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第5章

第174話 アリアへ刻印を

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 アリアは俺の言葉に嬉し涙を流し、必死に涙を拭いていた。俺はそっと涙を拭き、鼻もちーんしてあげた。そのハンカチは即座にクリーンを掛けるから、何を使って鼻ちーんをしても気にならない。

 確かにダンジョンで命を預けた仲だが、今までアリアには第三王女の肩書が常に付いてきていた。言い寄る者が全て第三王女と言う肩書があるからだった。

「偶々ランスロット様に出会えて嬉しかったんです。第三王女と知らずに、一人の女として接してくれた殿方は初めてだったんです。私も真の勇者ランスロット様ではなく、あの時助けてくれたただのランスロット様をお慕い申し上げております!」

「暫く会えなくなり寂しくなるよ。お互いの立場を知らず、一人の男と女の、身分の無い出逢い方で良かった。お互い王女様だの勇者様だの位で呼び合わなくて済むからね。それともう様はよしてね。ランスかランスロットと。それか志郎で」

「ふふふ。そうですよね。時に志郎というのは?」

「転移前の元の世界の本名だよ」

 急にアリアの態度が一変し、真剣な顔になった

「ファミリーネームをこちらの世界に来てから名乗りましたか?」

「一緒に召喚された婚約中の、勇者と対を成す真の聖女に求婚をした時に一度だけ」

「では本名は封印してください。その方にも可能なら口外しない様に申し付けて下さい」

「何かあるのかい?向こうからの召喚者はユリアもそうだよ。しかもユリアは本名だよ。もちろんファミリーネームも知っている」

「出来ればすぐにでも偽名に改名してください。他に転移者に知り合いがいたら、本名をお互いに名乗らないとしてください。霊食いに魂を吸い取られ最悪の場合、死に至ります。転移者に有効であり、本名が必要ですし、悪意ある者に知られたらアウトです」

「分かった。かなり重要な情報だな。何とか念話が可能なので対処するよ。確か俺だけはバルバロッサに本名を知られていないんだ。ステータスカードには本名ではなく、ランスロットですらない。ランスロツトと有ったから、その名前しか知らない筈だけど、それだと他の者は全て知られているな」

「良かったです。多分バルバロッサはあ奴らを使役しています。本名を知られているメンバーはバルバロッサとの戦からは外してください。あのハーレム王の寿命はかの者に半分以上吸われて、130歳しか生きられなかったと聞きます」

「了解だ。アリアは頼りになるな。やはりアリアも真名は別にあるのか?」

「はい、ありますわ。幼名がそうですわ」

 俺達の食事は終わったので、話もそこそこに食堂を出た。先日のメイドさん達に色々教えて貰った中の1つに小高い見晴らしの良い公園が有るので、そこにゲートで移動した。城からそこそこ離れていて、眼下に湖が見える。
 街明かりが幻想的な所で、周りには誰もいなかった。

 暫く2人で景色を眺め、どちらからともなく唇を重ねるのだった。

 王妃に渡された婚姻の贈り物を渡す事になった。今回のスタンピードのお礼として3人に渡すネックレスを買って置いてくれたのだ。恐らく買いに行く時間が取れないと見ていたのだろう。

 俺は片膝を付きプロポーズを始めた。

「勇者たるランスロットが貴女に求める。汝、聖なる乙女にして王家に名を連なる淑女アリアよ!我が妻となりて生涯の伴侶となり、添い遂げん事を求む。ここに私ランスロットは清らかなる乙女アリアに結婚を申し込みます」

 どこから出るのか、俺はいつも不思議に思うのだが、こういった言葉がスラスラ出てくる。

 プレゼントを差し出して頭を垂れる。そうするとアリアはプレゼントを受け取り、中からネックレスを出した。俺の手を取り、ネックレスを握らせると背を向け、自ら髪をかきあげて、その首を俺に向けたのだ。俺はそっとそのなんとも色っぽい首にネックレスを着けた。アリアはそしてただただ頷き涙を流した。

 その後少しいちゃいちゃしてから城に向かい、アリアを一旦送り届けてから屋敷に戻り、風呂に入った。刻印の儀をどこで行いたいかと聞くと、アリアの部屋を希望した。その為、屋敷にいるメンバーに今日は城に泊まる旨を伝えて、城の風呂場の出口にてアリアが出るのを待っていた。

 しかし、俺は浴室に引っ張られ、メイドさん達に裸にされ、脱衣場から浴場に押し込まれた。

 そこにはマットが引いてあり、アリアが横たわっていた。そう、どこでそうなったか分からないが、刻印の儀を始める前の所作として、清めの儀をする必要があるらしい。

 清めの儀を行った後、アリアをお姫様抱っこで部屋まで連れて行ったが、途中で王妃様に出くわした。何をこれからするのか分かったようで、泣いて感謝をされてしまった。

 部屋で改めて刻印の儀を開始する事を伝えて、了承をされた。
 アリアは美しかった。外観もそうだが、何より内面が美しい。体も芸術品と言う感じでそのまま部屋に飾りたい位の美しさだった。

 お互いに愛していると、この危機を愛の力で打ち勝とうと結構恥ずかしい事を言いながらやがて一つになった。

 その後手を結んで2人の濃密な時間が過ぎていき、やがて眠りに落ちていったのだった。





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