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第6話 ギフトショッピング

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 袋小路の奥行きは10mほどあるのだが、袋小路というのは背後を気にする必要がないから、前を向きながら小休止が出来る。
 待ちに待った小休止の機会を利用し、情報交換をしようと俺は質問をした。

「シズクのことが知りたい」

「か、彼氏はいないわ!」

 俺の質問に真っ赤になりながらシズクが答えた。
 思っていたのと違う話になったが、この際だし聞いてしまおうと思うが、彼氏がいないというのは、俺にもチャンスがあるってことだよな?
 本音は一番知りたいことだ。

「えっ?シズクにはイケメンな彼氏がいるんじゃ?ゴールデンウィークに国道沿いのショッピングセンターで腕を組んで買い物をしているのを見たよ」

「アハハ。私彼氏なんて作ったこと無いわよ。それって間違いなくお兄ちゃんよ。彼女にプレゼントする服を選ぶのに、背恰好が似ている私を連れて行った時の事だと思うわ」

「えっ!?本当に?ってそれも気になることなんだけど、そうじゃなくて、今はギフトの話を聞きたいんだ。俺のウィッシュは・・・」

 俺はそうじゃなくてと慌てて得たギフトの話だと言い、先にウィッシュのことを話す。

「あっ!そっちね。えっと、私のはショッピングね」

 シズクの言葉に俺の目が点になる。

 「ショッピングって、どういうことなの?」

 俺はシズクのギフトに興味津々だったが、シズクは財布からお金を出して説明した。

「私のギフトは何かを対価にし、一日当たりレベルに応じた回数の買い物ができるというのよ。でも、何を対価にどのような物が買えるのかは今は分からないの。試す暇がなかったから」

「じゃあ試してみようか。回復系のアイテムとかあるかな?」

 シズクは財布から出したお金を握りしめ、回復系のアイテムを念じた。すると、彼女の手のひらに小さな画面が浮かんだ。正確には手に持っていたスマホに映し出された。どうやら無意識に鞄からスマホを出していたようだ。

 そこには各種回復ポーションの名前と対価が表示されており、俺も後ろからスマホの画面を覗き込んで見ていた。ほんのりと女性らしい甘い香りがしたが、邪念を振り払い警戒に専念した。

「あったわ!回復ポーションがあるわ!でも対価が訳の分からない数字よ!これはどういうことかしら?」

「お金じゃダメなのかな?」

 俺が疑問を口に出すと、シズクはお金を握りながら画面に触れてみたが、何の反応もなかった。日本のお金では受け付けられないようだった。

「時間が惜しいけど、可能なら検証した方が生き延びる率が上がるわよね?他に何か対価になるものはないかしら?」

 シズクは考え込んでいるが、思いつかないようだ。俺は先ほどから何体かの魔物を倒したときにドロップした魔石を思い出した。

「これはどうだ?仮称だけど魔石じゃだめかな?魔力を含んでいると思うから、価値があるんじゃないか?」

 アニメや小説では魔石を売ってお金を得たり、ガチャのポイントにしたりとそれなりに価値があるから、ひょっとしたらなと思う。
 と言うか、これ以外だと現地通貨となりそうだが、そうだとここでは意味を成さないから半ば祈るしか無かった。

 俺はシズクに魔石を渡すと、その魔石を握って再び回復ポーションが欲しいと念じた。しかし反応がないから画面を触り出した。すると画面が切り替わり、中級回復ポーションと初級回復ポーションが選択できるようになっていた。

「やったわ!魔石が対価になるみたいね!中級回復ポーションを選んでみるわ」

 シズクは画面をタップした。すると彼女の手には水色の液体が入った栄養ドリンクのような大きさの小瓶が現れた。これが中級回復ポーションのようだ。

「凄い!凄いよ!これは間違いなくチート能力だよ!これで生き延びられるかも!」

 つい俺はシズクの手を握って喜んだが、シズクは真っ赤になった。

「タ、タケル・・・」

 はっとなり、俺は咄嗟にシズクと抱き合う形で矢を射た。

 小休止をしていると先ほどまでのより一回り大きな魔物が現れたからだ。俺が放った矢だけでは死なず、突進してきたのでシズクを壁際に押しのけるのが精一杯で、もろに突進を食らった。
 俺は吹き飛ばされ背後の壁に叩きつけられ、肺の空気が一気に抜け唸る。

「ぐはぁ!」

 更に噛みつこうとしてきたので、手に取った矢を目に突き刺し、更に力を込めて押し込んで行くと動きが止まり、霧散した。

「タケル!大丈夫!?」

 シズクは俺が吹き飛ばされた時に悲鳴を上げ、急いで駆け寄って来ると俺の顔を覗き込んだ。

「ぐうぅ・・・シズク・・・はぁはぁはぁ・・・もう大丈夫だ・・・」

 俺は苦しそうに返事をしたが、シズクの心配そうな顔を見て微笑んだ。

「ありがとう・・・心配かけてごめんな」

「ううん。私が悪いの。タケルが無事で良かった・・・心配したのよ!」

 シズクは俺の手を握り、この時俺の勇敢な姿に感動して俺に惹かれていることを自覚したようだ。

「タケル・・・私が・・・」

「シズク・・・」

 俺たちは互いの目を見つめ合った。そのとき俺たちの間に何かが芽生えたのを感じた。
 それは恋という名のものだったと思う。

「ちょっと見直したかも。これからも私を守ってね!」

 そっと俺の頬にキスをした。

「ねえ、これっておかしくない?」

 シズクが不思議そうに聞いてきた。

「おかしいって?」

 俺は彼女の顔を見たが、ライブラリーカードを出した。

「私、今レベルが上がったよ。でも今回、敵に一撃も当ててないのに」

「え、本当?」

 俺も自分のステータスを確認した。俺はレベルが上がっているのは当然だと思っていたが、シズクも同じだった。それは確かに不思議だった。

「これまでの戦闘で俺たちはずっと一緒に戦ってきたから、レベルが上がるのは自然なことだと思ってたけど・・・」

「私もそう思ってた。でも、今回は私、何もしてないのにね」

 シズクは首をかしげた。

「もしかして、パーティー員が倒した敵の経験値がみんなに分配されるとか?」

 俺はそんなふうに考えてみた。それならばシズクがレベルアップしたのも納得がいくかもしれない。

「でも、パーティーってどうやって組むの?私たちは最初にここに来たときに、勝手にパーティーになってたの?」

「そうだよな。説明される間もなくここに送られたからな」

 俺たちは互いに顔を見合わせたが、パーティーの仕組みはよく分からなかった。

「まあ、とりあえずレベルが上がったのはいいことだし、これで、もっと強くなれるよね?」 

 シズクは笑顔になった。

「そうだな。そろそろ先に進もうか」

 俺は立ち上がった。
 突進を食らった箇所はまだ痛かったが、気力は回復していた。

「うん。行こう!」

 そうして俺たちは先へと進み出した。
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