74 / 84
第74話 戦闘
しおりを挟む緊急の対策会議が開かれ、俺たちは翌日の訪問に備えることになった。
会議と言っても床に座って円座を組んで話し合うだけだ。
「館に入り申した時の感覚でござるが、マンドレイクがおるのではござらぬか?」
「凄いです!さすがリアンさんですね!私も違和感がありました!」
「確かにマンドレイクがいるなら話が合うわね。でも何故マンドレイクが?」
リアンが会議でマンドレイクがいそうだと話したから、俺たちはその対策を練る必要があった。また、マンドレイクがいたとして、その原因の調査だ。
そこでボルビルクの店を訪れることにする。彼はこの地で最も信頼される魔道具商であり、俺たちが求める有用なアイテムの取引きも行っている。
ノビリス商会とも懇意にしているそうだ?
館への訪問に先立って、ボルビルクの店でマンドレイク対策のアイテムを購入する。これは、館内での調査において、不可欠なアイテムとなるだろう。
また、先日討伐した6階層のボスからドロップしたアイテムの鑑定も依頼している。
追加の鑑定のためではなく、アイテムを買いに来たのと、もしも鑑定が終わっているなら、アイテムを受け取ると告げた。ボルビルクさんの何とも言えない表情が、ぱっと明るくなったのを見ないふりをすることで、尽きてしまった魔力事情に配慮を示す。えっ?お前の所為で尽きたって?テヘペロ…
次に、調査に必要な魔道具や消耗品を購入する。これらは館での調査を有利に進めるために、俺たちにとって必須のアイテムだ。十分な準備を終えた後、いよいよ館へと向かう。
館に到着すると、屋根裏にマンドレイクが住み着いていることを確信し、あぶり出す作戦を開始する。
俺の持つ「魔力関知スキル」が何かの反応を示したことから、屋根裏に潜むものはただの魔物ではなく、特別な存在である可能性が高いと判断した。
皆にそのことを話すと益々マンドレイクがいる確率が高くなった。
それを踏まえ、俺たちは館に潜む未知の存在に対する対処を始める。この行動は、館に隠された謎を解き明かし、そしてかつての悲劇に終止符を打つための重要な一歩となるだろう。
別にごり押しで行くならアイテムなんていらない。
ぶった切れば良いが、それだと建物が壊れるからアイテムを使うんだ。
太陽が天に登りきる少し前、俺たちは古びた館の中を歩いていた。手に持つろうそくが揺らぎながらも、その微かな光が年月を重ねたその館の壁に影を映し出していた。
壁には時の経過と共に刻まれた影があり、そして時折、その揺らぎのある光が俺たちの心情を一層刺激し、緊張感を高めていた。
魔法で照らすのはマンドレイクに察知されるので、わざわざろうそくを買ったんだ。
「ここにはもう一部屋、存在しているはずだよな?」
俺は館の古い設計図を指でなぞりながら言った。
図面と中の間取りに違和感があり、改めて間取りを確認していた。
歩幅で部屋の大きさや間仕切りを測定していたが、空間認識的に違和感があった。
メジャーがあれば良いが、そんなものはないので、ロープで確認すると、小さいながら一部屋分寸法が合わない。
その言葉を合図に俺たちは一層慎重に、館の各部屋の探索と測定を進めていた。何度も確認され、何もないと言われ続けてきた天井裏だが、我々の精密な計測結果は明らかに異なる物語を示していた。
異様に厚い壁を誰も気にしなかったようだ。
壁に手を当て、軽く叩いてみると空洞のような響きが聞こえてきた。
「ここでござる!」
リアンが声を張り上げた。
石造りの壁が僅かに動き、その裏には隠されていた秘密の扉が存在していた。
息を止め、我々は慎重にその扉を開いた。
目の前に広がったのは、不気味なほどの静寂が漂う隠し部屋だった。しかし、その静寂はほんの僅かな時間で絶たれた。部屋の隅から突如として悲鳴に似た叫び声が響き渡った。それはマンドレイク、その魔性の植物が俺たちの存在に気づき、恐怖か驚きか、耳を射抜くような鳴き声を上げた。
そして、その声を聞きつけたかのように、膝丈ほどの高さのエントが複数姿を現した。奴らはこの隠し部屋を住処としていたのだ。
木々のようなその肢体をゆっくりと動かし、俺たちに向かって来た。我々は戦いに備え剣を抜き、もとい、ナイフを抜き、呪文を唱えて魔物との戦いが始まった。
エントたちが姿を現した瞬間、俺はコンバットナイフを手に取り、仲間たちもそれぞれナイフを構えた。僧侶であるレオンは得意属性は光だ。支援魔法「光の壁」を唱え、我々の前に輝くバリアを展開する。そのバリアが、エントたちの最初の一撃を防いだ。
「派手にやれないからな、慎重にいこう」と俺は呟いた。この隠し部屋には、壊れてはならない貴重な物がある。エントたちは木の枝のような腕を振り回し、俺たちに襲い掛かってくる。俺は身を低くして、ナイフで奴らの腕(枝)を狙う。一撃、また一撃と、正確に腕を切り落としていく。
レオンの魔法が俺たちを守りながら、次の呪文を唱える。
「風の加護よ!」
一陣の風が吹き抜け、俺たちの動きを俊敏にした。エントたちの動きは遅い。
風の加護を受けた俺たちはその攻撃を軽やかにかわして反撃する。
俺はナイフを握りしめ、エントの一体に飛び掛かる。
ナイフがその厚い樹皮を切り裂き、エントは苦痛の声を上げた。
しかし、その声もすぐに止み、エントは倒れた。他のエントたちも、俺たちの連携した攻撃によって、次々と倒れていく。
最後のエントが倒れた時、部屋は再び静寂に包まれた。
俺たちは息を整えながら部屋の中を見渡す。壁に掛けられている絵画、棚に並べられた書物、そして床に散らばるエントたちの残骸。館を守るために、俺たちは派手な戦いを避けて慎重に戦ったのだ。
幸い壁に新たな穴は開かなかった。
「大丈夫か?」
エリスに聞くと俺に頷く。
魔力も感じなくなりナイフを鞘に収めた。
「よし、大丈夫だ。これで、館の秘密を解き明かすことができる」
戦闘を終えた後、俺たちはその隠し部屋を詳細に調査した。部屋には古い書物や、いくつかの貴重なアイテムが隠されていた。これらはかつてこの館に住んでいた者の秘密だったのかもしれない。新たな発見に心を躍らせながら、俺たちは次の冒険へと足を踏み出すのだった。
2
お気に入りに追加
459
あなたにおすすめの小説
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~
WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
1~8巻好評発売中です!
※2022年7月12日に本編は完結しました。
◇ ◇ ◇
ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。
ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。
晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。
しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。
胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。
そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──
ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?
前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!
モブ高校生と愉快なカード達〜主人公は無自覚脱モブ&チート持ちだった!カードから美少女を召喚します!強いカード程1癖2癖もあり一筋縄ではない〜
KeyBow
ファンタジー
1999年世界各地に隕石が落ち、その数年後に隕石が落ちた場所がラビリンス(迷宮)となり魔物が町に湧き出した。
各国の軍隊、日本も自衛隊によりラビリンスより外に出た魔物を駆逐した。
ラビリンスの中で魔物を倒すと稀にその個体の姿が写ったカードが落ちた。
その後、そのカードに血を掛けるとその魔物が召喚され使役できる事が判明した。
彼らは通称カーヴァント。
カーヴァントを使役する者は探索者と呼ばれた。
カーヴァントには1から10までのランクがあり、1は最弱、6で強者、7や8は最大戦力で鬼神とも呼ばれる強さだ。
しかし9と10は報告された事がない伝説級だ。
また、カードのランクはそのカードにいるカーヴァントを召喚するのに必要なコストに比例する。
探索者は各自そのラビリンスが持っているカーヴァントの召喚コスト内分しか召喚出来ない。
つまり沢山のカーヴァントを召喚したくてもコスト制限があり、強力なカーヴァントはコストが高い為に少数精鋭となる。
数を選ぶか質を選ぶかになるのだ。
月日が流れ、最初にラビリンスに入った者達の子供達が高校生〜大学生に。
彼らは二世と呼ばれ、例外なく特別な力を持っていた。
そんな中、ラビリンスに入った自衛隊員の息子である斗枡も高校生になり探索者となる。
勿論二世だ。
斗枡が持っている最大の能力はカード合成。
それは例えばゴブリンを10体合成すると10体分の力になるもカードのランクとコストは共に変わらない。
彼はその程度の認識だった。
実際は合成結果は最大でランク10の強さになるのだ。
単純な話ではないが、経験を積むとそのカーヴァントはより強力になるが、特筆すべきは合成元の生き残るカーヴァントのコストがそのままになる事だ。
つまりランク1(コスト1)の最弱扱いにも関わらず、実は伝説級であるランク10の強力な実力を持つカーヴァントを作れるチートだった。
また、探索者ギルドよりアドバイザーとして姉のような女性があてがわれる。
斗枡は平凡な容姿の為に己をモブだと思うも、周りはそうは見ず、クラスの底辺だと思っていたらトップとして周りを巻き込む事になる?
女子が自然と彼の取り巻きに!
彼はモブとしてモブではない高校生として生活を始める所から物語はスタートする。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる