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第74話 戦闘

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 緊急の対策会議が開かれ、俺たちは翌日の訪問に備えることになった。
 会議と言っても床に座って円座を組んで話し合うだけだ。

「館に入り申した時の感覚でござるが、マンドレイクがおるのではござらぬか?」

「凄いです!さすがリアンさんですね!私も違和感がありました!」

「確かにマンドレイクがいるなら話が合うわね。でも何故マンドレイクが?」

 リアンが会議でマンドレイクがいそうだと話したから、俺たちはその対策を練る必要があった。また、マンドレイクがいたとして、その原因の調査だ。

 そこでボルビルクの店を訪れることにする。彼はこの地で最も信頼される魔道具商であり、俺たちが求める有用なアイテムの取引きも行っている。
 ノビリス商会とも懇意にしているそうだ?

 館への訪問に先立って、ボルビルクの店でマンドレイク対策のアイテムを購入する。これは、館内での調査において、不可欠なアイテムとなるだろう。
 また、先日討伐した6階層のボスからドロップしたアイテムの鑑定も依頼している。 

 追加の鑑定のためではなく、アイテムを買いに来たのと、もしも鑑定が終わっているなら、アイテムを受け取ると告げた。ボルビルクさんの何とも言えない表情が、ぱっと明るくなったのを見ないふりをすることで、尽きてしまった魔力事情に配慮を示す。えっ?お前の所為で尽きたって?テヘペロ…

 次に、調査に必要な魔道具や消耗品を購入する。これらは館での調査を有利に進めるために、俺たちにとって必須のアイテムだ。十分な準備を終えた後、いよいよ館へと向かう。

 館に到着すると、屋根裏にマンドレイクが住み着いていることを確信し、あぶり出す作戦を開始する。

 俺の持つ「魔力関知スキル」が何かの反応を示したことから、屋根裏に潜むものはただの魔物ではなく、特別な存在である可能性が高いと判断した。
 皆にそのことを話すと益々マンドレイクがいる確率が高くなった。

 それを踏まえ、俺たちは館に潜む未知の存在に対する対処を始める。この行動は、館に隠された謎を解き明かし、そしてかつての悲劇に終止符を打つための重要な一歩となるだろう。
 別にごり押しで行くならアイテムなんていらない。
 ぶった切れば良いが、それだと建物が壊れるからアイテムを使うんだ。

 太陽が天に登りきる少し前、俺たちは古びた館の中を歩いていた。手に持つろうそくが揺らぎながらも、その微かな光が年月を重ねたその館の壁に影を映し出していた。
 壁には時の経過と共に刻まれた影があり、そして時折、その揺らぎのある光が俺たちの心情を一層刺激し、緊張感を高めていた。
 魔法で照らすのはマンドレイクに察知されるので、わざわざろうそくを買ったんだ。

「ここにはもう一部屋、存在しているはずだよな?」

 俺は館の古い設計図を指でなぞりながら言った。
 図面と中の間取りに違和感があり、改めて間取りを確認していた。
 歩幅で部屋の大きさや間仕切りを測定していたが、空間認識的に違和感があった。
 メジャーがあれば良いが、そんなものはないので、ロープで確認すると、小さいながら一部屋分寸法が合わない。

 その言葉を合図に俺たちは一層慎重に、館の各部屋の探索と測定を進めていた。何度も確認され、何もないと言われ続けてきた天井裏だが、我々の精密な計測結果は明らかに異なる物語を示していた。
 異様に厚い壁を誰も気にしなかったようだ。

 壁に手を当て、軽く叩いてみると空洞のような響きが聞こえてきた。

「ここでござる!」

 リアンが声を張り上げた。
 石造りの壁が僅かに動き、その裏には隠されていた秘密の扉が存在していた。

 息を止め、我々は慎重にその扉を開いた。

 目の前に広がったのは、不気味なほどの静寂が漂う隠し部屋だった。しかし、その静寂はほんの僅かな時間で絶たれた。部屋の隅から突如として悲鳴に似た叫び声が響き渡った。それはマンドレイク、その魔性の植物が俺たちの存在に気づき、恐怖か驚きか、耳を射抜くような鳴き声を上げた。

 そして、その声を聞きつけたかのように、膝丈ほどの高さのエントが複数姿を現した。奴らはこの隠し部屋を住処としていたのだ。
 木々のようなその肢体をゆっくりと動かし、俺たちに向かって来た。我々は戦いに備え剣を抜き、もとい、ナイフを抜き、呪文を唱えて魔物との戦いが始まった。

 エントたちが姿を現した瞬間、俺はコンバットナイフを手に取り、仲間たちもそれぞれナイフを構えた。僧侶であるレオンは得意属性は光だ。支援魔法「光の壁」を唱え、我々の前に輝くバリアを展開する。そのバリアが、エントたちの最初の一撃を防いだ。

「派手にやれないからな、慎重にいこう」と俺は呟いた。この隠し部屋には、壊れてはならない貴重な物がある。エントたちは木の枝のような腕を振り回し、俺たちに襲い掛かってくる。俺は身を低くして、ナイフで奴らの腕(枝)を狙う。一撃、また一撃と、正確に腕を切り落としていく。

 レオンの魔法が俺たちを守りながら、次の呪文を唱える。

「風の加護よ!」

 一陣の風が吹き抜け、俺たちの動きを俊敏にした。エントたちの動きは遅い。
 風の加護を受けた俺たちはその攻撃を軽やかにかわして反撃する。

 俺はナイフを握りしめ、エントの一体に飛び掛かる。
 ナイフがその厚い樹皮を切り裂き、エントは苦痛の声を上げた。 
 しかし、その声もすぐに止み、エントは倒れた。他のエントたちも、俺たちの連携した攻撃によって、次々と倒れていく。

 最後のエントが倒れた時、部屋は再び静寂に包まれた。

 俺たちは息を整えながら部屋の中を見渡す。壁に掛けられている絵画、棚に並べられた書物、そして床に散らばるエントたちの残骸。館を守るために、俺たちは派手な戦いを避けて慎重に戦ったのだ。
 幸い壁に新たな穴は開かなかった。

「大丈夫か?」

 エリスに聞くと俺に頷く。

 魔力も感じなくなりナイフを鞘に収めた。

「よし、大丈夫だ。これで、館の秘密を解き明かすことができる」

 戦闘を終えた後、俺たちはその隠し部屋を詳細に調査した。部屋には古い書物や、いくつかの貴重なアイテムが隠されていた。これらはかつてこの館に住んでいた者の秘密だったのかもしれない。新たな発見に心を躍らせながら、俺たちは次の冒険へと足を踏み出すのだった。
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