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第33話 奴隷の現実

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「サキさん、このギルドのシステムは他の国や町でも同じなの?」

 サキは少し考えてから回答を始めた。

「サキで良いわ。ええ、基本的にはそうよ。ギルドは国境を越えて活動する組織だから、どこでも同じルールが適用されるの。もちろん細かいところは地域によって違うかもしれないけど」

「なるほど。じゃあ、この町のダンジョンはどんな感じなんだ?」

「この町のダンジョンは、階層により初心者向けからSランクまである古いダンジョンの1つよ。上層は魔物も弱いし、罠もないし、迷うこともないの。ダンジョンの入り口は町の外のにあるの。門から10分も行かないところにあり、ダンジョン入り口を中心にちょとした市場があるの。それと誰でも自由に入れるわ。ただし、ダンジョンに入る前に代表だけで良いけどギルドで冒険者登録されたライブラリーカードを提示する必要があるの。ダンジョンで倒した魔物の数や種類、ドロップしたアイテムなどが記録されるの。それをもとに、ギルドで魔石や報奨金を受け取れるのよ。パーティー員にも同じ記録が入るから、パーティーの代表が報告するの」

「へえ、そうなんだ。じゃあ、彼女はダンジョンに入れるの?」

 俺はエリスに目を向けた。

「ええ、入れるわ。奴隷は冒険者になれないけど、ダンジョンに入ることはできるの。ただし、主人の許可が必要よ。タケル様が彼女にダンジョンに入ることを許可してくれれば、問題ないわ。一応パーティー員扱いになるわ」


 サキがエリスに微笑んだので、エリスはサキに感謝して頭を下げた。

「そうか。じゃあ、俺が彼女にダンジョンに入ることを許可すれば大丈夫なんだな。それとこの首輪を外す方法はないのか?」

 俺はエリスの首輪を指さした。俺は彼女の首輪を外してやりたかったが、エリスは正規の手順以外だと死に至ると言っていた。

 サキは少し困った表情をした。

「それは・・・奴隷商か最初に買った主人から聞かないたいけないけど、奴隷の首輪は魔法で作られていて、奴隷の命とリンクしているの。だから、無理に外そうとすると、激痛が走って死ぬかもしれないの。奴隷の解放は、奴隷商が決めることなの。奴隷商は奴隷の値段や条件を設定して、奴隷の買い手に伝えるの。奴隷の買い手は、その値段や条件を払って、奴隷の首輪を外すことができるのよ」

 サキは慎重に言ったが、俺は驚いた。奴隷の首輪は魔法で作られているのか。それに、奴隷の命とリンクしているなんて、恐ろしいことだ。奴隷の解放は、奴隷商が決めることなのか。それは不公平だなと思う。

「じゃあ、エリスの値段や条件はどうなってるの?」

 俺は急いで聞いた。エリスの首輪を外すためには、どれくらいのお金や時間がかかるのだろうか。
 そう思っていると、サキが首輪を調べていた。

「それは・・・彼女が自力で金貨2000枚を稼ぐか、50歳になるまで待つしかないと思うわ」

「確かに私が生きていれば50歳の誕生日が解放される日だと言われました」

 エリスは小さな声で言ったが俺は呆然とした。金貨2000枚というのは家が建つ金額だ。
 この世界の金貨一枚はは概ね10000円に相当する。つまり、エリスは2000万円分のお金を稼がないといけない。それも、自分で働いて稼がないといけないということだ。それは、とても無理な話だ。それに、50歳になるまで待つというのは、エリスの人生の殆どを無駄にするということでとても残酷な話だ。

「なんだと!?それはひどいな。エリスはまだ16歳だぞ。そんな歳まで待つなんて、ありえないだろ。それに、金貨2000枚も稼ぐなんて、どうやってだよ。自力でということは、俺がお金を与えても意味がないのか?」

「そうなの。奴隷が稼いだお金はほとんど主人のものになるから中々貯まらないの。それに主人がお金を与えても奴隷商では認められないの。奴隷は自分で働いて、自分で稼がないといけないの。それが奴隷商のルールなの。これはライブラリーカードに記録されるから騙せないのよ」

「くそっ、そんなルールはふざけてる。彼女は奴隷なんかじゃない!俺の大切な仲間だ。俺は奴隷から解放してやりたいんだ」

 俺は憤りつい汚い言葉を発した。た。エリスは俺の言葉に感動したが、同時に心配させてしまったようだ。

「タケル様、ありがとうございます。その気持ちだけでも嬉しいです」

「いや、俺もエリスのおかげで、この世界で生きていけるような気になった。だから、これからも一緒に頑張ろう。何とかして、エリスの首輪を外してやるよ」

「はい。一緒に頑張りましょう」

 そうして改めてエリスを強くして ダンジョンに入り、なるべく早く金貨2000枚を稼がせて奴隷商で首輪を外す決意を固めた。

 そして次に魔石の話となった。
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