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第1章

第463話 タユーテ

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 俺が自室に戻ると、意外な事にタユーテ以外にもうひとりいた。
 レニスとタユーテが歓談していたのだ。

 俺が部屋に入るなりレニスが俺に飛び掛かってきて胸をぐりぐりした後、俺の口を貪っていた。
 レニスは普段は隙の無いキリッとした上品な剣士だ。但し格好がエロい。
 レーヴェンからかなりしつけられており、所作はレディなのだが今は単なる女だった。
 少しして我に返ったレニスはタユーテからからかわれていた。

「どうしたレニス?」

「ケラーの付き添いをするのです。彼女の刻印の儀が終わった後に戻ってくるランスを待っていたのよ」

「付き添いってどういう事だい?」

「刻印の儀が終わった後って、個人差はあるのだけれども体力的に暫くの間辛いの。トイレにも1人で行けなくなる子もいるので、誰かが一緒に付いていてあげる事にしたの。そしてケラーには私が付く事になったのよ」

「あー!なるほど。そういう事か。本来は俺が一緒にいてやるんだが、今回は5人だからな」

 そしてタユーテの方を見ると椅子に座っていたが、背筋をピンと伸ばしており上品な佇まいだ。
 ただ顔は真っ赤になっており、俯いてもじもじしている感じだった。
 そう、彼女はかなり奥手で恥ずかしがり屋さんなのだ。

 これから愛し合うと分かっているから恥ずかしいのだろう。
 中々自分から動けそうにないので、俺が手を取り声を掛けた。

「さあ行こうか」

 やはりモジモジしてるので強引に抱き寄せ、きゃっという短い悲鳴を聞きつつお姫様抱っこした。
 そして部屋を出ようとしたがレニスが一言言って送り出してきた。

「可愛がって貰うのよ。頑張ってね!」

 タユーテはかなり恥ずかしがっておりモジモジしている。その仕草はうん!実に新鮮だ!

 タユーテはとにもかくにも刻印の儀を始めるにあたってひたすら恥ずかしがっており、その恥ずかしがり振りは俺が気恥かしいさを感じるには十分だった。

 これは困ったなとなったが、彼女を和ませる為に剣の事について聞いた。
 剣の事について聞けばよく喋っていたからだ。
 今までの練習や鍛錬はどうしていたのかと聞くと、大概デニスと稽古や訓練をしていたと言う。
 50年前は4対6でレニスの方が強かったのだが、その後ほぼ互角にまで上り詰めていたという。
 ただ、体力の衰えからこの10年程はまるで歯が立たなかったのだと。

 だが、やはり得意の剣の話をしている時のタユーテの顔は輝いているように見えた。

 その後は落ち着いて俺を受け入れる準備ができたので、無事に刻印の儀を済ませた。
 彼女はインターバルタイムに入った時は、先程の恥ずかしがっていたのが嘘のように俺にずっと甘えていた。
 そして、珍しくタユーテから話して来た。

「あのねランス。私ね、ちゃんとお酒を止めていたの」

 普段は大人しく引っ込み思案なのだが、いざお酒が入るとかなり饒舌になり、日頃溜まっている鬱憤がお酒の力を借りて出てくるようだった。
 かつては仲間に絡み、俺の頭にもお酒をぶちまけた事がある位だ。
 俺が女性に対して優し過ぎる!もっと乱暴に扱っても良いのだ!といった具合に持論を展開していた。

 俺は彼女をぎゅっと抱き寄せ、抱きしめながら背中を擦った。

「偉かったぞ!頑張ったな!」

 彼女は満面の笑みでうんと返事をしていた。そして彼女は一つ聞いてきた。

「ねえ私の旦那様!そのね、私の胸を大きくしてくれた?」

 彼女の胸をまじまじと見ると、確かにこんな大きさだっけ?と思うような大きさだった。可哀想な位に胸が小さく、相当なコンプレックスを抱いていたという記憶がある。

「うん。多分大きくなったと思うけど、意図的に大きくしたつもりはないぞ。肉体を再生する時に偶々大きくなったようだね」

 タユーテはそれについてひたすら感謝をしていた。

 俺はふと疑問が浮かんだ。
 大した事ではないのだが、刻印を刻む順番は年齢順だと思い込んでいたが、どうやら違うなと。
 というか、年齢順で決めたと聞いていたのだ。

「あれ?そういえばタユーテの方がケラーイノより年上だったような気がするが?どうだっけ?」

「ちゃんと私達の事を覚えてらしたのね。嬉しいわ。その、順番を変わったの。私の心の準備がまだできていなくて、ケラー達に順番を代わってもらったのです。そしてアルとケラーはじゃんけんでどちらが先に刻印を刻んでもらうかを決めたようですわ」

 普段のタユーテはおっとりしており、自分からはあまり話をしてこない。
 こちらから聞いた事に対してはきちんと答えてくれるのだが、やはり性格なのか押し黙っているタイプだ。

 それでもベッドの上では俺に甘えてくるし、そんないじらしい彼女が愛おしかった。

 そして刻印が刻まれた後、彼女は嬉しさから俺が引いてしまう位というより、俺がオロオロしてしまう程に大袈裟に泣いていた。

 そう、この50年俺の帰りを待つ日々は辛かったのだと。
 ナンシー達と違い自分が年老いていくからだ。
 己の体が日々衰えていくのが辛かったと言っていた。
 これが普通の者であればどうという事はないのだろうが、やはり他の妻達の姿が変化しないから羨ましくもあり、辛かったのだろう。
 その後少し抱きしめていたが、落ち着いたのか、百合亜が待っているからと俺を送り出したのであった。

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