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第1章

第545話 イリーナ覚醒へ

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 イリーナが自分の体、つまり己の本体に触れるとその体が輝き出した。

 目を開けられない程の強烈な光だ。
 皆キャーっ!と悲鳴を上げていたが、俺は別の意味で焦った。

 握っていたイリーナの手の感触が無くなったからだ。  
 眩い光の本流の為目が見えず、元々イリーナは気配も薄かったのだが、それでも完全に消えたから焦ったのだ。

 光が輝いている時に俺はイリーナ!と叫んでいた。
 実際は数秒の事だったのだが、かなり長い時間輝いていた気がする。

 後から思えば俺は間抜けだよな!としか言えないのだが、手を握っていたイリーナの体はあくまで魂が構築して具現化した仮初めの体であり、それが本体に吸い込まれる事に伴い消えるのは当たり前なのだ。

「イリーナが!イリーナが消えた!」

 光が消えてから俺はイリーナが消えた事に対して狼狽えていたが、皆が呆れていた。

「我がランスロット様?何をしているのですか?イリーナ様が消えるのは当たり前ですよ!それよりも早く魂が本体に入った事を確認すべきですよ」

 俺はハッとなった。

 言われるまでそんな当たり前の事に気が付かなかったのだ。

 棺の中に横たわるイリーナを見ると、これまでとは違いいその魅惑的な胸が上下しており、愛おしさがこみ上げてくる。

 俺は棺の中に手を伸ばすとイリーナを棺から出し抱きかかえた。
 次に収納からマットを出してそっと寝かせた。

 裸なので取り敢えず着られそうな服を出したが、俺が服を出した途端にクレア達は当たり前のように黙って受け取り、イリーナにその服を着せてくれた。

 また、俺もその様子を見ずに背中を向けるだけの理性は辛うじて働いたが・・・不憫だ。
 あんな狭い棺の中に何百年もの間入れられていたのだ。

 キャッキャッ、キャッキャッと何やら楽しげにしながら化粧をしたりもしていたが、何かの検査をしており「大丈夫。ランスに相応しい浄い体よ!」とか聞こえてきた。
 何をどう確認したのか今はツッコミをいれるのはよそう。

 ただ、イリーナを棺から出したからか、イリーナの魂が本体に戻った為なのかよく分からないが異変が始まった。

 最初は気の所為かな?と思ったのだが、揺れを感じたのだ。
 最初は短かったので気の所為かな?となったが、今では間違いなく揺れを感じる。

 ただ、イリーナに服を着せたり声を掛けても彼女は目覚めない。

 そこで皆に意見を求めたが、聞いた相手を間違えたとしか思えない回答ばかりだ。

 その中で比較的まともなのはキスをする事。
 水樹曰く、「昔からお姫様を昏睡から目覚めさせるのは王子様のキスでしょ?」
 まあ乙女チックだが少ししてから試そうと思う。
 それで本当に目覚めたら驚きだけどさ。

 過激な意見の中には昏睡状態にも関わらず刻印の義を行う事や、似たようなもので、精を直接注入する必要があるとかだ。
 どちらも同じやん!

 流石に寝ているところにそれはできないが、最終手段としてそれをする事を考えねばならない。
 幸い清い体の複製があるから、1度殺してから死者蘇生をする事も考え始めたが、勿論最終手段だ。
 昏睡レイプなんてできんぞ!

 何故そのような本人の人権、いや、神権?を無視するような事を口に出しているのかというと、消えたドアが未だに開かないからだ。
 ドアが再び開く条件は先ず間違いなくイリーナが目覚める事だろう。
 結局考えなくてはならないのはどうにかしてイリーナを目覚めさせる事!なのだ。

 それと揺れの間隔が短くなってきているのと、揺れも段々大きくなってきている。
 なので、数日間目覚めるまで寝かせておく事は除外せざるを得なくなった。

 その為、直ぐに出来る事から始める事になり俺はおとぎ話の王子様を演じる事にした。

 イリーナをそっと抱き上げ、その頬についた髪の毛を掻き分けた。

 「目覚めの時だよ!」

 そう言ってからそっとその唇に己の唇を重ねた。
 そして唇が重なった瞬間、部屋が眩い光に包まれた。
 数秒後に光が爆散すると浮遊感と落下感を感じ、やがて俺達は意識を手放したのであった。

 最終章へ!
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