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第16話 スタンピード
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大広間を覆う闇は、まるで夜が突然侵入してきたかのように深く重い。それは異界からの召喚のしるしなどではなかった。シズクが転移してきた際、彼女の後を追うようにして何体もの魔物が城内へ紛れ込んだのだ。
町中にも魔物が出現し、その原因は勇者召喚の禁忌を破ったことにあった。
召喚の術式が記された古の書物には、短期間での再召喚は厳に慎むべしと記されていた。それを無視した結果、タケルがいるダンジョン内の魔物が町中にまで転移してしまったのだ。
丁度タケルがウィッシュを発動してシズクが城に転移したのと、新たな召喚者を転移させる魔法陣が干渉し、ダンジョン内の魔物を大量に城の内外に招き入れたのだ。
また、死地のダンジョンから湧き出た魔物がナルクの森に雪崩込み、時を同じくして森の出口、つまり人のいる町の近くに出てきてスタンピードが起こり始めていた。
ナルクの森は隣国との国境代わりとなっているが、隣国でもスタンピードが発生しているが、シズクたちは知る由もない。
魔物たちは次々と現れて人々を襲い始める。オークやゴブリンは人を見ると蹂躙し、意味もなく命を奪い去っていった。
本来町の外に現れた魔物は防壁により町に進入出来ないが、内側に転移したため、内側から門が破られたのだ。
恐怖と混乱が支配する中、シズクだけが冷静さを失っていない。彼女は倒された兵士から拾った剣を魔物に投げつけると、当たった魔物は倒れて霧散していく。魔法の剣と進化したそれを再び手にし、魔物たちに立ち向かう。
その姿は戦闘の女神のようだ。
他の者はシズクに付き従い、城から脱出しようとしていた。
【リナ視点】
新たに召喚されたばかりの一年生女子たちが、天川先輩の活躍に目を見張る中、私は彼女たちから頼りにされていた。私はインターハイを制したことのある弓の名手として、今その腕前を魔物たちに向けているの。
「リナ先輩、どうすればいいんですか?」
涙ぐむ狗飼 沙代里と不知火 桃香、2人の1年生が叫んだわ。私は彼女たちの瞳を見つめ、言葉を選ぶ。
「落ち着いて。私か天川先輩の言うことを聞いて。人間以外は矢で撃ちまくりなさい!これは現実なの」
そして再び弓を引き絞り、矢を放つ。
不思議なことに魔物は死ぬと霧散して小さな宝石?に化けたわ。
確か魔石というのらしいけど、血肉を撒き散らす死体が散乱しない分マシかな。
「みんな、逃げるわよ!」
天川先輩の声が召喚の間に響く。
先輩は魔物の隙を突き、私たちを城から脱出させようと道を切り開いているの。彼女の声には不安の色がなく、決意と勇気が感じられたわ。
私も負けていられないわ。
脱出の混乱の中、私は王女に向かってナイフを投じてやったの。王女は肩に刺さったナイフにもだえ、悲鳴を上げる。
私の心には王女への憎悪が満ち溢れていた。彼女は私たちをこの世界に呼び寄せ、タケル先輩を死地に送った張本人だから生かしておけないと思ったの。
残念ながら弓聖の必中補正はナイフには働かないようね。
頭を狙ったんだけど、肩に刺さったわ。
あっ!矢を放てば良かったんだ!私ってバカね。
先輩に続き私たちは窓や扉を破り何とか城から脱出したわ。皆のギフトやスキルから隠された通路を発見して先を進み、敵(城からの追っ手)の目をかいくぐりそれぞれの能力を発揮して協力したの。なし崩し的に実質的なリーダーとなった天川先輩は私たちを指揮し、私たちは一体となって動いたの。
「死んだ魔物が落とす魔石を拾いなさい。これが新しい世界での財産よ!」
天川先輩の命令に従い、私たちは魔石を集めたの。私たちアーチェリー部は攻撃の中心だった。他の人が魔石を拾う間、私たちは矢を回収したの。二人は二足歩行する魔物を殺すのに躊躇していたけど、天川先輩に死にたいの?と言われてからは苦しませないように眉間を撃ち抜くようにしていたの。
時間がもったいないけど、魔石を拾う時間は足が止まり少し休めたわ。私を始め体育会系の部活をしている人はそうでもないけど、明らかに文化系の先輩立ちは肩で息をしていて、それを見た天川先輩が決断したわ。
私は弓と矢を手放さずに持ち、私もそうだけど他の先輩たちはスマートフォンや貴重品を携えていたわ。
教育実習生のみっちゃんも天川先輩と共に皆をまとめていたわ。一部の男子と担任の先生は逃げ出さずに城に残ったようだけど・・・
「リナ先輩すごいですね。普段と違う顔をしていますよ!」
新しく召喚された狗飼 沙代里が言う。
「ひょっとしてタケル先輩もいたりするんですか?」
不知火 桃香の一言に胸が締め付けられる。
私は彼女に微笑んで答えた。
「ありがとう。でも、これは本当の私じゃないの。タケル先輩も召喚されたんだけど、天川先輩と共に殺すことを目的としたところに送られて、先輩は天川先輩だけを城に送ったの。自分より他人の命を優先するなんて先輩らしいよね」
「でもそれじゃあ先輩は・・・」
「あとで天川先輩からちゃんと聞くね。大丈夫。私の先輩が簡単に死ぬものですか!」
「リナ先輩、タケル先輩のことを・・・」
「疲れているところ悪いけどソロソロ出発よ」
天川先輩に導かれ、私たちは炎に包まれた城を後にして町の外へと向かったわ。未知の世界が広がっているけど私たちは恐れなかった。
短い時間だけど共に戦い、絆を深めてきたからだ。私たちは逃避行を続け、仮初めの安息の場を求めて先へ、先へと進む。
町中にも魔物が出現し、その原因は勇者召喚の禁忌を破ったことにあった。
召喚の術式が記された古の書物には、短期間での再召喚は厳に慎むべしと記されていた。それを無視した結果、タケルがいるダンジョン内の魔物が町中にまで転移してしまったのだ。
丁度タケルがウィッシュを発動してシズクが城に転移したのと、新たな召喚者を転移させる魔法陣が干渉し、ダンジョン内の魔物を大量に城の内外に招き入れたのだ。
また、死地のダンジョンから湧き出た魔物がナルクの森に雪崩込み、時を同じくして森の出口、つまり人のいる町の近くに出てきてスタンピードが起こり始めていた。
ナルクの森は隣国との国境代わりとなっているが、隣国でもスタンピードが発生しているが、シズクたちは知る由もない。
魔物たちは次々と現れて人々を襲い始める。オークやゴブリンは人を見ると蹂躙し、意味もなく命を奪い去っていった。
本来町の外に現れた魔物は防壁により町に進入出来ないが、内側に転移したため、内側から門が破られたのだ。
恐怖と混乱が支配する中、シズクだけが冷静さを失っていない。彼女は倒された兵士から拾った剣を魔物に投げつけると、当たった魔物は倒れて霧散していく。魔法の剣と進化したそれを再び手にし、魔物たちに立ち向かう。
その姿は戦闘の女神のようだ。
他の者はシズクに付き従い、城から脱出しようとしていた。
【リナ視点】
新たに召喚されたばかりの一年生女子たちが、天川先輩の活躍に目を見張る中、私は彼女たちから頼りにされていた。私はインターハイを制したことのある弓の名手として、今その腕前を魔物たちに向けているの。
「リナ先輩、どうすればいいんですか?」
涙ぐむ狗飼 沙代里と不知火 桃香、2人の1年生が叫んだわ。私は彼女たちの瞳を見つめ、言葉を選ぶ。
「落ち着いて。私か天川先輩の言うことを聞いて。人間以外は矢で撃ちまくりなさい!これは現実なの」
そして再び弓を引き絞り、矢を放つ。
不思議なことに魔物は死ぬと霧散して小さな宝石?に化けたわ。
確か魔石というのらしいけど、血肉を撒き散らす死体が散乱しない分マシかな。
「みんな、逃げるわよ!」
天川先輩の声が召喚の間に響く。
先輩は魔物の隙を突き、私たちを城から脱出させようと道を切り開いているの。彼女の声には不安の色がなく、決意と勇気が感じられたわ。
私も負けていられないわ。
脱出の混乱の中、私は王女に向かってナイフを投じてやったの。王女は肩に刺さったナイフにもだえ、悲鳴を上げる。
私の心には王女への憎悪が満ち溢れていた。彼女は私たちをこの世界に呼び寄せ、タケル先輩を死地に送った張本人だから生かしておけないと思ったの。
残念ながら弓聖の必中補正はナイフには働かないようね。
頭を狙ったんだけど、肩に刺さったわ。
あっ!矢を放てば良かったんだ!私ってバカね。
先輩に続き私たちは窓や扉を破り何とか城から脱出したわ。皆のギフトやスキルから隠された通路を発見して先を進み、敵(城からの追っ手)の目をかいくぐりそれぞれの能力を発揮して協力したの。なし崩し的に実質的なリーダーとなった天川先輩は私たちを指揮し、私たちは一体となって動いたの。
「死んだ魔物が落とす魔石を拾いなさい。これが新しい世界での財産よ!」
天川先輩の命令に従い、私たちは魔石を集めたの。私たちアーチェリー部は攻撃の中心だった。他の人が魔石を拾う間、私たちは矢を回収したの。二人は二足歩行する魔物を殺すのに躊躇していたけど、天川先輩に死にたいの?と言われてからは苦しませないように眉間を撃ち抜くようにしていたの。
時間がもったいないけど、魔石を拾う時間は足が止まり少し休めたわ。私を始め体育会系の部活をしている人はそうでもないけど、明らかに文化系の先輩立ちは肩で息をしていて、それを見た天川先輩が決断したわ。
私は弓と矢を手放さずに持ち、私もそうだけど他の先輩たちはスマートフォンや貴重品を携えていたわ。
教育実習生のみっちゃんも天川先輩と共に皆をまとめていたわ。一部の男子と担任の先生は逃げ出さずに城に残ったようだけど・・・
「リナ先輩すごいですね。普段と違う顔をしていますよ!」
新しく召喚された狗飼 沙代里が言う。
「ひょっとしてタケル先輩もいたりするんですか?」
不知火 桃香の一言に胸が締め付けられる。
私は彼女に微笑んで答えた。
「ありがとう。でも、これは本当の私じゃないの。タケル先輩も召喚されたんだけど、天川先輩と共に殺すことを目的としたところに送られて、先輩は天川先輩だけを城に送ったの。自分より他人の命を優先するなんて先輩らしいよね」
「でもそれじゃあ先輩は・・・」
「あとで天川先輩からちゃんと聞くね。大丈夫。私の先輩が簡単に死ぬものですか!」
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「疲れているところ悪いけどソロソロ出発よ」
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