35 / 84
第35話 ノビリス商会その1
しおりを挟む
俺は壊滅した商隊から回収した物品を渡すため、サキに教えられたノビリス商会へと向かっていた。
エリスの手を引いて町の中を進んでいたが、幸いな事に絡まれたり迷うこともなくすんなり商会に辿り着くことが出来た。
「じゃあ中に入ろうか。いいね?」
俺はエリスに聞いたが、彼女の心の準備も整ったようで頷いたので扉を開けて中に入った。
商隊の物はエリスが着ている服以外の全てを渡すつもりで、荷物が入った背嚢を二つ持ってきたが、これが限界だった。
馬車も馬もなくなってしまったからな。見過ごした荷物の中に高価な物が混ざっていたらすまないと思った。
エリスは商隊の奴隷だったが、俺が盗賊を討伐する際に助け出した。彼女の所有権を持った盗賊団の首領を殺したことにより、俺に所有権が移ったんだ。
この世界の奴隷は主人が死んだ後最初に触れた者に所有権が移るシステムだ。
商隊や商会と面識はないが、商隊の荷物を届けることにしたのは対価は求めず荷物を遺族に渡すのが正しいと思ったからだ。
また、エリスの所有権で揉めたくないので説明をする為でもある。
入り口の近くにカウンターがあり、そこにいた受付の女性に声をかけた。
「こんにちわ。先日商会の荷物を運んでいた商隊が盗賊に襲撃された。その盗賊を討伐した者だが、回収した荷物を届けに来た。俺はFランクの冒険者だ」
女性は俺の顔を見て驚いていた。俺は典型的な日本人だが、この世界では珍しい黒目黒髪と言われており、やはりこの町で黒髪黒目を見なかったから目立つはずだ。
背中には弓と槍を背負っているが、この槍は魔石を吸わせると強度と威力が上がる魔法の武器で、光っているのが分かるだろう。
俺の隣にはエリスがいた。
彼女は金色の髪と青色の瞳を持つ美少女のはずだが、火傷でひどく傷ついていた。白いワンピースにローブを羽織っていて顔はフードで隠している。そして首には奴隷の証である銀色の首輪が装着されている。
「あ、あの、本当ですか?あなたが盗賊を討伐したのですか?」
女性は疑わしげに尋ねた。
「ああ本当だ。これを見てくれ」
俺はそう言ってサキから渡された盗賊の討伐証明を見せた。これと引き換えにお金を貰うが、盗賊団の首領を含む20人以上の盗賊を倒したことが記録されている。
女性は証明書を受け取って目を見張った。討伐者として俺の名前が記録されているからかな?
「す、すごいですね。荷物はどこにあるのですか?」
「徒歩なのでそこに置いた二つの背嚢に入っている分しかない」
俺は指を指して答えた。
女性は背嚢の中を覗き込んだ。商隊の馬車にあった荷物は王都からこの町に輸送していた物で、中には高価な魔道具もあったから、商会主はこれらを見たら驚くだろう。
「あ、ありがとうございます。すぐに商会主に知らせて参りますので、少々お待ちください」
女性は俺に頭を下げて奥に走っていったが、その様子を見ながらエリスに微笑み、そっと頭を撫でた。
「大丈夫、すぐに終わるよ」
「ありがとうございます。タケル様はお優しいのですね」
エリスは俺の言葉に安心したようで、小さな声で感謝の気持ちを伝えてきた。
「いいや。俺はただ正しいことをしただけだ」
俺はつい本心を言ってしまった。
「タケル様、私もタケル様と一緒にいたいです。『私はタケル様のものです』」
エリスは最後は俺に聞こえないように小さな声で恥ずかしそうに言った。
俺はエリスの言葉に嬉しくなり彼女を抱きしめたかったが、ここが商会の中だと思い出し、肩を掴んでエリスに囁いた。
「ありがとう、エリス。俺はエリスのことを大切にするよ。これからもずっと一緒にいよう」
エリスは俺の腕にしがみついたが、受付の女性が戻ってきた。
「すみません、お待たせしました。宜しければ商会主が今すぐお会いになりたいとおっしゃっています。どうぞ、こちらへおいでください」
女性は丁寧に言い、俺とエリスは受付の女性に案内され応接室へと向かった。俺たちはまだ知らなかったが、これから運命というか、今後何かと関わる出会いがあるとは。
俺とエリスは女性に案内されて商談用の応接室へと入った。そこには豪華ではないが、職人が立派な仕事をした家具や絵画が飾られており、商会の富と権力を感じた。だが、成金趣味でゴテゴテではなく、上品にまとめられていた。
部屋の奥には大きな机があり、そこには俺の親と言っても良いような年齢の男性が座っていた。
彼は金髪と青い瞳を持つ。白いシャツと黒いベストを着ていた。彼の顔は穏やかで威厳があった。彼が商会主であることは一目で分わかった。
エリスの手を引いて町の中を進んでいたが、幸いな事に絡まれたり迷うこともなくすんなり商会に辿り着くことが出来た。
「じゃあ中に入ろうか。いいね?」
俺はエリスに聞いたが、彼女の心の準備も整ったようで頷いたので扉を開けて中に入った。
商隊の物はエリスが着ている服以外の全てを渡すつもりで、荷物が入った背嚢を二つ持ってきたが、これが限界だった。
馬車も馬もなくなってしまったからな。見過ごした荷物の中に高価な物が混ざっていたらすまないと思った。
エリスは商隊の奴隷だったが、俺が盗賊を討伐する際に助け出した。彼女の所有権を持った盗賊団の首領を殺したことにより、俺に所有権が移ったんだ。
この世界の奴隷は主人が死んだ後最初に触れた者に所有権が移るシステムだ。
商隊や商会と面識はないが、商隊の荷物を届けることにしたのは対価は求めず荷物を遺族に渡すのが正しいと思ったからだ。
また、エリスの所有権で揉めたくないので説明をする為でもある。
入り口の近くにカウンターがあり、そこにいた受付の女性に声をかけた。
「こんにちわ。先日商会の荷物を運んでいた商隊が盗賊に襲撃された。その盗賊を討伐した者だが、回収した荷物を届けに来た。俺はFランクの冒険者だ」
女性は俺の顔を見て驚いていた。俺は典型的な日本人だが、この世界では珍しい黒目黒髪と言われており、やはりこの町で黒髪黒目を見なかったから目立つはずだ。
背中には弓と槍を背負っているが、この槍は魔石を吸わせると強度と威力が上がる魔法の武器で、光っているのが分かるだろう。
俺の隣にはエリスがいた。
彼女は金色の髪と青色の瞳を持つ美少女のはずだが、火傷でひどく傷ついていた。白いワンピースにローブを羽織っていて顔はフードで隠している。そして首には奴隷の証である銀色の首輪が装着されている。
「あ、あの、本当ですか?あなたが盗賊を討伐したのですか?」
女性は疑わしげに尋ねた。
「ああ本当だ。これを見てくれ」
俺はそう言ってサキから渡された盗賊の討伐証明を見せた。これと引き換えにお金を貰うが、盗賊団の首領を含む20人以上の盗賊を倒したことが記録されている。
女性は証明書を受け取って目を見張った。討伐者として俺の名前が記録されているからかな?
「す、すごいですね。荷物はどこにあるのですか?」
「徒歩なのでそこに置いた二つの背嚢に入っている分しかない」
俺は指を指して答えた。
女性は背嚢の中を覗き込んだ。商隊の馬車にあった荷物は王都からこの町に輸送していた物で、中には高価な魔道具もあったから、商会主はこれらを見たら驚くだろう。
「あ、ありがとうございます。すぐに商会主に知らせて参りますので、少々お待ちください」
女性は俺に頭を下げて奥に走っていったが、その様子を見ながらエリスに微笑み、そっと頭を撫でた。
「大丈夫、すぐに終わるよ」
「ありがとうございます。タケル様はお優しいのですね」
エリスは俺の言葉に安心したようで、小さな声で感謝の気持ちを伝えてきた。
「いいや。俺はただ正しいことをしただけだ」
俺はつい本心を言ってしまった。
「タケル様、私もタケル様と一緒にいたいです。『私はタケル様のものです』」
エリスは最後は俺に聞こえないように小さな声で恥ずかしそうに言った。
俺はエリスの言葉に嬉しくなり彼女を抱きしめたかったが、ここが商会の中だと思い出し、肩を掴んでエリスに囁いた。
「ありがとう、エリス。俺はエリスのことを大切にするよ。これからもずっと一緒にいよう」
エリスは俺の腕にしがみついたが、受付の女性が戻ってきた。
「すみません、お待たせしました。宜しければ商会主が今すぐお会いになりたいとおっしゃっています。どうぞ、こちらへおいでください」
女性は丁寧に言い、俺とエリスは受付の女性に案内され応接室へと向かった。俺たちはまだ知らなかったが、これから運命というか、今後何かと関わる出会いがあるとは。
俺とエリスは女性に案内されて商談用の応接室へと入った。そこには豪華ではないが、職人が立派な仕事をした家具や絵画が飾られており、商会の富と権力を感じた。だが、成金趣味でゴテゴテではなく、上品にまとめられていた。
部屋の奥には大きな机があり、そこには俺の親と言っても良いような年齢の男性が座っていた。
彼は金髪と青い瞳を持つ。白いシャツと黒いベストを着ていた。彼の顔は穏やかで威厳があった。彼が商会主であることは一目で分わかった。
3
お気に入りに追加
454
あなたにおすすめの小説

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。
異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~
WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
1~8巻好評発売中です!
※2022年7月12日に本編は完結しました。
◇ ◇ ◇
ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。
ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。
晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。
しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。
胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。
そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──
ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?
前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜
EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」
優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。
傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。
そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。
次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。
最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。
しかし、運命がそれを許さない。
一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか?
※他サイトにも掲載中
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる