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第77話 バチバチ
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目を覚め、段々と意識が戻ったが俺は見慣れた宿の部屋の中にいた。
不思議な夢の余韻にまだ囚われているようで、現実との狭間の中で体に鳥肌が立つほどの異様な空気を感じた。
その空気はある種の恐怖から目を開けることさえためらう。現実から目を背けているとも言う。
しかし、自分がベッドの上にいることは分かる。そして、誰かが優しく俺の頭を膝枕してくれていた。ベッドの反対側では何者かが俺を挟んで向き合って座っている気配がする。
まるでアニメのように、目から光線が出て中央で火花を散らしているような緊張感が漂っていた。
寝たふりをしてこの場をやり過ごせないものかと考える間もなく、俺の存在に気づかれてしまったようだ。
「タケル、何かいうことは?」
サキが問いかける。何故起きたと分かった?身動ぎすらしていないんだが…
「先輩、起きたならそこに座ってください。お話があります」
リナの冷たい声が続く。
俺はその両者の声に反応し、驚きとともに飛び起きて床に正座した。その際、エリスの残念そうなため息がかすかに聞こえたが、俺の正座を見届けると、四人は俺を囲むように前に座った。
冷や汗が止まらない中、ふと記憶をたどると、なぜか今朝になって名前以外何も覚えていなかったシズクとリナに強く会いたいと願っていたことを思い出す。
まだ頭は痛むが、記憶は次第に蘇ってきた。
「タケル…」
シズクが俺を見つめながら名前を呼ぶ。
「えっと、お日柄も良く…」
この場を和ませようとする俺の試みは、シズクの鋭い言葉に遮られた。
「良くないわよ!一応この人たちから事情を聴いたけど、タケル君は節操の無い人だったの?何人もの女を取っ替え引っ替えにして、私たちが苦しんでいる間にも遊んでいたの?」
彼女は怒りを露にした。
「ご、誤解だ!俺は誰にも手を出していないよ!」
必死に弁解する俺氏ここにあり。
「ちょっと、先輩、こんなに美人が揃っていて、誰にも手を出していないなんて信じられないわよ!シズクとキスの約束をする人が…」
リナが続けるが、ちょっと落ち着こうね!お願いだから…
その時、リアンが不思議そうに止めの一言を発した。
「タケル殿は拙者やエリス殿が布団に忍び込み、胸に手をやっても手を出してこないのでござる。拙者はタケル殿に生き返らせてもらい、身も心も全てを捧げると、欲望の捌け口も厭わないと告げても抱いてくださらないのでござる。抱いて欲しいと告げると、ただギュッと抱き締めるのみなのでござる。いけずなご仁でござる」
「ちょっと待って!今、生き返らせてって言ったの?」
シズクがその言葉に敏感に反応した。あっ!そっちに反応したのね!
俺はチャンスと見て、これまでのいきさつを説明した。
シズクとリナは魔物の襲撃による混乱に乗じて城を逃げ出した。その道中にサイクロプスに襲われそうになり、謎の魔方陣が現れてサイクロプスを打ち破ったこと、みっちゃんが率いる女子と一部の男子も全員逃げ出したこと。
サイクロプスに襲われたときに犯された二人が孕まされ、腹を食い破られた悲劇のこと。
そして今は、異空間のギフトを持つ女子が死体をしまい込んでいる状況なのだと。
「私とリナの貞操を守ってくれてありがとう」
シズクはそう力説していたが、俺はシズクの肩を掴む。すると目を瞑り、上目使いになるシズクに対し、力強く告げる。
「今はそうじゃなくて…コホン、皆のところに案内してくれ!」
半ば叫ぶように告げるとシズクはコクりと頷いた。
不思議な夢の余韻にまだ囚われているようで、現実との狭間の中で体に鳥肌が立つほどの異様な空気を感じた。
その空気はある種の恐怖から目を開けることさえためらう。現実から目を背けているとも言う。
しかし、自分がベッドの上にいることは分かる。そして、誰かが優しく俺の頭を膝枕してくれていた。ベッドの反対側では何者かが俺を挟んで向き合って座っている気配がする。
まるでアニメのように、目から光線が出て中央で火花を散らしているような緊張感が漂っていた。
寝たふりをしてこの場をやり過ごせないものかと考える間もなく、俺の存在に気づかれてしまったようだ。
「タケル、何かいうことは?」
サキが問いかける。何故起きたと分かった?身動ぎすらしていないんだが…
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リナの冷たい声が続く。
俺はその両者の声に反応し、驚きとともに飛び起きて床に正座した。その際、エリスの残念そうなため息がかすかに聞こえたが、俺の正座を見届けると、四人は俺を囲むように前に座った。
冷や汗が止まらない中、ふと記憶をたどると、なぜか今朝になって名前以外何も覚えていなかったシズクとリナに強く会いたいと願っていたことを思い出す。
まだ頭は痛むが、記憶は次第に蘇ってきた。
「タケル…」
シズクが俺を見つめながら名前を呼ぶ。
「えっと、お日柄も良く…」
この場を和ませようとする俺の試みは、シズクの鋭い言葉に遮られた。
「良くないわよ!一応この人たちから事情を聴いたけど、タケル君は節操の無い人だったの?何人もの女を取っ替え引っ替えにして、私たちが苦しんでいる間にも遊んでいたの?」
彼女は怒りを露にした。
「ご、誤解だ!俺は誰にも手を出していないよ!」
必死に弁解する俺氏ここにあり。
「ちょっと、先輩、こんなに美人が揃っていて、誰にも手を出していないなんて信じられないわよ!シズクとキスの約束をする人が…」
リナが続けるが、ちょっと落ち着こうね!お願いだから…
その時、リアンが不思議そうに止めの一言を発した。
「タケル殿は拙者やエリス殿が布団に忍び込み、胸に手をやっても手を出してこないのでござる。拙者はタケル殿に生き返らせてもらい、身も心も全てを捧げると、欲望の捌け口も厭わないと告げても抱いてくださらないのでござる。抱いて欲しいと告げると、ただギュッと抱き締めるのみなのでござる。いけずなご仁でござる」
「ちょっと待って!今、生き返らせてって言ったの?」
シズクがその言葉に敏感に反応した。あっ!そっちに反応したのね!
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シズクはそう力説していたが、俺はシズクの肩を掴む。すると目を瞑り、上目使いになるシズクに対し、力強く告げる。
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半ば叫ぶように告げるとシズクはコクりと頷いた。
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