こった。

 裸の男が出てきたというのだ。ここで待ってろと言って、ライは慌てて部屋を飛び出した。ダンジョン入口に行くととりあえず簡単な服だけを着た青年が一人いた。

 彼には見覚えがある。なんとなくダンジョンに入ったおどおどしている男の子に似ている。ふとそうかと分かった。こいつ一度死んだんだなと。

 十歳年齢が加算されているので、少年が青年になっているのだ。

 ライはその男の手首を掴み、こっちに来て話せと強引に引っ張り、手荒く待機室に連れてきた。

「見ての通り僕はライだ。ダンジョンクリア者だから全て話す事ができる。さあ何があったのか話せ!休むのはその後だ」

 メアリーとユリカはライの口調が厳しいものになっている事に驚いた。その厳しい口調に唖然とし、黙っていた。これほどきつい口調で真剣な話をするライを生まれてこの方見た事がないからだ。

「私ザインはミーニャ様の身代わりになり倒されてしまったようです。私が殺られる前までの事になりますが、その、あのラルファ様もサイクロプスの攻撃を食らって壁に激突し、回復するまではとてもではないですが戦える状態ではなくなっていました。ミーニャ様が一人で何とかサイクロプスの攻撃を躱していましたが、既に肩で息をしており、足も縺れていました。そして振りかざされた棍棒に当たる直前に私がミーニャ様を突き飛ばし、代わりに私が棍棒で殴られ死んだようです。あの二人も気絶していましたから、ミーニャ様は三人を見捨てて自分だけが離脱するというような事ができないのだと思います。このままではみんな死んでしまいます。何か手がないでしょうか?年老いてしまうのは私一人で十分です」

 ライは即時パトリシアに聞いた。

「おい、何か手がないか?」
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