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第5章

第131話 タオと出会う

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 高圧的に声を掛けて来た。

「貴様何をやっている!早く助けないか!」

 偉そうに言うのだ。

「いきなり偉そうにあんたはなんなんだ?」

「冒険者風情が、貴族で有る私にあんたなどと無礼を働くか!」

 うわー面倒くさい奴だな。

 こいつ盗賊に捕まっていた奴隷と言う事で良いよな。

 女は何者だろうか?

「君達を助ける。君達は何者だ?」

 男は無視して女性に聞く。

「はい、ここにおりますタオ様のメイドで御座います」

 20台半ばと30台前半、30台半ばの3人だ。
 格好や状態から既に盗賊に犯されたりと酷い扱いを受けたようだ。

「この小男助けるのは嫌だなあ」

 そう思いつつも、嫌だが交渉をする。

「俺は旅の冒険者でS級だ。あんたらを助けて俺にメリットは何かあるのか?」

 敢えて横柄に、でかい態度で聞く。

「貴様何を偉そうに。早くここから出さないか!町に着いたら謝礼をくれてやるから早く出せ!」

「お前、ふざけているのか?女は助けてやるが、お前を助ける義理は無い。人に物を頼む時の態度ではないと思うぞ。それに命令ではなく、助けてくれとお願いするのが道理と言う物だろう」

 女が捕まっている方の牢屋を壊して出してやる。
 裸で恥ずかしがっているがどうにもならない。

 手招きした。

「こっちに来て、着れそうな服を探すんだ」

 お宝を回収した後の荷物の中から適当な服を渡してやった。

 セチアを呼んでメイド達の面倒をお願いした。

 貴族の男は王都に居を構えるこの国の男爵だそうだ。
 どうすべきかセチアに聞くと、王都に連れ帰れば結構な謝礼が出るという。
 取りあえず服を確保して男爵の所に行く。

「服を持ってきたのでまずは着て欲しい」

 服を渡すとふんと息巻いて俺の手から奪い、服を着ながらぶつぶつと文句を言っている。

 盗賊の生き残りで虫の息の奴が居たのでセチアに殺せと命じる。

「人を殺したことは有るか?」

 と聞くと首を振る。短剣を渡した。

「君がトドメを刺すんだ。こいつはもう長くない。いずれ誰かを殺す必要が有る。そんな時に殺した経験がないからと躊躇されると仲間全員の命に関わる。俺は君に殺しを強要している。まあろくな死に方なんてしないのだろうな」

 そう言うとやりますと言い、トドメを刺した。

 貴族もぎょっとしている。

 見えないところにセチアを連れていき、土下座をして謝った。しかしすぐに抱き起こされて泣きながら許してくれた。

「王都まで連れていってやるとして、お前を連れて行った報酬はどうするんだ?」

「ふん、がめつい奴め。盗賊が私から奪った物をくれてやるから好きな物を選ぶがよい」

「はあ、何を言っているんだ?盗賊のお宝が有るとしても盗賊を殺した俺に所有権が有るんだぞ。それにまあ見て来いよ。既に金目の物は無かったぞ」

 言うと慌てて見に行っていた。

「お前が何処かに隠したのだろう。馬車の中か?」

「無いよ。それにさっきも言ったが、こいつ等が何か持っていたとしても俺のだ。残念ながらこいつ等が持っている小銭の入った財布くらいしか無いぞ。まあ馬車も好きに見ると良いさ、で、今のところ一文無しのあんたを王都まで連れて行く俺のメリットは?」

「何を言う!庶民が貴族で有る私に尽くすのは当たり前の話だ。有難く連れて行くがよい」

「はあ、何を言っているんだ?あんた頭大丈夫か?さっきから俺の話しを聞いているか?分からないならば、はっきり言う。王都まで連れていってやるには対価が必要だ。どれだけ出す?嫌ならここに置いていく」

「貴様何を抜かすか!」

「当たり前の事を言っているのだが、分からないのか?」


「貴様!庶民が何を抜かすか!」

「話にならないな。行こう。もうここにいる意味は無い。俺も鬼ではないから、馬車を1台置いて行ってやる。ここから近くにある町まで3時間程度の筈だ。まあ頑張って行ってくれ。メイドさん達はどうするんだ?」

「私達はタオ様のお付きのメイドで御座います。タオ様と一緒に王都へ向かいます」


「まあ頑張って向かうんだな。俺達は先を急ぐから、ここまでだな。じゃあな」

 後ろ手に手を振り馬車に向かって行くと慌てた男爵が謝罪を始めた。

「悪かった。金は屋敷に着いてから払うから、王都まで連れて行ってくれ。大金貨10枚出そう」

 そう言うので俺は了解した。

 先に馬車に皆を向かわせて俺は死体とカードを回収した。

 そしてこれ見よがしに特大のファイヤーボールをアジトに撃ち込み、燃やしていった。そうするとメイドと男爵が唖然として俺を見ており、怖がっていた。

 馬車の1台はこの貴族の物だったので、4人はそれに乗せ、もう1台は質素な乗用馬車で、俺とセチアで乗る。貴族の馬車は返してやったが、メイド達が御者をするそうだ。

 俺達の馬車はアジトに案内をさせた盗賊に御者をさせ、もう1台は護衛をさせた2人に乗ってこさせる。

 3時間程で町に着き、先ずは服屋に行って服を買ってやった。次に1番高い宿を聞き、1番良い部屋を貴族にと借りてやった。

「貴様を誤解していたようだな。助かったよ」

「さっきはこちらも礼儀が無かった。戦闘直後で気が立っていたんだ」

 そう言うと満足して部屋に入っていった。メイドも同じ部屋だが、多分愛人なのだろう。

 金貨20枚が飛んでいった。まあ仕方が無いか。
 セチアは高級宿に目をきらきらさせてはしゃいでいた。
 大人の落ち着いた女性と思っていたので、ギャップにやられてしまった。

 部屋に入ると抱きしめて殺しをさせたことを謝った。


「セチアにはとんでもない事をさせてしまった。謝ってゆりごああ」

 彼女の唇が俺の口を塞いだ。

 謝罪は要らないと。

 俺達は明日に備えて早々に休む事にした。
 寝る前に今日は如月さんに念話を送る。

「如月さん、志郎です。実は記憶を失くしています。手帳に書いていた日記で何とかしている状況で、明日にはワーグナー王国の王都に入ります。それと何故か念話後の1分位の貴女達が夢で見える。魔力切れる」

 気絶する直前に念話を切った。
 魔力がほぼ無くなり、セチアに抱き付かれながら寝ていった。
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