上 下
238 / 566
第1章

第237話 変則ダンジョン

しおりを挟む
 ボス部屋は50m四方位の正立方体の部屋だ。

 出てきたボスはそれは恐ろしい奴が出てきた。
 俺は思わずレニスのお尻に顔を埋めて隠れた。セリカも同じくレニスのお尻に顔を埋めて、2人して泣いた。

「あり得ない!アレは駄目だ良くない!早く倒して!だれか!消してくれ!頼むから!」

 体長4m程だが、問題は奴が黒く、台所によくいるあのカサカサしている奴としか思えない姿格好だからだ。

 アンバーは強かった。ホーネットも強いが敏捷力が違う。
 奴の背中に飛び移ると、羽と頭の繋ぎ目に拳を突き立て、内部組織を引き抜くとあっさり終わった。

 白い体液まみれの姿であるにも関わらず、アンバーは俺の所に褒めて貰いに来たのだが、俺は目の前でその姿を見た瞬間泡を吹いて気絶した。そう、セレナと一緒に。

 アレの体液を被っているのだ、自分に掛かったらと思うと耐えられなかった。
 気が付くとレニスが膝枕をしてくれていて、シェリーがセレナを膝枕している。

「あれ?一体何が?俺はどうしていた?」

 レニスが困ったように教えてくれた。

「アンバーがボスを倒した直後に、2人共泡を吹いて気絶したのよ。大丈夫?」

「うーんなんでだろう?そういえばアンバーがボスを倒してくれたのは覚えてるんだよなー。アンバーおいで!」

 アンバーは今は小奇麗だ。呼ばれて嬉しそうに駆け寄ってくる。

 俺は、ぎゅっと抱きしめて頭をなでるとキスをしてお礼を言う。

「ありがとう。あいつキモかったろうに!本当にありがとう」

 もう一度抱きしめると、遅れて目覚めたセレナもアンバーに抱き着いて、俺と2人して泣いた。

 皆不思議そうに大袈裟な俺の反応に戸惑っていた。

 そしてアンバーが嬉しそうにドロップを差し出した。魔石とアンバー向けの武器付きの手甲だ。任意に爪を出し入れできる。俺はアンバーの手に装備してあげるのだが、アンバーはキョトンとしていた。

「おおー!アンバーに似合うな!うんうん。強化したからアンバーの助けになる武器?防具だよ」

 アンバーは遠慮がちに顔を赤らめた。

「頂いても良いのですか?」

「うん。君に使って欲しいんだ。今度服も買おうな。あまりおしゃれをしていないだろう?」

 アンバーは泣いて喜んでいた。大袈裟だなあと思うも、アンバーの過去に起因しているんだろうなと、たっぷりの愛情で心を溶かしてやらないとなと思いつつ、尻尾をモフってしまった。ナンシーに小突かれて我に返り、先へ進む。

 6階層から9階層は、大きさこそ今までのフロアと大して変わらないが、出てくる魔物がボス級ばかりだ。オーガナイト等で、全員がローテーションで先頭を代わって進んでいった。

 途中腕を切り落とされたりした者が出たが、俺が即時に繋げたり回復をしていったので問題はなかった。
 今は恐らく夕方位になっていたが、漸く10階層に着いた。
 ボス部屋の後におっさんがいると思うので、皆に作戦を話す。

「多分おっさんはボス部屋の後にいるんだと思う。ここは俺が行こうと思う。レニスは俺のサポート、アリゾナは皆を守ってくれ」

 皆が頷いたので扉を開けつつ中を伺うも、ただの部屋だ。
 ボスが出るにしろ中に入ってからの事だろう。

 ボス部屋へは全員が入る事が出来た。
 そして中から1人の女が出てきたのだが、何故かセレナだ。

「あれ?なんでセレナがそうやって出てくるんだ?」

 俺は不用意に近づいてしまったが、アリゾナが慌てて俺を止めようとした。

「駄目です敵です!」

 アリゾナの声が聞こえたが、するとセレナの顔をしたそれは俺の胸に剣を突き立てたのだが、なんと何故か俺の鎧が貫通されたのだ。

 心臓が破壊された!はっと思うが時間がないので俺は後ろに転移して、そいつの首を刎ねた。
 そのままでも行けたのだが、セレナの顔をしているのだ、見ながらは・・・無理だった。

 急ぎ欠損修復とヒールで己を治し、ドロップの確認を行う。
 ドロップは変化の衣という名のマントだ。指輪とは違い種族の変化が可能。任意で選択出来るのは種族のみで、性別の変更は不可、容姿は選択出来ない。これはおっさんへのプレゼントかな。人間界にて行動するのにあの見た目は宜しくない。

 収納にしまい、開いた扉をくぐり中に入って行くのであった。 







宣伝です!
第2回ファンタジーカップに向けて新作を投入しました!
ブクマをして頂けると幸いです!宜しくおねがいします!


聖騎士殺しの異世界珍道記~奴隷を買ったらお姫様だった件~



アドレスはこちら


https://www.alphapolis.co.jp/novel/440688029/149621982
しおりを挟む
感想 64

あなたにおすすめの小説

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

女尊男卑 ~女性ばかりが強いこの世界で、持たざる男が天を穿つ~

イノセス
ファンタジー
手から炎を出すパイロキネシス。一瞬で長距離を移動するテレポート。人や物の記憶を読むサイコメトリー。 そんな超能力と呼ばれる能力を、誰しも1つだけ授かった現代。その日本の片田舎に、主人公は転生しました。 転生してすぐに、この世界の異常さに驚きます。それは、女性ばかりが強力な超能力を授かり、男性は性能も威力も弱かったからです。 男の子として生まれた主人公も、授かった超能力は最低最弱と呼ばれる物でした。 しかし、彼は諦めません。最弱の能力と呼ばれようと、何とか使いこなそうと努力します。努力して工夫して、時に負けて、彼は己の能力をひたすら磨き続けます。 全ては、この世界の異常を直すため。 彼は己の限界すら突破して、この世界の壁を貫くため、今日も盾を回し続けます。 ※小説家になろう にも投稿しています。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...