祈りの力でレベルカンストした件!〜無能判定されたアーチャーは無双する〜

KeyBow

文字の大きさ
上 下
50 / 84

第50話 押し付け

しおりを挟む
 Eランクの階層に差し掛かると、俺はさらに魔力を込めた。
 魔物たちも強くなっているが、俺の矢はそれをものともせず、軽々と彼らを倒していく。一心不乱に進み、いつの間にか人気の狩り場である3から6階層へ差し掛かっていた。俺はその階層を素通りし、奥へ奥へと進んだ。俺は押さえられない好奇心と冒険心に駆られて、試したい一心だった。

 このままの勢いで俺はどこまで行けるのか?そんな興奮と期待を胸に、俺はさらにダンジョンの深層へと足を進めていく。
 自分の限界に挑戦するかのように。

 しかし、六階層でスタンピードに遭遇した。

 六階層で起こったスタンピードの発生理由はその時はわからなかったが、後になってから判明することになる。
 俺と歳が近そうな貴族と思われるやつが、初老の男と女二人の四人で魔物の群れから必死に逃げていた。
 大量の魔物を引き連れて逃げる途中で、どういう訳か俺の姿を見つけるとわざわざ俺の傍を通り過ぎ、魔物を俺に押し付けて逃げたんだ。
 まるで俺がその魔物たちを引き受けるべき者であるかのように。
 また、従者と思われる僧侶と俺と同い年位の女騎士に殿を押し付けていた。
 魔物と混戦中で、俺も巻き込まれていった。

 スタンピードの発生に驚いたが、俺を襲った魔物は大量の獣形だった。オオカミやクマ、ライオンやトラなど、様々な種類の獣が牙や爪を剥き出し、俺に襲いかかってきた。俺はその獣たちに対し、生成した矢に炎を纏わせて戦ったが、獣たちに対して自分の力を試した感じだ。 接近してきたら蹴り飛ばしてやる。 
「うひょー」
 叫びなからイメージ通りの回し蹴りに自己陶酔したのはご愛敬。

 俺は【火炎強化】を使った矢を放ち、獣たちを一掃する。俺の矢は、獣たちに向けて炎の軌道を描き、その威力は数匹の獣たちをまとめて粉々にするほどだ。炎は赤く燃え盛り、熱気は空気を揺らす。俺はその光景に満足感を覚えた。

 俺は獣たちを倒した後、貴族たちが去った方向へ目を向けた。彼らは戻ってきたが、横取りをしたと叫び出した。

「き、貴様!人の獲物を横取りしおってからに!けしからん!直ぐにいね!勿論横取りしたのだからドロップは俺のものだ。くくく」 

 なんだこいつ?俺は今のこの高揚した気持ちに水を差すなよと睨み付けた。
 俺が放った怒気を感じ取り、女性二人がその貴族を引きずるようにして急いで立ち去ろうとした。

「こいつやばいって、あんた殺されるよ!」

「よしなよ!私死にたくないよ!手を出したら不味いよ」

 俺は先程魔物を押し付けられて死んだ二人を指さした。

「ちょっと待てよ。この人達は仲間じゃないのか?」

 と言うも、あの貴族は俺に向かってとんでもないことを言ってのけた。

「分家の役立たずなんて知らん。装備をはぎ取りたきゃ剥げば良いだろ!このあさましい貧乏人め。生きていたら仲間にするなり好きにしろ!」

 捨て台詞を吐くも、女二人に腕を掴まれ、引きずられながら去っていった。

 あの貴族は不用意にモンスターハウスとなっている部屋に足を踏み入れ、その結果として大量の魔物を引き連れて逃げ出したらしい。

 俺はその場で何をすべきかと悩んだが結局、ライブラリーカードを手に取ると、死んだ二人の従者を収納バッグに入れてた。
 回収出来る物を回収し終え、ダンジョンを後にすることにした。
 このままでは彼らの死が無駄になってしまう。ダンジョンを出てから【適切】に彼らの処理をすることに決めた。それが、冒険者としての、いや、人としての責任だ。

 そして俺は、自分自身に問いかけた。力があるものがどうあるべきか、仲間とは一体何なのか。そして、俺自身がこれからどう生きるべきか。重い思いを胸に、足を踏み出した。この日の出来事は俺の冒険者としての心に深く刻まれることになった。

 彼らは四人で逃げるのに必死だったが、貴族の冒険者は自分の身を守ることしか考えていなかった。彼は従者の冒険者たちに自分を先に逃がすように命じていて、二人を捨て駒として見捨てたのだ。

 俺はこの貴族の冒険者の行ったことに腹が立つも、今日はやる気が失せ、鉢合わせしたくないからと、ドロップを回収してからダンジョンを後にした。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

処理中です...