祈りの力でレベルカンストした件！〜無能判定されたアーチャーは無双する〜

第75話 囲まれた

　館を後にし、不動産屋の店長ミスアモンと向かった先は、もちろんノビリス商会。
　由緒ある木製の扉、その重厚感が世代を超えて受け継がれた商会の信用と誠実さを感じさせる。
　その木製の扉を力いっぱい押し開けると、内部は落ち着いた空気に満ちていた。

　そのまま商談用の部屋に通され商会の主である人物、つまりノビリスさんに向かって礼儀正しく、そして深々と頭を下げて敬意を表した。

「ノビリスさん、早速ですが、あの館を購入したいんだ」

　自分の意向を伝えると、商人らしく穏やかな微笑みを浮かべる。
「あの邸宅ですね。やはりタケル殿は問題解決されたのですね。了解しました。ただ、ご存知だと思いますがすぐにはお住まいになれませんよ」

　丁寧な言葉で応じた。

　その館は一目見ただけで「ふへー」と唸るほどの規模と存在感を放っていた。
　しかし、その古びた姿が目立ち、あちこちが痛んでいた。
　その風貌はかつての栄光を思わせるものだったが、２０年人が住んでいないことから痛みが激しかった。

　巣食っていたエントは比較的小さく、何故か以前はネズミを使役していたようだ。しかし、その問題は先程解決したばかりだ。

　パラパラとそこにあった日記を読むと、屋敷に住んでいた女性はテイマーだったようだ。テイムしたマンドレイクとエントを屋敷に匿っていたと判明した。
　それらの魔物が隠し部屋で数を増やし、色々な怪奇現象を引き起こしていたと判明した。

　それは過去と現在をつなぐ大切な情報だった。

　購入代金を支払うと、俺の持ち金はほとんど底をついた。

　しかし、幸いにも手元には多くの魔石や戦利品があり、これらを換金すれば余裕がある。
　館の修繕工事の手配や、布団など生活に必要な物の手配をアモンさんとノビリスさんにお願いし、ノビリス商会を引き上げた。

　取り敢えずお金が底をついたので魔石を換金しに行く。
　そんな折、俺はギルドにてギルドマスターに呼び出された。

　要件はあのボンボンが、モンスターハウスの戦利品を金で買い取るという話を聞かされた。
　それは俺にとっては貴重な情報だった。

　やむを得ず、私は手持ちの剣術と盾術のスキルオーブ【初級】を出し、さらに鑑定されたばかりの【魔法のおなら】という中級オーブを渋々差し出した。

　また、エリクサーよりは劣るものの、オールヒールという特級回復ポーションも差し出した。
　欠損は除くが、どんな傷でも完全回復することが可能な貴重品だった。
　切断された四肢も切断面に当てていれば、何事もなかったかのようにくっつくすぐれものだ。

　スキルオーブは未鑑定のままとしておくことにした。
　これらのオーブは貴重品なので手放すのは惜しかった。
　しかし、ネタスキルだからまあいっか！と気持ちを切り替える。

　それと、少々忍びないおもいもあり、ミスリル製のナイフも提供することにした。
　査定額は金貨2500枚とのことで、どうやら相手の想定内だったらしい。俺は心の中で『丁度館の修繕費になるなぁ』と思いながら品物をギルドマスターの前に置いた。

「これで良いのでござるか？」

　リアンが尋ねると、俺は肩をすくめた。

「まあこれだけあれば説得力があるだろ！それっぽくしとあの手のやからはかないとめんどくさいからね」

　自信に満ちた声で答えた。

「助かるよ。誰がモンスターハウスを攻略したかしつこく聞かれてな。話し合いの結果、ドロップアイテムを全て買い取ると、それを儂が承諾させるなら誰か聞くのはやめるとなっていたんだ」

「そうですか。まあ、貸し一つ、つうことで、あとはよろしく！」

　いつものように、シッシッ！と部屋を追い出された。

　魔石のお金を受け取った後、ギルドを後にしようとしたその時、突如として見知らぬ黒髪黒目の女性たちが俺を囲み出した。
　えっ？となるも、疲弊していたりするし、目がギラギラしているも殺気や悪意は感じなかったのもあり、相手の出方を見ることにした。
　俺の背負っているアーチェリーを見たようで、間違いないとか聞こえた。

　そして、何の前触れもなくいきなり俺と歳の近い二人の美少女が抱きついてきたかと思うと、髪の長い方の美少女が俺の唇を奪う。
　次に小柄なボーイッシュな方が『先を越されたわ！』そう呟くと俺に『先輩！』と言って、長い髪の子を押し退けると、俺の唇にその唇を重ねた。
　驚きと戸惑いの中、俺はこの出来事が一体何を意味するのか、頭が追いつかないまま立ち尽くしていた・・・もっこり！