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第21話 リスタート

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 俺は森の中で息をひそめた。目の前には、古びた木の宝箱があった。この金色宝箱が、俺の運命を変えるとは、その時はまだ知らなかった。

 この箱の中にあった鞄はどうやら、中には何でも入れられるらしい。俺は思わず目を輝かせた。これは、この世界で最も価値のあるものの一つだろう?
 俺はこの鞄に、この森で見つけた魔石を次々と入れていった。
 魔石は、この世界の通貨として使えると思う。
 少なくとも小説やアニメだと売ればお金になるから、これらもそうだろうと楽観視しており、魔石はお金に見え、目を輝かせながら大きいのを中心に拾い、ビー玉程度の魔石は少ししか拾わなかった。

 これで、俺は自由に旅ができる!と俺は小さな笑みを浮かべた。
 魔石の価値についてはあまり気にしていなかった。多分なにか稼ぐ方法が他にもあるだろうさ。
 俺はただ、この世界を見て回りたいと思った。
 うっすらとした記憶にある【シズク】【リナ】この名前の人物を捜すのも良いかな。

 俺は黒い戦闘服に身を包んでおり、
 魔石を集め終わるとアーチェリーと鞄を肩にかけた。
 そして手には気が付いた時に大事そうに抱えていた業物と思われる槍を持った。

 俺はこの世界に来てからずっと、一人でダンジョンを攻略してきたが、この世界に来る前のことをほとんど覚えていない。

 俺は自分の願いを叶えるために、ウィッシュという力を使ったはずなのだが、その代償として記憶と色々なことを失ってしまったようだ。

 記憶に障害が残るような説明を聞いたような気がするが、忘れてしまったものは仕方がない。
 ただ1つ言えるのは、いつまでもこんな寒い山の中に居ても仕方がないということだ。
 早く美少女メインヒロインと出会い、恋人になる展開を期待したい。
 ツンデレや縦ロールもどんとこい!

 ・
 ・
 ・

 俺は森の中を草をかき分けながら歩いた。
 風が吹くと精霊たちの歌声が聞こえてきた。
 その歌声は俺の心を癒してくれた。 俺は忘れてしまった記憶のことを思い出そうとした。
 ボスとの戦闘、そして・・・シズク、リナ。
 彼女たちは俺の大切な人だったはずだ。
 でも今の俺は彼女たちの顔を思い出せなかった。
 名前だけがぼんやりと頭に浮かんだが、彼女たちとどんな関係だったのだろうか?

「まあいいか。そのうちに思い出すだろうさ」

 そう自分に言い聞かせた。
 俺は何のために、この世界に来たのか?
 しかし何はともあれ、自分の可能性を信じることにした。

 弓や槍を構えると安心する。

 俺は、槍をぎゅっと握った。
 そうしてこの未知の世界に挑むために、最初の一歩を踏み出した。

 とはいえ山の中で迷ってしまった。と言うか、そもそもどこに行けばいいのか分からない。

 仕方ないので俺は地面に立てた槍を軸に数秒くるくる回り手を離し、槍の穂先が向いた方を見る。そうやって適当に歩く方向を決め、槍の先が向いた方に進むことにした。
 進む方向を決めると矢筒とアーチェリーを背負い、槍で草木を払いながら進んだ。

 俺の周りの世界は俺の意志に応じて変わっていくようだった。俺が飢えれば、食べられる木の実が落ちてきた。俺が疲れれば、休める場所が見つかった。まるで、俺のウィッシュが現実を作り出しているかのように。

 でも、それはただの偶然だった。
 槍が向いた方に進んだからといって、何か特別なことが発生した訳ではなかった。槍は、ただの槍だ。

 俺の心の奥には、ヒロインへの憧れがあった。 
 俺はこの世界で出会う運命の人を求めている。

 どれくらい歩いただろうか?
 数日彷徨った気がするが、水筒のお茶と、時折発見する果物で不思議と飢えなかった。

 山を越え、谷を歩いていると遠くで聞こえる金属音と戦いの気配に気付いた。
 俺は人と会えるかな?と深く考えず音のする方に向かって歩いた。

 どうやら何者かが戦っているのは確定だ。怒声や悲鳴が聞こえたからだ。
 俺は戦いの場に参加することを決めた。
 この槍はただの槍ではなかった。
 それは俺の運命を導く槍だった。

 俺は記憶を失ったことを恨んでいなかった。
 むしろ新しい物語の始まりを感じており、俺の前には俺の真実が待っており、強い意志が未来を切り開いて行くと確信している。

 俺の物語は今、新たな章として静かに幕を開けたのだった。
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