祈りの力でレベルカンストした件！〜無能判定されたアーチャーは無双する〜

第73話 館の案内

　アモンはノビリス商会の不動産店の若き店長。
　緑の髪をアップにし、髪止めでしっかりとまとめた姿は、『できる』キャリアウーマンそのもの。
　もうすぐ30歳になる少しきつめの美人でスタイル抜群、着こなしも隙がない。

【アモン視点】　
　私アモンは今日、会長の特別な指示により、タケル殿をとある物件に案内しています。

　彼は一体何者なのでしょうか？美女たちを従える女好きなハーレムの主？それとも何か別の存在？彼は異国の者で所作から貴族ではなく、冒険者のようです。偉ぶることなくこちらにも敬意を表し、礼儀正しく接して頭を下げてくる不思議な人物です。

　最初はいくら会長の頼みとはいえ、こんな若造の案内を部下ではなく、店長自ら案内してくださいと言われ不満でした。
　そこは私もプロ。流石に断れないので顔に出さないようにしていました。

　ですが、只者ではないのは纏っている気で何となく分かります。
　何というか、そうは見えないのに【強い】そう感じる不思議な御人です。

　さて、本題ですがこの物件、正直気持ち悪いので中に入りたくないのですが・・・

「タケル様、こちらがご案内する物件です。かつては貴族が愛人を隠すために用いた秘密の館でしたが、今は事故物件として知られています。」

　私たちがその館に足を踏み入れると、空気が一変しました。天井裏からは何かが動き回る音が断続的に聞こえてきます。私はあえて顔色を変え、この家の不気味な伝説をタケル殿に語り始めました。

「昔々、この家には美しい女性が秘密裏に住んでいました。さる貴族の当主が愛人との会瀬のために足しげく通っていました。婿養子のために妾を認められなかったようです。しかしその関係は長くは続かず、やがて悲劇的な最期を迎えました。正妻にばれて、妻が手切れ金を持参したようです。しかし、言い争いになり、最後は殺し合いに発展して相討ちとなったのです。その日以来この家には二人の怨念が残ったとされ、事実訪れる人々に奇怪な現象を引き起こし続けています」

　タケル殿は静かに聞いていましたが、彼の目には恐怖ではなく、興味が宿っているように見えました。彼は霊感があるのでしょうか？この館に潜む何かを探るべく、恐怖を抑えながら内部を探索する。でもタケル殿ははしゃいでいるように見えますが…

　廊下の絨毯は色褪せ、壁の絵画はかつての栄華を物語るように傾いている。そして、奇怪な音がする部屋に近づくと、扉が軋むように開きます。部屋の中央では、かつての愛人と正妻の争いを思わせる、ふたつの影が見え隠れします。

「タケル殿、これは怨念の類いではないようですな」

「そうね、大体の見当がついたわ。準備が必要のようね」


　…


　タケル殿は仲間の意見に耳を傾け、その影を見つめながら頷くと私の方を見てサムズアップをし、自信満々に言います。

「心配無用です。これは私たち解決して見せましょう。ただ、準備があるので明日になりますが」

　その自信はどこから来るのでしょうか？一緒にいる女性たちも、タケル殿が解決すると断言します。私はオーガににらまれた子供のような顔をしているかもしれません。しかし、タケル殿の自信には何か根拠があるのかもしれません。彼の次の行動が、この館の謎を解き明かす鍵となるでしょう。
　私が商会に入る前からの不良物件がいよいよ売れる時が来たのでしょうか？