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第5章

第150話 王との会談

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 アレイ殿は何事もなかったかのように、その場を出発するように御者に伝えていた。そして出発すると5分位進んだ所がどうやら目的地で、目的地に着きその先を見ると項垂れるしかなかったのだ。

   しかしあの女性は一体何者だったのだろうか?粗末な服を着てはいたが、貧乏人には見えなかった。心の清い素敵な女性だったな。旦那さんが羨ましいなと俺は嫉妬したのだ。尤も他人の妻を寝取るつもりはない。過程を壊すつもりはないが、手帳にあるのは、幻影はこれから起こる事だと。外れた事がないらしい。だだ、いつというのが、その時にならないと分からないのだ。

 馬車から降りてから通されたのは食堂だったが、ただの食堂ではなく、王城のそれも王族用の食堂だ。

 嫌な予感とは当たるもので、待ち構えていたのはどう見ても国王だ。

「忙しい所、急に呼んで悪いな。彼がそうか?」

「ははは暇じゃてからに、気にしないでくれよ。で、こいつがクロエの心を射止めた勇者だよ」

「ほう。あのお嬢を落としたのが彼かフムフム」

 俺はどうすれば良いのかの判断がつかなかったので、取り合えず挨拶をしてみた。

「お初にお目にかかります。S級冒険者をしております異世界からの転移者であり、真の勇者らしいランスロットと申します。恐らくバルバロッサ王家との戦闘で記憶を失い、こちらの国に強制転送しております。以後お見知り置きを」

 王は満足していたがはっとなったようだ。

「おお、これはご丁寧に。ああすまんな、ワシが誰だか分からぬわな。どうせこいつはどこに行くのか言わなかったろう。一応この国の王をしておりますレハルトと申します。勇者様」

 立ち上がると目上の者に対する礼をしてきたので、さすがに驚いた。

「あのう、一国の王が非公式の場と言え、一介の冒険者に対してそれはまずいと思うのですが?」

「なあアレイよ、勇者様は記憶をなくされておると言うから、自分の立場を、それもワーグナー王家からの立ち位置をご存じないのではないか?」

「これは不覚じゃったわい。その可能性を失念しておった。兄者よ悪い悪い」

 やはり兄弟か。しかし立場ってなんだ?
 そう思っているとアレイ殿が色々説明してくれた。

 勇者は厚遇される対象。
 伝説のハーレム王は元々この国の守護神となった。
 真の勇者は王よりも立場が上であり、客人として最上級のもてなしをする対象。
 かつてこの国が魔王により正に攻め滅ぼされる直前にまで追い込まれたが、ハーレム王が魔王軍を撃退して英雄となり、伝説ではあるが史実としても伝承されている。

 勇者のハーレムに入るのは大変名誉な事で、例え王族の娘であっても、側女でも愛人や妾でも良いので、その寵愛を頂ければ国家の安泰に繋がる等だった。

 つまりこの国にいると俺は安全に過ごす事が出来そうだ。王の庇護下に居いれば貴族からのちょっかいもないだろうな程度に思い、軽く見ていた。

 王の目的はやはり真の勇者による刻印にあるようで、王の元にも未婚の娘が居るらしく、嫁がせるかどうか決め兼ねていて、俺の人となりを見極めたいようだ。そういえば噂ではこの国の王女は絶世の美女らしい。容姿端麗で性格の良さで国の人気者との話もある。

 話題を変えたかったので、ダンジョンについて依頼を出したのが国王自身だと聞いていると話したりした。

 国王は俺の事をアレイ殿から聞かされていたようで、俺の事をかなり知っていた。隷属契約の事もアレイ殿に話をしていないのにも関わらず知っていたので驚いた。

「何でもダンジョンに行ってくれるそうで有りがたいです。何でもランスロット殿のギフトに奴隷契約があり、契約をしていると、とんでもないような成長補正が掛かるとか。是非我が娘にも刻印を授け、可能なら娶って頂き、主従契約もお願いしたい位じゃ」

 時折メイドの一人をちらちらと見ているのが気になる。

「ははは。クロエさんとオリヴィアさんも私の所に来る事となっているのは既にご存知のようですが、20人以上を娶っているのですよ。王女様もそのような相手は御嫌でしょう?私は好きな相手以外、例え絶世の美女で見た目が私の好みでも抱きませんよ。特に政略結婚は有り得ません。まあクロエさんはアレイ殿に社交辞令で言われてはいましたが、たまたま引き合わされる前に知己を得て、お互いに好きになってしまったんですよ。結果として希望を受け入れた形になりましたが、偶然ですからね」

「ほほほ。我が娘はな、親バカと思うかもしれんがのう、母親に似て絶世の美女で、穏やかな性格なのじゃ。時折孤児院の手伝いや奉仕作業を行っていてな、ワシに似ずあれは出来た娘で人格者と呼ばれておる。娶れとは言わんが、一度会ってやってくれまいか。珍しくのう、娘が勇者様に会わせて欲しいと先程ねだって来たのじゃ。それになまだたかだか20人程度じゃぞ?かの御仁は3桁じゃぞう!うはははは」

「そういう事でしたら大丈夫ですが、流石に3桁は無理かと思いますが」

 そうこう話しをしていると時間が過ぎていき、本日はお開きとなった。俺が出来ればこの国に本拠地を構えて欲しいと言われたが、まず生き別れになっている妻達と再会すべくボレロを目指す事で理解してもらい、隠しても仕方ないのでゲートのスキルの事を伝えるとメイドを呼び、俺のゲートポイントを城内に幾つか持たせるので城を案内せよと伝えている。寝室もと言うので流石に断ったが。溜息の数が増える一方だった。
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