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第66話 リアンの装備

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 リアンと共に石畳の道を歩いている。彼女は俺よりもずっと小柄で、握りこぶし一つ分ぐらい俺の方が大きい。

「ドレスアーマーは実際どうなんだ? 着心地は悪くないのか?」俺はリアンにふと尋ねた。

 リアンは少し歩を止めて、俺を見上げてにっこりと笑った。
「これは本当に凄いでござるよ。見た目はただのドレスでありまするが、実際はしっかりとした鎧なのでござる。動きやすさも抜群でござるし、何より...」彼女は少し顔を赤らめて言葉を濁した。

「あの鑑定士の驚く顔が忘れられないでござるな。」

「そうか、それは良かった。」

 俺は安心したように頷き、リアンの言葉に笑みを浮かべた。ボルビルクの驚きようは、たしかに見物だった。まさかあのドレスがあんなに堅固だとは俺も予想外だったからな。

「それにしても、あの鑑定士、なかなかのキャラクターだよな。」俺は話題を変えつつ続けた。

「あの人のおかげで、また一つ貴重なアイテムの有用性を手に入れたわけだ」

 リアンはうなずきながら、再び歩き始めた。

「ええ、そうでござるな。でも、次はもう少し魔力が回復してからの鑑定になるでござるよ。あんなに連続でレアアイテムを持ち込んで、彼もさぞかし大変だったでござろう」

 どういうこと?よくわからないが、カッコ悪いので分かっているふりをしとこう。

 俺たちは笑いながら、街の中を歩き続けた。リアンのドレスアーマーが、夕日に照らされてきらめいていた。 
 今、俺はリアンの盾を背負い、槍を手にしている。流石に俺より小柄な少女が大盾を持って歩くのは絵面的によくない。遠慮するかと思ったら、お願いするでござると、あっさり盾を渡してきた。
 この辺り男の見栄を分かってくれるようだな。

 道を歩きながら昨日の鑑定士の言葉が頭をよぎる。ふと先程のリアンの言葉からはっとなる。鑑定にはそれなりに魔力を使うのか!と。
 なぜ結果が明日になるのかと不思議に思っていたが、その理由が今になってようやく分かったんだ。
 俺はこの世界の事をよく知らない。
 異世界人と話したら受け入れてくれるだろうか?サキは分からないがリアン、エリス、レオンは大丈夫だろう。

 リアンのドレスだが正式には【麗装のドレス】という名前らしい。ただの上品なドレスに見えるが、魔力を注ぐと金属鎧をも凌ぐ堅牢さに変わる。それでいて、着心地は変わらず快適なのが驚きだ。
 リアンの場合、彼女自身の魔力を注ぎ込んでも精々1時間ほどでその効果が切れることが判明した。
 ただ、魔力が尽きた後でもオーガの革鎧よりも、ずっと高い防御力を保つ。さらに時間と魔力をかければ自己修復もするらしい。まさにとんでもないアイテムだ。
 もちろん俺が魔力を注ぎ込む。

 ギルドに戻る途中、リアンがなんだかモジモジしているのが気になって聞いてみると、「腕を組みたい」という要望がぼそっと漏れた。くの字に腕を組んでやり、その微妙な距離感に心がときめいた。恥ずかしがっているのが初で宜しい。

 彼女はなかなかの破壊力を持っている。ふとした瞬間に、Eカップか?という下世話な考えが頭をよぎる。
 しかし、ちゃんと下着を買ったのかと思いながらも、そんなことに興奮せずにはいられないはずが、反応しない自分が悲しかった。
 今の思いもハンカチ持ったか?と思うのと同じレベル・・・

 そして、ギルドに戻るとそこは何やら騒がしい。何事かと思えば、ギルドの掲示板の前に人だかりができている。リアンと俺は顔を見合わせ、何が起こっているのか確かめに行くことにした。
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