異世界召喚された俺は余分な子でした

第１章

第438話 研究開発

　子供の乳離れが終わった頃合を見計らった訳ではないが、時を同じくして俺達は研究所を本格的に稼働させていた。
　人材を集めたり、俺の知っている知識をこの世界に広める為だ。
　勿論研究成果は向こうの世界にも持ち帰る。
　色々な知識を提供し、この星自体の文明レベルを上げる事を目的としている。
　ただ、俺達がいつこの世界から元の世界に戻る事になるのかが分からないので、現地スタッフをある程度入れている。
　俺達が突如いなくなった場合は、その者達が全て引き継ぐ形にしている。
　その為、副所長が実質的に所長になる。
　それとは別にヒナタが率いる妻の半数は、向こうの世界に行く為の手段を探るグループに分けた。
　つまりグループは３つに分けている。
　研究班、ヒナタ率いる探索班、そして屋敷の運営などに関わる運営班になる。
　意外な事に、屋敷の運営はトリシアが仕切る事になった。

　探索班と運営班はトリシアとヒナタを除き、時折メンバーを入れ替える事としていた。リーダーだけは動かせないのと、研究班もその性質上、中々メンバーを動かす事ができない。

　ただ、レフトアイを俺の副官扱いにし、色々な調整役をしてもらっている。
　おかげで俺自身が研究の方に没頭できる状態になった。
　そう、この世界に何年いるか不明だが、この世界で暮らす為の資金を自力で確保しなければならない。
　俺はそちらの方に回った形になる。

　ドラゴン達に言えば生活費は出してもらえるだろうが、それをするのは最終手段であり、努力した結果、どうにもならない場合にのみ助けてもらう。そういう形もあるが、なるべくならば頼りたくない。

　研究開発で市場に送り出したのは料理のレシピだったり、電気の作り方や電球の作り方、電池の概念、物理の法則や各種数式だったりする。　

　また、天体観測の方法なども伝授し、望遠鏡を作ったりもしていた。
　そして、ゴムチューブの作成に成功し、タイヤの技術が出来上がったりと技術革新を起こしていた。
　また、資金源は開発した物の販売やインセンティブで賄い、生活費や研究費用にしていた。

　リギアと２人して息子がいる家族の所に、親類として年に１回訪問する事にしていた。

　やはり顔立ちが俺に似ているが、目付きは育ての親の方に似てきている。
　闊達な子で、思いやりのある子に育っているようだ。
　俺はおぢちゃんと呼ばれ、リギアはおねえちゃんだった。この差は何だ？せめておにぃちゃんと言って欲しかった。

　もし俺にあまりにも似ていると子供に聞かれた時、親戚だから似ていて当たり前だろうというような話にする為に、育ての親とは従兄弟としていたのだ。

・・・・・

　また、時は流れて、こちらに来てから既に７年が経っていた。
　だが、リギア以降誰も妊娠しなかった。
　避妊は一切していなかったし、俺の方に問題もないし、リギアに第２子が出来ないのはおかしかった。
　よくよく妻達と話をしていると、皆生理が来なくなったと言う。
　生理が来なければ妊娠するはずもない。

　妻達にはそういった体の作りに関する知識がなかった。
　どうやら向こうの世界で妊娠していた妻達は、生理が止まっているのを解除する方法を見付けていたようだ。
　リギアの時は偶々た刻印の儀の時が妊娠の確率の高い日だったようで、奇跡的に身籠ったようだ。
　今まで知らなかったが、刻印が刻まれるという事は、生理が止まるという事だ。
　ただ解除する方法があるのだが、向こうにはその伝記があったのか、偶々誰かが発見したのかもだ。
　少なくともこちらの世界でその術を知る者がいないという。
　その為、リギアが身籠もったのは奇跡的な話になる。
　ただ１つ言えるのは、少なくとも俺はこの世界に己の子孫を残す事ができるという事であった。