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第1章

第512話 低層階へ

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 今までのダンジョンとの違いが1つあった。
 俺達が入るとダンジョンの入り口が消えてしまったのだ。

 あっ!と唸ったものの、どうせ先に進むのだからと、ダンジョン探索を途中で断念して戻るにも同じ道を戻るしかない為、先に進む方が得策となるケースの方が多い。
 その為、留意だけはするのだが敢えて気にしない事にした。
 食料はこの人数だと年単位で持つのだから心配しても仕方がない。

 戦力的に守らなければならないのはクレアと水樹である。
 実際は水樹もそこそこ戦えるようにはなっているが、トリシア達に比べると1段落ちる。
 水樹はどちらかと言うと研究者の部類に入る。
 ダンジョンについて研究しているが、ダンジョンに入る為にそこそこのレベルにしないとなので、魔法と剣術をそれなりに訓練していたに過ぎない。

 彼女が悪い訳ではないのだが、あくまで自衛できる事を目的としており、100階層クラスのダンジョンボスと単独で戦うだけの力はない。

 なので水樹にはオリヴィア、そして俺はクレアを守る。
 他の者達は自身の力で何とでもなる。
 俺はそういうふうに判断をしていた。

 10階層までは正直小手調べだ。
 似ているなというよりも、最初に入ったダンジョンと何ら遜色がないと言うか瓜二つだ。
 水樹に確認すると恐らく40階層のボスを倒すまでは、何の変哲もない極普通のダンジョンに見えるのではないかと言う。

 以前のダンジョンも基本的には、メインのダンジョンの上層階の方と衛星ダンジョンとで何ら遜色がなかったらしい。

 俺は弾き飛ばされてしまったのでそのダンジョンについては聞かされた話しか知らない。

 最も水樹の言うには、事例が少ないので断言はできないと言っていたが、今の状況が同じだという事を物語っていると判断をせざるを得ない。

 低層階は基本的に戦闘力の弱い者の戦闘感や経験を養う為、強者がフォローしつつ戦わせる事にしていた。

 アトランジェについては特に心配しなかった。
 槍同士で模擬戦をすると俺よりも強いからだ。
 但し剣で打ち合えば俺の方が遥かに強いのだが。

 今回心強いのは妻達の中で1番ダンジョンに詳しい水樹を連れて来ている事だ。
 戦力は正直に言うとお荷物でしかない。

 たが、本来未知の世界の冒険や探索というのはそういうものである。
 戦闘に長けた者だけが行っても意味をなさない。
 ジャッジできる者、それが何かを判断出来る者、決断を下す者に適切に指示や報告を出す者、それらがいなければ探索をする事自体意味がない。

 脳筋ばかりが集まっても結局のところ罠に嵌ったり道に迷ったりし、最終的に目的地に辿り着かない事になる。
 食料や荷物の関係で人数に制約があるので探索するメンバー選びが大事で、メンバーが決まった段階で半分程成否が決まると言っても過言ではない。

 そういった意味では今回はかなり考え抜いた人選だ。
 本当はレニスを連れて行きたかったが、向こうの守りの要であるから仕方がない。
 不安があるとしたら弱いメンバーの比率が高い事か。

 単純に強い魔物と戦う腕試しをするのであれば別だが、今回はそうではない。
 クレアに憑依しているあの女神イリスの本体を探し出し、本体を解放しなければならない。

 正直に言うと危険を犯す義理はないのだが、あの女神は神であるにも関わらず泣いていたのだ。
 女が泣いた!俺にとってはそれで十分だ。

 だが妻達からすれば女神が泣こうか叫ぼうがそんな事はどうでも良い。
 ただ、クレアが困っているから助けてくれる!そんな感じだ。
 それにダンジョンを放置するとこの世界に甚大な被害を及ぼす可能性があり、それは看過できない。

 そんな感じであったが、本当はそうでもないのだろう。
 俺の役に立ちたい!単純にそれだけなのだろうと思うが、それでも文句1つ言わないのだから感謝しなければだ。

 そうしてウォーミングアップな感じでダンジョン本体の攻略を開始したのであった。
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