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第2章

第287話  正体

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 俺は魔物を率いていると思う大きなミノタウロスに近付いていく。一瞬こいつが魔王かと思ったが、どうやら違うっぽいというか、裕美と一緒っぽいと感じた。

「お前は何者だ?ここは人の住む、いや住んでいた領域だぞ」

「お主人間じゃないな!?何者だい?」

「俺か?俺は向こうの大陸の覇者で、かつて人間であったが大天使に強制的にチェンジさせられたランスロットだ。ひょっとしてお前、日本人か?」

「懐かしい国名だな。私はかつて人間であったが、魔王のなり損ないにされたフランス人だよ」

「同じような境遇のアメリカにいた日本人を救ったぞ。魔王として召喚されたが、既に魔王がいたからかオークキングになっていた奴がいるぞ。因みに俺が真の勇者だ。一緒に勇者召喚された者は俺ともう一人しか生きてはいないがな」

「救ったとはどういう事だ?それとさっきのあいつらは何者だ?」

「俺の妻の一人がオークキングの体だったが、色々あり友達になり、死んだ時に人間に戻れと思い浮かべて欠損修復と死者蘇生を行ったんだ。すると元の人間の姿に戻ったんだよ。そして無事に人間として生き返って、今では俺の妻だよ。それとさっきお前が戦っていた奴等だが、恐らくこの国が魔王に対抗すべく勇者召喚を行ったんだが、術式を誤った為にどこかの世界へのゲートが開き、そこから来た奴らだよ。既に魔法陣を破壊したからゲートは閉じているが、厄介な事にかなり進んだ科学力があり、あの爆発は個人が携帯している原爆か水爆だよ。近隣の生命がいなかっただろう?あの術式は直径数百キロの範囲のありとあらゆる生命体を体ごと生贄にしたんだよ!」

「本当か?と言うかお主、嘘は言ってはいないようだな。人間に戻れたとは羨ましいな。しかし私は魔王様の奴隷にされてしまっていて、それは叶わぬのであろうな。魔王に近隣の人間を、美人の女以外は駆逐せよと命じられてこの国に攻め入ったが、人間とではなく奴等と戦いになり、先遣部隊がやられた感じなんだ!」

 俺は何も言わず首に巻かれた隷属の首輪に触れながら俺の奴隷にした。

「今は奴隷の主を俺にした。確認してみろ。そして奴隷開放してやるよ」

 そうして頷いたのを確認し開放した。パリンと音と共に首輪も外れた。

「これは驚いた。素晴らしい!これでもし人間に戻れたらお主の奴隷でも何でもやってやるよ。漸く首輪が外れたんだな!これでもう魔王の手下をする必要がないのだな。人間に戻りたいな。ありがとう!」

「試してみるか?魔物は一旦魔王の元へ返した方が良いぞ。お前を認識できなくなるからな。お前ミノタウロスキングだろ?何故奴隷なんかやっている!?俺と正面から打ち合ったらお前の方が強いだろう?」

「そうだな、この首輪の所為で逆らえなかったから、魔王の手下なんぞする羽目になったが、恐ろしい奴に変わりはないよ。反撃の機会がなかったから直接戦った事がないんだよ。召喚されて立ち上がれずに藻掻いている、そんな時に首輪を装着してきたんだよ。魔法も封印されていて苦労したよ。あいつは話がまともに通じないぞ。一言で言うと気狂いだよ。近隣の街を襲い、公衆の面前で平気で女を犯すんだ。おまけに犯した女を捕まえた町の住人に、それも衆人観衆の元で犯させるんだ。出来なければその男を殺し、血まみれな哀れな女を更に別の男に犯させる。最後まで出来るまでやらすんだ。その後はオーク共に払い下げさ。反吐が出る思いだったよ。さあお前達、次にこの大天使と一緒に現れる者が私だ。恐らく人間の姿だ。敵対したら殺すが城に戻る者は見逃す。世話になったな!お前達は城へ帰るんだ。もしも私に従うならここに残っていても良い」

 俺は説明した。ゲートで俺の国に行く。そこで同じ境遇の者と会わせる。そして体を一部切り取り、欠損修復を行った後に一旦殺してから死者蘇生で蘇らすと。

 そいつは名前をセレーシャという。
 魔物達は引き上げていった。人間に戻ったら魔物は敵対するとはいえ、今まで率いてきた者を今ここで屠る気にはなれなかったと言う。
 俺は一旦ワーグナーの人気の無い所に行き、念話で事情を説明した。一旦奴隷にして連れてくるなら皆大丈夫だろうという。

「死者蘇生行うとまず間違いなく俺が気絶するんだ。なので俺の護衛なしじゃ無理なので、屋敷にセレーシャを連れて行くが、その、流石にミノタウロスでは皆が不安がるんだ」

「お主は奴隷契約のギフトを持っておるのであろう。スキルの隷属契約ではこの首輪は破壊できなかったからね。奴隷商に試させたが無理だったよ。そうだね。分かった。お主に縋るしかないからな。お主が悪意ある行動を取らぬのは分かっておる。私を奴隷にすると良い」

「分かった。セレーシャの意思で契約はいつでも破棄できるようにしておく」

 そうして触れて奴隷契約を実行しすると幻影がはっきり見えた。セレーシャはフードを深くかぶっていたので顔は見えなかったが、俺と一緒に魔王と対峙しており、アリゾナや裕美もその場にいた。

 お互い驚いた。

「そのなりだが、この幻影が見えたと言う事は、お前ひょっとして女か?」

「ええ。このなりでこの体は雄だが、私はれっきとした女だよ。人間の姿に戻ったらお主がプロポーズしてくると予測しているよ。自分で言うのも何だが、見た目には自信があるからね。超モテモテだったんだ。うう。早く戻りたい。期待しても良いんだな!?」

「うん!期待してくれ!あの幻影でセレーシャは人の姿だったから問題ないだろう!そうか美人さんか!?それは期待しているよ!名前からひょっとしてとは思ったんだよな。後で召喚される前の事などを教えて欲しい」

 そうして握手をしてからゲートで屋敷に連れ帰るのであった。
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