上 下
305 / 566
第3章

第304話 クラリスの蘇生

しおりを挟む
 俺は今目の前で首を吊って亡くなっている女性が、救出対象であるクラリスだと確信した。
 死後それなりに時間が経っているのが分かった。何故ならば体から汚物が排出されていたからである。
 弛緩筋が働かなくなった結果として当然、膀胱の中にある尿や腸の中の便が出てしまうもので、窓からもはっきりと分かるし、何より汚物の臭いが漂っている。

 だがまだ丸1日経っていなければ、俺の死者蘇生でなんとかなる!
 そう思い壁をライトソードで焼き切り、壁が落下すると音で騒ぎを聞きつけられるので、一旦切り取った部分を収納に入れる。そして部屋に入ると、熱を持って溶けている状態である切り取った部分を出してそこに当て、周りを収納にある他の部材で補強し、壁の落下を防ぐ。これで時間を稼ぐ事が可能だろう。そして俺は更に時間を稼ぐ為の手段を考えた。

 その前に死者蘇生を途中まで試す。実行はしないが、死者蘇生で蘇生対象が出るかを確認すると、確認ができた。どうやら猶予はあと1時間もないようだった。

 彼女は美しかった。母親と同じ見事な銀髪のストレートだった。膝の辺りまであるかなり長い髪だ。俺はふと思った。彼女はどうして自らの命を絶ったのであろうか? おそらく 母親が自分の為に魔王の手先となり、民を虐げざるを得ない。その状況を止めさせる為の手段として自死を選ぶしか無かったのだろう。
 自らの命を絶つ事により、死ぬに死ねなかった母親を死なせてあげようとしたのであろう。そうする事によって無垢の民を苦しめる事を避けようとしたのではないか!? 俺はそう感じた。

  母親は娘の事を溺愛しており、そんなクラリスが人質となってしまえば人質の効果は絶大である。おそらく娘が自殺した場合でも、死体を慰み者にする等と伝えられ、実質的に自殺を禁止されたのだと思われる。しかも自殺を禁止したのではなく自殺をしたらどうなるかという事だけを伝え、その気になれば自殺できた筈なので、かなり苦悩しただろう。酷い事をする。

 俺は彼女の脚を切断し本体を欠損修復した。そして 部屋の中をクリーンで綺麗にし、欠損修復をその脚に施し始めた。
 彼女の本体をよく見ると胸がかなり控えめだった。母親の外観からはそれなりの胸を期待したが、残念ながらそうではなかった。なのでここは欠損修復をする過程で俺の欲望サイズに変えさせて貰う。きっと彼女は驚くであろう。そして欠損修復が終わったその体は俺の欲望が詰まった見事な体になった。

  取り急ぎ収納の中から着られそうな服を着せた。死者蘇生を行う準備が整ったので、ゲートでセレナを呼んだ。
 かいつまんで状況を念話で説明してあり、その為セレナは死者蘇生で俺が気絶した後に屋敷に連れて行くように話をした。俺は一旦皆の所に戻り、屋敷とゲートを繋げ皆を返した。
  そしてまたセレナの所に戻り俺は死者蘇生を開始した。いつもの事だが、気分のいいものではない。魔力を全て持っていかれるのだが、その状態は何度経験しても慣れないものである。そうしてクラリスの心臓の鼓動を感じた直後に、やはりブラックアウトしたのであった。
しおりを挟む
感想 64

あなたにおすすめの小説

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

孤高のミグラトリー 〜正体不明の謎スキル《リーディング》で高レベルスキルを手に入れた狩人の少年は、意思を持つ変形武器と共に世界を巡る〜

びゃくし
ファンタジー
 そこは神が実在するとされる世界。人類が危機に陥るたび神からの助けがあった。  神から人類に授けられた石版には魔物と戦う術が記され、瘴気獣と言う名の大敵が現れた時、天成器《意思持つ変形武器》が共に戦う力となった。  狩人の息子クライは禁忌の森の人類未踏域に迷い込む。灰色に染まった天成器を見つけ、その手を触れた瞬間……。  この物語は狩人クライが世界を旅して未知なるなにかに出会う物語。  使い手によって異なる複数の形態を有する『天成器』  必殺の威力をもつ切り札『闘技』  魔法に特定の軌道、特殊な特性を加え改良する『魔法因子』  そして、ステータスに表示される謎のスキル『リーディング』。  果たしてクライは変わりゆく世界にどう順応するのか。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

チートな嫁たちに囲まれて異世界で暮らしています

もぶぞう
ファンタジー
森でナギサを拾ってくれたのはダークエルフの女性だった。 使命が有る訳でも無い男が強い嫁を増やしながら異世界で暮らす話です(予定)。

処理中です...