上 下
191 / 566
第6章

第190話 カービングへ到着

しおりを挟む
 今日の進行は残り半日位だ。昼過ぎにはカービング国の王都へ到着するだろう。
 異変に気がつくべきだったが、前日はクロエにべたべたし過ぎて気が付かなかった。

 数日前から誰ともすれ違っていないのだ。

 ドロシーはそわそわしている。久し振りの里帰りだ、楽しみにしているのが良く分かる。

 後20分も馬車を走らせれば到着と言う所で異変が起こった。
 魔物に、それも100匹位の群れに襲われたのだ。

 取り急ぎ現実に引き戻された俺は機嫌が悪い。

「折角アリアとドロシーと、赤ちゃ・・・いや、イチャイチャしていたのに!」

ぶつぶつと呟きながらその魔物達を相手にし、邪魔をしやがって!との怒りをぶつけ、八つ当たりをした。警備の兵は馬車の警護のみで、ドロシー達からは俺の事は放っておいてと兵士達に告げていた。

俺はあっという間に魔物の群れを倒していった。

 そして城の方に目を向けると煙が立ち込めているとしか思えなかった。

 アリアを連絡役に残し、ドロシーを抱いて俺は飛んだ。俺が飛べば2,3分で着くだろう。

 城門を見れば酷い事がわかる。スタンピードが発生しており、少し前に城門が突破されてしまったようだ。

 俺は城門の中に強引に入り、中から城門に向かい特大のファイヤーボールを撃ち込み、門の外側にアースウォールを出して、城門を塞ぐ。

 護衛の兵士1000名を待機させている場所にゲートを出して、アリア達を参戦させる。

 シカゴに護衛をさせて、ロトナに念話で兵の召集を掛けさせた。
 俺は予め皆に緊急時は強権を発動し、妻達と言えども、命令を出すと伝えている。

 オリヴィアをゲートでワーグナーから連れてきて、ドロシーの護衛を頼んだ。俺の護衛はシカゴとオリンズだ。俺は城壁に登り演説をした。

「ワーグナーのSSS冒険者のランスロットだ。何があったか分からないが、俺が偶然ここにいる事に感謝するんだ。魔物を殲滅してやる。俺に続け!」

 俺はサラマンダーを50体以上は出したと思う。第一陣を城壁の外の魔物に差し向けた。続けてそこらにアイスアローを飛ばしまくる。アリゾナとホーネットは適当にやらせている。放置しておけばそのうちに一番やばい所に行く奴等だ。以前はサラマンダーは数体出すのがやっとだったが、成長したのか、数もさる事ながら各個体の強さも以前より遥かに強い。

 城壁の近くの魔物は殆ど潰した。俺は間髪入れず城に向かう。何故か城門を突破した奴等は城に向かったようだ。ミノタウロスが多い感じだ。

 ドロシーとオリヴィアを連れて飛んで行く。

 アリアには兵の指揮と連絡役を託した。

 城に着くと既に魔物が城の内部へ突入を果たしていた。外では魔物と騎士団が戦っているが、騎士団は既に半壊している。俺は取り急ぎ魔物を殲滅し、続いて俺達も城に突入していくだろう。

 ドロシーの顔は真っ青だ。
 ミノタウロスだらけで、真っ直ぐに玉座を目指す。城の造りはワーグナーと大差はないが、一回り小さい。

 謁見の間を最終防衛ラインにしているようだが、既に乱戦だ。
 王と王妃は流石に健在で、精鋭に守られている。俺は王に切りかかった奴を転移で切り裂き、周りの魔物へアイスアローを撃ちまくった。
 俺が入ってきてから一瞬で形勢逆転で、一気に殲滅した。
 俺はゲートをワーグナーに繋ぎ、取り急ぎ招集できた3万を引き入れて城壁内の魔物の殲滅と事態の収拾に従事させる命令を出した。

 ドロシーは王の元に駆け寄る。

「父上ご無事で何よりです!」

「ど、どうしてお前がここにいるのだ?ワーグナーにいる筈ではないのか?それに何故ワーグナーの兵がここにいるのだ?それとこの方は?」
 俺の方を見てドロシーに尋ねる。

「はい、この方は私の旦那様で、ワーグナーの新たな統治者である、真の勇者ランスロット様です。兵はランスロット様のお力でワーグナーに繋げたゲートより連れてきた援軍です」

 俺はついでに総督を連れてきて、国王に話をさせる。俺はまだ戦闘中だ。

「ドロシー、ここは任せる。俺はオリヴィアと共に城壁の外をある程度確認し、ついでに殲滅をして来る。その後ここに戻るが、危なくなったら念話を送るんだぞ!」

 そう言うとゲートで城壁のすぐ内側に行き、飛んで城壁に登って状況を確認する。幸いまだ半分位のサラマンダーが残っており、見える範囲の魔物がいなくなっていた。
 残っているサラマンダーにはもう少し広範囲の殲滅を指示して送り出した。
 ゲートで呼び寄せた兵の指揮をアリアに任せて、死体の処理と魔物の処理を指示した。そして俺は再び謁見の間に赴く。

 そこで見たのは1人の女性の死体に泣きながらしがみつく王妃とドロシーの姿だった。

「メイベル!なぜ死んだのよ!再会するのが楽しみだったのに」

 そういえば先程剣で壁に串刺しにされている女性がちらっと見えたが、装備から彼女だった。顔は事切れている為見えなかったが、どうやら第二王女、つまり俺が会いたかったドロシーの双子の妹だ。

 王妃をよく見ると、なる程!と思った。ドロシーの母親と瓜二つだ。
 俺はドロシーの肩に手を置く。

「彼女が妹さんか?」

 ドロシーは俺にしがみついて泣きながら頷いている。

 俺の元に王が、ワーグナーの総督と共に歩み寄って来て、俺に臣下の礼をする。

「勇者ランスロット様。この度はカーヴィングをお救い頂きありがとうございます。貴方様がいなければ既にこの城も落とされて、私も生きてはいなかったでしょう。彼から聞きました。我がカービングも、ランスロット様の庇護下に入れて頂きたく、王権を譲渡致したいと思います」

 そう言うと、跪いて俺の手を握ってきた。

「本来ならば我が娘ドロシーだけでなくメイベルも差し出す所ではありますが、残念ながら魔物の前に力尽きてしまいました。申し訳ありません」

 俺は頷いた。

「オリヴィア、手伝ってくれ。ドロシー、彼女と再会したいか?」

 俺は倒れているメイベルを抱き寄せて、汚れを拭いている。
 ドロシーは泣きながら頷いているのでメイベルの装備を外させた。
 そして女性陣以外を謁見の間から外に出した。

「それでは彼女を生き返らせてやる。オリヴィア手伝ってくれ」

 オリヴィアは俺の頭に手を置く。

 そして、俺の前にまだ温かいメイベルを座らせて、ヒールを掛ける。傷がみるみる塞がっていく。

「それでは死者蘇生を開始する。オリヴィア、後を頼むぞ」

 そう言うとメイベルの服に手を入れてまず左胸を掴む。ドロシーより少し小さいが、張りのある俺好みのサイズの胸だ。生きている時に触れたかった。

「まだ知己を得ぬ清らかなる乙女メイベルよ。君を蘇らせる。死者蘇生」

 すると魔力が心臓に向かって流れていく。いつもの如くだが、心臓の鼓動が再開した事が感じられると俺は意識を失ったのであった。
しおりを挟む
感想 64

あなたにおすすめの小説

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

孤高のミグラトリー 〜正体不明の謎スキル《リーディング》で高レベルスキルを手に入れた狩人の少年は、意思を持つ変形武器と共に世界を巡る〜

びゃくし
ファンタジー
 そこは神が実在するとされる世界。人類が危機に陥るたび神からの助けがあった。  神から人類に授けられた石版には魔物と戦う術が記され、瘴気獣と言う名の大敵が現れた時、天成器《意思持つ変形武器》が共に戦う力となった。  狩人の息子クライは禁忌の森の人類未踏域に迷い込む。灰色に染まった天成器を見つけ、その手を触れた瞬間……。  この物語は狩人クライが世界を旅して未知なるなにかに出会う物語。  使い手によって異なる複数の形態を有する『天成器』  必殺の威力をもつ切り札『闘技』  魔法に特定の軌道、特殊な特性を加え改良する『魔法因子』  そして、ステータスに表示される謎のスキル『リーディング』。  果たしてクライは変わりゆく世界にどう順応するのか。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

ざまぁから始まるモブの成り上がり!〜現実とゲームは違うのだよ!〜

KeyBow
ファンタジー
カクヨムで異世界もの週間ランク70位! VRMMORゲームの大会のネタ副賞の異世界転生は本物だった!しかもモブスタート!? 副賞は異世界転移権。ネタ特典だと思ったが、何故かリアル異世界に転移した。これは無双の予感?いえ一般人のモブとしてスタートでした!! ある女神の妨害工作により本来出会える仲間は冒頭で死亡・・・ ゲームとリアルの違いに戸惑いつつも、メインヒロインとの出会いがあるのか?あるよね?と主人公は思うのだが・・・ しかし主人公はそんな妨害をゲーム知識で切り抜け、無双していく!

処理中です...