上 下
353 / 566
第4章

第352話 迎撃準備

しおりを挟む
 俺達はワーグナーに向かって来る船団に対して備える事にした。航行中の洋上で倒してしまう手も有ったが、上陸して攻め入るも歯が立たずに追い返えされる方が抑止力になると判断した。

 なるべくなら殺しは避けるが、死を覚悟する位の恐怖を与え、2度と攻め入ろうとしてはならない!そういう恐怖を植え付けてから国に送り返してやろうと思っている。

 また、こちらの能力が奴らの常識の域を超えているはずなので、手を出してはいけない相手に手を出したという事実を分からせてやろうと思っている。恐らく来るまでに1か月位掛かると思っている。まだ出港準備ができていなかったのと、船団の様子からは、出航準備にまだ1週間は掛かると推測した。

 それと、距離から計算すると、航海に3週間は掛かるのではないかと推測される。
 帰りの事を考え、燃料を節約しての航海になるはずだからである。巡航速度ではなく、戦闘速度がいつまでも続く訳がない。燃焼効率が悪く燃料を食うからだ。

 また、早苗が建物を構築するのは、一瞬で構築するという訳ではない。ワーグナーサイズのお城を構築するのに2週間は掛かり、更にそれを大きくしていく。また、間取りを変えて大きなホールも作ったりするので、準備できるかどうかはギリギリのラインというところである。尤も一般民家程度であれば一瞬で構築できる。

 城攻めをさせ、城を陥落させたと思わせる必要がある。

 早苗は喜んで協力してくれていた。初めて自分が役に立つからである。それも誰も殺す事なく、送り返す為の準備だと言うと尚更喜んでいた。彼女はあまりにも優し過ぎる。
 人が傷つくのを極端に嫌う、そういう性質なのだ。

 早苗が城作りに勤しんでいる間、早苗には護衛を付けていて、護衛達には海を見晴らせる事を兼務させていた。
 俺はと言うと、皆と協力し町を渡り歩き、未踏領域を開拓して、あちら側の調査を進めていった。1ヶ月ではそれほど多くの情報が得られる訳ではないが、不思議な事に鉄道がなかった。技術的には蒸気機関車であれば、十分に作れるだけの技術力を持っているはずなのだが、鉄道がない。

 発想の問題だろうか?また乗用車もない。やはり馬車が主流であった。なぜ船にだけ原動機があるのかは謎だ。そこの部分だけ文明レベルが突出していたのだ。また、火縄銃が使われており、更に謎が深まる。
 過去の異世界人が偏った技術を伝えた為に、自力の技術者が育たなかったのだろうか?

 調査自体は順調に進んでいた。使われている文字はこちらと同じ文字であった。また、言語も一緒である。違いは多少の訛りがある位だ。

 文献を調べていると、彼の地には異端者を封印するというような表記の書籍がいくつも見つかった。彼の地とはこちら側の事だ。無視できない内容だ。

 それと魔石がやたらと高く売れた。ゴブリンの小さい魔石であっても、一般市民の1ヶ月分位の稼ぎにに匹敵する価格なのだ。

 なので俺達は魔石を色々な町で少しずつ売り、活動資金を作っていた。主に首都に屋敷を購入したりして、活動拠点を作ったりしていた。
 寝泊まりするかどうかは別として、調査中に戻ってきて休憩したり、資料を読んだりするスペースは欲しいものである。

 また、治安の方はかなり良く、平和そのものだった。
 国の構成は大小様々な国が集まっており、それらの国がひとまとめになり、1つの共同体と言うか、連合国を作り上げていた。また、最高権力者はそれらの国の首長達が議員を務めている。更に大統領制があり、選挙にて決められる。全ての国の中から立候補が可能で、選挙にて選ばれた大統領が統治しているようだ。
 どちらかといえばアメリカの制度に近い。

 大統領制も既に導入から200年を超えているそうだ。この200年はというと、戦争というものが発生しておらず、時折海外から船団が攻めてくる位で、常にそれらを撃退して平和を保ってきたと言う。こちらからは攻めないが、責められれば全力で守る専守防衛のスタンスである。

 だが、何故か今回はワーグナーに攻め入ろうとしているというより、数万人の部隊が進軍中だ。今は出航を確認してから既に3週間近くが経とうとしており、港町は軍船がいない事により閑散としているような状況であった。

 俺は時折船団の行方を探し、どの辺りにいるのかというのを常に把握していた。 

 あと2、3日で船団が到着しようとしていた頃になり、ようやく偽物の町が完成し、各種トラップを仕掛けていくのであった。
しおりを挟む
感想 64

あなたにおすすめの小説

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

孤高のミグラトリー 〜正体不明の謎スキル《リーディング》で高レベルスキルを手に入れた狩人の少年は、意思を持つ変形武器と共に世界を巡る〜

びゃくし
ファンタジー
 そこは神が実在するとされる世界。人類が危機に陥るたび神からの助けがあった。  神から人類に授けられた石版には魔物と戦う術が記され、瘴気獣と言う名の大敵が現れた時、天成器《意思持つ変形武器》が共に戦う力となった。  狩人の息子クライは禁忌の森の人類未踏域に迷い込む。灰色に染まった天成器を見つけ、その手を触れた瞬間……。  この物語は狩人クライが世界を旅して未知なるなにかに出会う物語。  使い手によって異なる複数の形態を有する『天成器』  必殺の威力をもつ切り札『闘技』  魔法に特定の軌道、特殊な特性を加え改良する『魔法因子』  そして、ステータスに表示される謎のスキル『リーディング』。  果たしてクライは変わりゆく世界にどう順応するのか。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

黒の瞳の覚醒者

一条光
ファンタジー
 あらすじ  普段通りに眠りに就いたはずが朝を迎えたのは一面に広がる草原の中だった。  何も分からないまま航は彷徨い、日本ではありえない町に辿り着き情報を得る為に町に入るがそこでは異界者は蔑みと恐怖の存在だった。  恐ろしい異世界人の仕打ちに怯え放浪する中、餓死寸前で優しい女性に出会う――。  現在フィオ編の更新は現在止まっています。  小説家になろうに投稿されているものと同じものになります。

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

処理中です...