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第83話 ウィッシュが最強だった

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 そして、俺の言葉にその女は不敵な笑みを浮かべ、高慢にも俺を見下ろしながら言った。

「確かにそなたからあのときの魔力の波動を感じる。大した顔ではないが、そうじゃな、恩赦として我に服従すること受け入れるならば、愛玩動物として飼ってやろう。ほら、足を舐めるがよい」

 無礼極まりない提案をしてきた。

 その言葉により戦いを選んだのは自分自身の意志だった。明らかに俺のこの顔立ちは彼女の好みからは程遠いらしい。
 しかし、目の前に立ちはだかるのは、エロティックな衣装を身に纏い、圧倒的な存在感を放つ女性――ただの痴女に見えるが彼女こそが恐るべき魔王だ。不思議なことに彼女は直感的に、俺がその封印を解き放った張本人であることを見抜いていた。
 俺は生き残るためにドラゴンを倒しただけだから、あくまで結果論だ。
 これまでのやり取りから話が通じる相手ではなさそうだ。

 だが、俺はその提案を受け入れる訳にはいかない。あの足を舐めるのはある意味魅力的だが・・・ゲフンゲフン。俺の心は常に町の平和と安全を第一に考えている。いや違うな。俺の周りの好いた人のことを考えている。

 そんな魔王の提案を断固として拒否する。

「お前はこれから俺の下僕となるのだ!」

 力強く怒鳴りつける。その言葉が響き渡った瞬間、ウィッシュ――願いを叶える最強のスキルが俺の願いにより発動した。

 その結果、魔王は一瞬にして俺の言葉に従う下僕へと変貌した。

 一度は威厳に満ち、誰もが恐れる存在であった彼女が、あっけなく弱々しい姿へと変わる。

 一瞬苦しみ睨んできたが、首に首輪のような紋様が浮かび上がったが瞬間、俺の前に膝をつく。
 見下げる形となりその魅惑的な谷間が俺のものになった。
 少しゲスいことを考えなくもなかったが、今はここを収めなければだ。

 この劇的な変貌に、彼女を取り巻く魔族たちも大いにざわめき始めた。彼らは自分たちの主である魔王がこれほど簡単に屈服する様子を目の当たりにし、その現実を受け入れられずにいた。しかし、魔王はただ静かに頭を垂れた。

「あなた様のご命令に従います。まずは服従の証としてご奉仕いたします」

 従順な言葉を紡いだ。
 次の瞬間多くの人の前だと言うのに突然、俺のズボンを下げる。
 そちらの奉仕をしようとしたので、頭を掴んで引き剥がすと慌ててズボンを履く。
 こら!大勢の人の前でご開帳になったろ!

「そんな事をする必要はない。だが、俺の配下になることを許す。お前の配下には従うか逃げるかの選択肢をやる。人に危害を与えないと誓うなら見逃す」

 この一連の出来事は、俺にとっても予想外の展開だった。ウィッシュが強力なスキルであることは理解していたが、魔王をこんなにも容易く制御下に置けるとは、夢にも思わなかった。彼女からは一切の抵抗の気配がなく、まるでこの結末を受け入れているかのような静けさがあった。

 魔族たちは新たなる主人である俺への服従か逃亡を迫られ、その場は混乱と恐怖に満ちていた。一部には逃げ出そうとする者や、戦いを挑もうとする者もいた。

「彼に従え」

 魔王が一言と命じると、彼らもやむなく膝をつき頭を下げた。

 こうして魔王を手に入れたことで、俺はシズクやリナを始めクラスメイトを守ったり、愛する者を守りたいという使命に、これまで以上の自信と決意を新たにした。
 魔王を制御下に置くことに成功したことで、彼女の配下たち、魔族の忠誠も確固たるものとなった。

 魔族といっても、魔力が強く人よりわずかに強靭な力を有するも、人とほとんど見た目は変わらない。
 魔族には襲われない限り人に危害を加えない誓いをさせ、自由に生きる道を与えた。

 町の人々はかつての恐怖から解放され、新たな平和の時代を迎えることとなる。しかし、今の俺はこの力の真の意味を理解していなかった。力には責任が伴い、使い方を誤れば、それが人々を苦しめる原因ともなり得る。

 そこで俺は、魔王とその配下たちを率いて、町の外にある荒れ果てた地を豊かな土地へと変える計画を立てた。彼女たちの力を利用して、荒野を耕し、新たな生活の場を作り出すのだ。魔王はかつての敵であった人間たちと協力することに最初は抵抗を感じていたが、やがて彼女もこの計画の意義を理解し始めた。

 日々の労働を通じて、魔王と魔物たちは人間たちとの間に信頼を築き、互いに支え合う関係へと成長していった。そして、かつての魔王は、町の人々から「守護者」として敬われるようになる。彼女の存在は、恐れられるものから、愛されるものへと変わっていったのだ。

 俺は、この力を使って、町を守るだけでなく、人々が互いに理解し合い、共に生きる世界を作り上げることができた。これは、ただの願いではなく、現実となった夢だった。そして、俺は知った。真の力とは、支配ではなく、共生にあるということを。
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