異世界召喚された俺は余分な子でした

第１章

第537話 死闘

　俺はふらふらになりながらも、なんとか妻達を抱えたりしがみつかせながらボス部屋の方に向かっていた。

　仕切りの壁の部分も全て落ちており、ただただ何もないところにポツンとボス部屋がある、そういうような状態になっている。
　正確にはボス部屋の有る１００階層に続く階段だけがポツンと現れているのだ。

　その為真っすぐにそちらに向かえば良い。
　ただし進行はノロノロと行くしかない。
　急がなければならないのはならないのだが、急ぐとしがみつく力を強くする事になり、結果的に握力がなくなる時間が早くなってしまうのだ。

　俺も高負荷状態になっており、魔力もガンガン削られているような状態だ。
　５人が必死に俺にしがみついている。
　そうなると分かっていれば別の手があったのだが、既に足場が無い今となってはどうにもならない。

　それでもなんとか無事に階段に辿り着き、皆必死に階段へ駆け込んだ。
　はあはあと俺の息は乱れており、妻達も皆腕を震わせていた。
　握力のほとんどを使い果たしており、階段のところでこれで一息付ける！そう思ったのだが甘かった。

　階段が下の方から徐々に崩れ落ち始めたのだ。
　水樹が悲鳴をあげながら落下してしまった。
　俺は転移で何とか水樹を捕まえて階段のところに戻ったが、２秒に１段ずつ消えていっている。
　つまり段々と足場が無くなって行く事を意味する。

　俺達はゆっくり、ゆっくりと階段を１段ずつ登っており、残り３段のところまで来たのだがもう後がない。
　そして階段の先に扉があるが、そこがボス部屋だ。

「見ての通りだ。残念だがこのまま行くしかない。皆気を付けてくれ！」

　そう、行く以外の選択肢がなく、息が上がり魔力も怪しい状態でボス部屋の扉を開けるしかなかった。
　待ったなしの為俺達は半ば転がり込むようにボス部屋の中に入って行った。

　俺は咄嗟に反応できなかったが、反応出来たレイナがクレアと俺を突き飛ばそうとしたのだが、結局のところ３人共何かに吹き飛ばされた。

　そして俺はというと、壁に頭を打ち付けてしまいあっさりと意識を手放した・・・

　そして苦悶の声や何かの音がしているなと感じながら目覚めた時に、俺は咄嗟に愛刀であるアンタレスにてそれが振った腕を食い止めた。

　そして見渡す限りの凄惨な光景に俺は目を疑った。
　俺の傍にはアトランジェの首が転がっていた。
　意味が分からなかった。
　そこら中に妻達のとしか考えられなく、そんな事を考えたくもなかったが、細切れの死体と言うか肉片が転がっていたというか散乱していた。

　俺は訳がわからなかったので、部屋の反対側に転移してボスと向き合った。
　そいつも無傷とは行かなかったようで傷だらけだ。
　どうやらボスはいわゆるキメラと言われている合成獣のようで、鶏とライオンの顔を足して割ったような顔をしており羽は半ば切断されている。
　また、腕も数本転がっており今は残り１本のようだ。

　全身血まみれで、俺が気絶している間に妻達と激しい戦いを繰り広げていたのだと分る。

　ただ言えるのは、妻達では歯が立たなかったという事だ。
　怒りは湧いてくるが、とりあえずとっととこいつを倒し、妻達を生き返らせよう！とボスを睨む。
　俺には死者蘇生があるのでそれほど慌てなかった。

　どうやら気絶した俺を殺すのを最後にしたというよりも、最後になったという感じだ。
　それは妻達が俺を必死に守ってくれたからであろう。

　俺は意を決してアンタレスを構えるとボスとの戦闘を開始するのであった。