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第29話 隔離

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 ミーニャ達のパーティーの最後の1人がダンジョンの入口の扉を潜ると入り口が閉じた。その時には既にライは意識朦朧となっていた。

 意識を手放す直前に感じた最後の記憶は、ユリカの胸の感触だった。

 体格はメアリーとは違うし、パット見メアリーより胸は少し控えめとは言え、メアリーに負けず劣らずユリカの胸もそこそこ大きい為、柔らかいなと感じていたのだ。

 ユリカは愛おしいライが苦しんでいるのを見て涙を流していた。だが今こうしてその胸に抱き締める事はライの為であり、必要な事である。

 気絶したライを女性陣のみでダンジョン入り口近くに設置されているダンジョンアタック組の待機室の一つに運び入れ、そこにあるソファーに寝かせていた。その為、新たに別の場所を待機室としていた。入り口には見張りがいれば良い。今はインターバル時間が一時間になったので、最後の者がダンジョンから出て来て入り口が開いてから、次の者を起こせば良い。仮眠程度なら身支度をし、少し体を動かして温める時間は十分にある。

 ライが運ばれたのは女性陣のみがいる。いるのは待機部屋だが、ライがダンジョン入り口にいたほうが良いだろうとなり、メアリー、ユリカ、パトリシアがダンジョンの影響下から抜けていない為、ライ以外は男をシャットアウトしている。


 3人は次とその次のダンジョンアタック組の女性陣のみを集め、ダンジョンについての説明をしていた。その者達の男のパーティーメンバーに対しては、その女性達が伝えるしかない。3人はまだダンジョンの媚薬効果がまだ続いており、異性の、特にライの事が気になって仕方がなく息も荒かったし、体が火照っており熱かった。そしてふしだらな気分になっていた。

 結局の所ライは1時間ほどで目覚めたのだが、いつの間にかメアリーに膝枕をされており、唸りながら目覚めた。メアリーは顔を近付けてライの様子を伺っていた。

 その為、ライが目を開いた時に、目の前にメアリーの顔がありライはドキリとし顔が赤くなった。

 一瞬状況が分からず、間の抜けた声を出した。

「おはよう?メアリー!?」

 柔らかいなとぼそっと言った。

 手は誰かに握られていて体を起こせなかったが、まあいっかととりあえず膝枕を堪能していた。

 膝枕をされたなんて、子供の頃以降はダンジョンに入るまで無かった。そして急激にダンジョンの事を思い出してきて、ガバっと起き上がろうとした。

 いきなりだった。ライもメアリーの顔がすぐ前にあるのを忘れ、慌てて起き上がろうとしたから、メアリーの唇に唇が触れた。
 と言いたいところだが、歯と歯が当たり、ガチンと音がした。

 二人共ぐあぁと叫びながら口を押さえていた。そして周りから数人の女性がくすくすと笑う声が聞こえてきた。慌ててメアリーにごめんと言おうとして振り向いたが、バランスを崩し、メアリーを押し倒してしまった。

 お互い見つめ合ってからメアリーは口が痛むのを我慢し、目を閉じて全てをライに委ねた。ライはそんなメアリーが愛おしくて仕方がなかった。

 周りからきゃーとか、ライ様積極的!、今ここでするのかな?とかが聞こえてきて、周りに人がいる事が分かった。

 ライは慌ててヒールを自分とメアリーに掛け、痛みを取った。

「ごめん。痛かったよね?もう解放してくれても大丈夫だから、その、ありがとう。ただ、今のこの状況がよく分からないから、教えて貰えると嬉しいな」

 メアリーは恥ずかしそうにライに伝えた。

「あのう、そろそろ体を起こしてもいいかなと思うのです」

 今の状態はライがメアリーを押し倒し、メアリーの上に覆い被さっている、そんな状態になっていた。その為、メアリーが恥ずかしそうに言ったのだ。

 ライが慌ててその場から飛び退いたが、飛び退いた先に他の女の子がいて、その女の子と当たってしまった。キャットかヒエ~とかいろんな声が聞こえてきたが、ライはさらに慌ててごめんなさいごめんなさいとひたすら謝っていた。

「ライ様少し落ち着きましょうか」

 一言言われた後、強引に引っ張られソファーに座らさせられた。そうすると目の前にはメアリー達以外に6人の女の子がいたのでライはドキドキしていた。なんで?どういう事?と思わなくはないが、状況が分からずぼーっとなっていた。メアリーはまだ恥ずかしがっており、とてもではないが話せる状態ではなかったので、ユリカが話をしてくれた。

「えっと、そのライ様が気絶してから皆で入口横の待機部屋に運びました。それから1時間ほど経ったところでしょうか。今はまだ私達があれなので、この部屋に隔離してもらっています。大分良くはなってきましたが、まだ影響が抜けていません。今はこれからダンジョンに入る女の子達に、ダンジョンについての話をしていました。私達はあまり話ができませんでしたが、パトリシア様は全てを伝える事ができていました。どちらかと言うと私達はライ様の事を中心に聞かれていました」


 ライは冷や汗が出てきた。自分の事がどう伝わっているのか?と。

 みんな年頃の可愛い女の子達だ。何故か皆見目麗しい。そんな子達にダンジョンクリア者としてウルウルした目で見つめられ、ライはタジタジだった。
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