異世界召喚された俺は余分な子でした

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第1章

第453話 カイル

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 俺はおもむろに城にゲートを出し、謁見の間に繋げた。
 正規の手順を待ってはいられないからだ。

 謁見の場に入ると、丁度カイルが家臣達と会議をしている最中で俺の突然の訪問に、その場の全員が目をを丸くしていた。

 俺は表舞台にはもう40年以上顔を出していないのだ。
 謁見の間にいた者の中にカイル以外は俺の顔を知る者はいなかった。

「叔父上、お久し振りと言いたいですが、突然何をなさりに来られたのですか?」

 いち早く我に返ったカイルが聞いてきた。

 そして慌てた家臣が怒鳴りだした。何者だ?とか、無礼なというような声が聞こえてきた。
 俺はあえて天使と分かるような格好やスキルを使った。久し振りに羽まで出していた。

 俺はあえて強めな口調で言う事にした。

「この国を統べる王たるカイルよ。我がこの国を、いや、この世界を去る時が来た。今よりこの国の行く末を左右する大事な引き継ぎと、アイテムなどの授与を行う。この者達を部屋から出すのだ」

 俺の様子と口調に皆震えていた。なんとなく事の重大さが分かったのか、カイルが会議を中断した。

「すまないが皆下がってくれ。この方は大丈夫だ。この国を統一したかの御仁だ。それに本気を出せば城ごと数秒で吹き飛ばす事ができる。本来このような訪問の仕方をされる方ではない。深刻な事態と思ってくれ」

 結局カイルは部下にその場で会議を続けさせ、カイルの私室に移る事になった。

 部屋にはカイルの妻もいた。
 カイルの妻はリギアに挨拶をしていた。夫婦で訪れた場合、妻は相手の妻にまずは挨拶をする風習だからだ。

「これはリギア様、ごきげん麗しゅう。相変わらずの美しさで羨ましい限りでございますわ。今日はいかがされましたか?」

 こんな感じだ。

 席に座ると俺はおもむろにカイルに話し始めた。

「会議中に悪かったな。こちらも切羽詰まっており猶予があと1日しかない。俺達はいよいよ明日この世界から元の世界に戻る事になる。この国を覆っていった結界を作っていたダンジョンを攻略したからだ」

 おもむろにダンジョンコアとドロップ品を出した。

「これからは大陸の外からも攻められる事もあるだろう。この国を守る為の切り札をお前に与えていく。この魔道具だ。これの使い方などを説明するが、危険性や利便性も合わせて説明をする。管理に気をつけるんだ。使い方を誤れば悲惨な結果を招く」

 きつい口調で念を押した。
 そしてそこまで話すと、逆にカイルが質問をしてきた。

「このような大事なお話の時におば上も一緒というのは珍しいですね」

 リギアが話を切り出した。

「カイル。貴方はご両親から私達の事を何と聞いておりますか?」

「単に叔父上と叔母上と聞いております。それ以上の事は聞かされてはいないのですが、何か有りましたか?」

 リギアは悲しそうに、そうなのですねと呟いていた。

 カイルの見た目は、俺の収納の中にあったスマホやタブレットの中にある己自身の筈の写真とそっくりである。

 俺は何も言わずにタブレットを取り出した。40年以上触っていないが、バッテリーはまだ残っている。

 収納の中に入れていれば時間が止まるからバッテリーの残量も残っており、タブレットにある写真を見せた。

「カイル、よく聞くんだ。これは元の世界に俺が召喚される前の俺の生まれた国の文明の利器だ。俺は元々四40代半ば、ちょうど今のお前の年ぐらいに召喚され、その時に18歳の体になったんだ。もう記憶にはないが、事実として理解している。この文明の利器の中に、風景を切り取り、瞬時に絵を書き保管する写真という技術がある。その写真に元々の家族の写真も入っていたんだ」

 カイルはタブレットの写真を見るとかなり驚いていた。

「見ての通り、俺がお前の年だった時の写真と、今のお前がそっくりなんだよ」

「確かに親子というくらいにそっくりですね」

「それを踏まえての話だが、お前のご両親はお前に真実を告げなかったのだな。責めはしまい。お前が20歳の時ぐらいに伝えてあげてくれと言っておいたのだが、あの方達のお前への溺愛ぶりと、性格からは言えなかったのであろう。なんとなく気が付いているとは思うが、俺とお前は似過ぎているんだ」

 そして1呼吸おいて俺はカイルに告げた。

「すまない。俺とリギアがお前の本当の、その、生みの親なんだ」

 俺は漸く真実を告げたが、リギアはカイルの目を見る事ができなかった。

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