上 下
76 / 566
第3章

第75話 指名依頼

しおりを挟む
 day16

 朝早く目覚め、2人を起こさないように庭に出て木刀で素振りをする。
 鈍っているなぁと危機感を抱いたので、トレーニングを始める事にした。
 暫くするとフレデリカが出てきた。

「おはよう」と「おはようございます」

 ハモった。
 彼女は動きやすい服を着ている。上はシャツ一枚だ。胸の突起が気になるが、敢えてスルーする。彼女自身は余り気にしていないようだ。後で注意しよう。見て良いのは俺だけだと。俺に見えていると言ってもスルーされるが、他の男に見せたくないと言えば言う事を聞くだろう。

「稽古ですか?私も奴隷になる前は日課だったんですよ。良かったら手合わせをお願いします」

 そう言うので、ウォーミングアップの後軽く手合わせを始めた。

 ステータス頼みにせずに打ち合ったが、俺は手を打たれ、脚を打たれていく。ちゃんと修行した者の動きはおれなんかとは明らかに違うな。打たれる度に謝ってくる。

「申し訳ありません」

「俺が強くなる為だ。手加減するな。手加減こそ主への反抗と思ってくれ」

 30分位やっていると、エリシスが呼びに来た。朝食がもう少しで出来るので、その前に風呂をどうぞと。既にお風呂の準備が出来ていると言うので、2人して風呂に行く事にした。

 フレデリカと一緒に入る。やはり引き締まっていて凛としている。背中を洗い合う。
 訓練の後は流石に俺でも色メガネでは見ない。訓練場や冒険中は湯あみ場や風呂場は男女混合だ。もしもエロい目で見る奴が居ると周りから袋叩きにされるという。

 男は特に分かり易いので雑念を捨てざるを得なくなる。
 冒険中の着替え等も目の前に異性がいても下着まで恥ずかしがらずに着替えるし、洗濯の当番も下着を見ても何の反応をしないようになっていく。それでもプライベートでは事情が違う。

「なあフレデリカ、悪いが出来たら毎朝稽古をつけてくれないか?」

 そう言うとぱっと明るくなった。

「私などで良ければいつでもお相手致します。その、ベッドの上でも」

 赤くなってくねくねしている。

「ははは。フレデリカでも冗談を言うんだな」

 お互いに背中を拭きあい、着替えてから食堂に行く。フレデリカの目がジと目だったのは気の所為だろうか。しかしあの堅物のフレデリカがねぇ。実は今1番気になるのがフレデリカだ。愛し合いたい。俺は鍛えているアスリートの体が好きだ。胸よりも脚を先に見るんだ。すると大体の鍛えられ方が分かる。ってオレの性癖なんか誰も知りたくないわな。あいつも元アスリートだったんだよな。あいつって誰だ?…

 朝食の時に今日の予定を告げる。
 ブラックスワンは初心者ダンジョンに。失念しており、行っていなかったのには驚いたものだ。丁度昨夜レベルリセットを行ったところなので丁度良い。スキルには影響がないので、ランクDの彼女達ならば問題ないだろう。ボス部屋に辿り着く前に、リセット前のステータスは超えている筈だ。

 俺は指名依頼に行く。
 つまり、残りのメンバー全員で騎士団に行く事になった。

 新人の訓練に上級冒険者の指導が欲しいとの事で、稽古の相手をする依頼だ。
 ナンシーがギルドマスターに頼まれたのだ。今王都にいる冒険者の中での最大戦力が俺達で、更に今回は女性が多いので、女性が多い俺達に是非にと頼まれたと。騎士のではなく、魔物と戦っている冒険者の指導も必要として依頼が入ったとの事だ。

「城からの依頼で困り果てている。どうか頼む」

 そう頼まれて困ったからと相談してきた。
 ナンシーが困っているのとクレアが行くべきと言うのだ、嫌な予感しかしないが受諾した。1日だけだと念を押しておいた。行くべき理由がクレアにも分からないが、予知で感じたのだという。

 今日は新たに買った鎧を試す。ヘルムもセットなのでパッと見だと誰かは分からないとシェリーに言われた。
 トリシアに至っては遠慮がない。

「ランスが格好良く見える。馬子にも衣装っつう奴かな。がはははは」

 トリシアはそう言うが、崇拝者達はうっとり見つめてくる。
 トリシアはその後で何人かに何処かに連れ込まれていたようだが。

「ぎゃーぼえーヴァぐう」

 と女の子が出しちゃ駄目な声を出していた。何をやってんだか。といつの間にか笑っていた。
 シェリー達が驚いていた。

「ああ!ランスロット様が笑うのを初めて見たわ。感動だね」

 そう聞こえてきた。
 そう言えばこの世界に来てから、自然と笑ったのは初めてだな。 

 こんなゲスでろくでなしの壊れ者だが、慕ってくれる娘、いや、レディーがいるんだよな。掛け値なしに嬉しいな。
 ふと気が付くとリギアがハンカチで俺の目を拭ってくれていた。

「いや、あの、これはだな、その、目にゴミが入ったんだわ。ちょい顔を洗ってくるらー」

 とその場から逃げた。皆の生暖かい視線が心地良かった。
 何の事もない平和な日常に俺は餓えていた。実は女を抱くよりも、心の安息を必要としていたのだった。でも女も抱きたい。ぼそ。

 ふとシェリーの念話が聞こえた。フレデリカのも同時にだった。

「大丈夫ですか?」

 おかしい。念話の指輪は1対しかない。しかもナンシーと朝念話をしている。

「いつの間に念話の指輪を持っていたの?この指輪は対でしか使えないと思っていたのだけど?」

 2人に聞くと驚いていた。

「ひょっとして念話の事をご存知ないのですか?刻印者の念話ですよ?」

 そう聞かれ、頷いた。

「君達が取得したのは知らなかったよ」

「えーと、そうじゃなくてですね、刻印を刻んで頂いたので使えるんですよ。後、ソウルメイト同士にも出来るんですよ。これでいつでもランスとお話出来るんだよ。えへへ」

 シェリーがどや顔で教えてくれた。シェリーの話し方は俺との時と、第一奴隷としての時では変わる。ただ、俺との会話は段々と本来の性格が出てきているようで良い事だ。
 しかし改めて分かった事は、俺は刻印の事を殆ど分かっていなかった事だ。

 そうか、なる程!それでフレデリカ達は連携が凄かったのかと漸く理解した。

 そしてリギア達が出発した後に、ナンシーから指輪を渡された。

「もう必要無いので、使って下さい」

 帰ってきたらリギア達に後で持たせようかな。
 そんなこんなで皆出発したのであった。
しおりを挟む
感想 64

あなたにおすすめの小説

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...