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第40話 いきなりレアボス

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 エリスはダンジョンの奥にある大きな扉を指さした。その扉には神秘的な模様が刻まれており、上部には古代文字で何かが書かれているらしいが・・・

「あれは・・・階層主がいるボス部屋だな。あそこには何があるのかな?」

 俺は興味津々に扉を見つめた。古代語と言っていたが【ボス部屋につき6人まで】と書かれている。このダンジョンについては少し聞いてきたけど、この扉の向こうには何がいるのだろう?ボス部屋なのは記載から分かるが、経験がないから確かなことは言えない。
 けれども、俺は楽観的に考え、素晴らしいものがあるといいなと期待した。

 それと一階層の最奥にあるボス部屋を抜けないと、下の階に降りる階段にたどり着けないと聞いていた。
 やはり記載通りにボス部屋の可能性が高いな。
 1階層は稼ぎが悪いからなりたてしか入らないと聞いている。

「行ってみましょうか?」

 エリスが俺に聞いてきた。

「うん、行こう。多分階層主だから気を引き締めるように!」

 俺はエリスにそう答えると手を頭にポンと乗せたが、それでも心配そうに目を細める。

「心配すんなって。俺がついてるからさ、エリスに指一本触れさせやしないぜ!」

 エリスが笑顔で頷いたので俺たちは扉の前に立ち、深呼吸してから扉に触れた。
 扉はゆっくりと開き、その向こうが段々と照らされて見えてきた。
 明るくなったそこは広い円形の部屋で、部屋の中央には巨大な骸骨のようなモンスターが待ち構えていた。
 やはりここは階層主がいるボス部屋だ。

「これが・・・ボスか・・・大したことはなさそうだがでかいな」

 俺は息をのんだ。ここのボスについての噂を聞いていた。人間の骨格に似ているけど、その大きさは人間の数倍もあり、聞いていたのと違う。

 その頭には一本の角が生えていて、目は赤く光っている。手には鋭い爪が生えていて、足には鉄の靴がはめられている。そしてその背中には無数の骨が突き出していて、鎖で繋がっている。
 更に鎖の先には、鉄球がぶら下がっていて、鉄球には棘が生えている。こんなモンスターにエリスが勝てるのか?もちろん俺が本気を出したら秒殺だと思うが、それだとこの先エリスは生き残れない。 

「タケル様、気をつけてください!」

 エリスが俺に声をかけたが、俺の顔を見て不安そうにしていた。
 しまった。俺がボスを見てすくんだと勘違いさせたか。

「うん、ありがとう、エリス。でも、ここで引き返すわけにはいかないよ。このボスを倒さないとこの階層をクリアできないし、エリスの首輪も外せない。だから、一緒に頑張ろう。ただ、どれだけ手加減すればエリスがトドメをさせるか悩みどころなんだ」

 俺はエリスの手を握って少し力を込める握り返して頑張ると言った。

「はい、タケル様。私も頑張ります」

 俺たちはボスに向かって走り出した。ボスは俺たちの動きに気付いて鎖を振り回して攻撃してきた。
 俺は魔矢生成のスキルで矢をボスの目を狙って放つ。もちろん爆散したりしないように加減を忘れない。
 少なくともエリスに一撃は入れてもらいたい。
 当のエリスは盾で身を守りながら俺の側についていた。

 そうして俺たちはボスとの激しい戦闘に突入した。俺は魔矢でボスを攻めたが、ボスは鎖や鉄球で反撃してきた。
 エリスは鉄球を盾で受け止めて身を守る。 
 不思議なことにエリスの力でも、50cmほどある鉄球を受け止められていた。

「見た目より軽いです!」

 何故かエリスが盾で受け止めた鉄球を、盾を持ち上げる形でボスに向かって投げたが、見事にボスの顔に当たる。

 ダメージは殆どないはずだが、ボスは怒りの声を上げた。
 しかし、ボスの攻撃は強烈で、エリスが盾で三撃目を受け止めたところでひびが入った。
 盾にヒビが入る彼女はボスの攻撃をかわすことに専念し始めた。
 ちゃんと見れば躱せない攻撃ではない。

 俺はエリスの動きを見て安心し、攻撃に専念してボスの体力を削っていった。しかし変だった。矢は確実に骨を砕き、腕を吹き飛ばすも、攻撃は止まないのだ。
 脚を狙ったりしたが、脚が弱点なのかダメージは胴より脚の方が大きいようだ。

 それでもやがてボスの動きが鈍くなってきた。俺は脚が弱点だと気付いて、槍で足を払い転倒させると、エリスに合図をした。

「エリス、今だ!」

 俺はエリスに声をかけたのは、エリスに最後の一撃を任せたかったからだ。 

「はい、タケル様!」

 エリスは俺に答えるとナイフを握りしめ、ボスに向かって飛びかかった。ボスはエリスを見て鎖を振り回したが、俺がその腕を槍で斬り飛ばした。エリスはボスの攻撃を気にする必要がなくなったこともあり、全体重を乗せたナイフをボスの胸に突き立てた。  
 するとボスは悲鳴を上げ数秒もがいた後、動かなくなった。

「やったなエリス!骸骨のボスを倒したぞ!」

 俺は槍を振り回しながら、1階層のボスである巨大な骸骨の残骸を見て喜んだ。

「タケル様、ありがとうございます。私、できました。その、最後を譲っていただいて良かったのですか?」

「うん。君に活躍して貰いたいからね」

 俺たちはボスの死体のそばに抱き合ったが、やがてボスは小さくなり・・・人間の大きさになった。
 そして光ったかと思うと霧散し、ビー玉ほどの魔石と宝箱に姿を変えた。
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