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第2章

第29話 妖刀アンタレスとの出会い

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 一旦宿屋に戻り、すっかり忘れていたのだが、武器強化を試してみる事にした。
 先ずは試しに強化をするので、グッディから奪ったロングソードを使う事にした。
 俺にはしっくりこなかったので、失敗しても痛くも痒くもないので実験台として使う事に決めたのだ。

 ゴブリンの魔石4個とロングソードにて試す。そして武器強化と発し、スキルを発動した。

 剣と魔石を手に取り、この剣を強化したいと念じてみたが、聞こえてきたアナウンスは予測通りだった。

「武器強化を実行しますか? n/y」

 と出るのでyを選択した。

「武器強化に成功しました。+1されました」

 成功と出たが、魔石は一個しか減っていなかった。複数個数の魔石を持っていても使われる魔石は1回につき1個のようだ。

 早速鑑定してみるとロングソード+1と出た。更に解析すると+1は武器の堅さが10%上がり、攻撃力が10%上がる。
 続いて残り3個を実施する。
 2個目成功
 3個目失敗
 4個目成功
 となった。
 これによりロングソード+3が出来上がった。解析すると硬さと攻撃力が30%アップと有る。
 満足の行く内容だ。売ったらどれ位になるのだろうか?
 それとやはり失敗しても魔石が無駄になるだけだという事の確認が出来た。

 早速ナンシーお勧めの武器屋へシェリーを伴って向かったが、何の事はない、先日の靴屋の隣だった。
 店は20畳程だろうか。
 入り口付近にカウンターがあり、カウンターの前に樽が置かれていた。そこには無造作に武器が突っ込んであった。中古の安い武器で、冒険者に成り立て等の初心者の為の武器だった。
 店主は俺と同じ位の身長で、筋骨隆々の20代後半位の厳ついおっさんの雰囲気のある男前であったが、扉を潜ると声を掛けられた

「いらっしゃい」

 俺は先ずは武器を売りたいと告げ、徐にロングソード+3を渡した。店の主が鑑定をしている間に武器を見させて貰う旨を伝え、剣等を見る。

 先ずはシェリーの武器を見繕う。
 一本の細身の突き刺し向けのブロードソード位の長さのエストックのような、便宜上エストックと呼ぶ事にした剣が気に入ったようだ。値段は30万G。
 店主に聞くと、硬く軽い魔鋼鉄を使っているので丈夫で、自己再生が働くので基本的に手入れ不要だそうだ。

 俺は樽の中の一本の剣にふと違和感を覚えた。黒く錆びているようだったが、手に取ってみるとそれは刀剣のみで刃渡り120cm程の野太刀、正に日本刀だった。残念ながら柄の部分は何も付いていなかったので、そのままでは武器として使えない。
 手に取り解析すると魔刀とあり、更に強く解析を行うと解析が成功した旨のアナウンスが有り解析結果は妖刀アンタレスと有り、込めた魔力により強さが変わると有のと、状態は劣化休眠中とあった。

 これは買いだと思い、後で買おうと決め一旦元に戻した。他の武器も鑑定したが、特にこれと言った武器は無く、剣の有る所をまた見廻る事にした。
   ブロードソードを手に取ってみた。魔鉱鉄の物が今使っているのに比べ、軽かったので買う事にした。
   40万G。

   同じく魔鉱鉄のダガーをサブウエポンとして俺とシェリーの分を各々買う事にした。1本10万G

 魔鉱鉄の武器は最低限の手入れでよく、使用後に血やら汚れを拭き取り、魔力を少し流すと自己修復していくので、自己修復出来ない程の歪みを取る為等で時折預けてメンテナンスをする程度で大丈夫だそうだ。

 先程の野太刀は5000Gだった。
 俺が持ち込んだロングソードは魔剣扱いだった。本来のロングソード自体の買い取り額は1万G程だが、強化値が+1で5万G、+2で15万G、+3で50万Gとの事。

 店で売っている魔鉱鉄のロングソードより値段は少し高く、攻撃力も高いそうだ。購入分で手持ちの資金の殆どを投入の為、強化済みのロングソードを売り払い、残りの代金を払ったがシェリーは遠慮した。

「いけません。奴隷にこんな高価な武器なんて勿体ないです」

 そう言うので、デコピンを食らわせて黙らせた。涙目のシェリーを見ていたおっちゃもシェリーの意見に当たり前だと言った感じで同調していた。

「なんだその嬢ちゃん奴隷か?買って貰って何だが、普通はそんな高価な武器を奴隷には持たさないぞ」

「訳あって今は奴隷になっているけど、いつでも解放すると伝えていて、奴隷であって奴隷じゃ無いんですよ。彼女自体は奴隷と言い張っていて困ってるんですけどね」

 苦笑いするとジト眼をされた。

「俺から言わせると、一緒に戦う奴隷にこそ良い武器を与え、主人を守る一助にする必要が有るんだよ。それにいつも言っているだろう?シェリーの事を奴隷扱いしないって。シェリーは俺の大切な女性なんだよ」

 シェリーは納得行かないようで渋々といった感じで頷いた。
   その後、野太刀に鞘と柄を作る必要から鍛冶職人を紹介して貰ったが、ふと見るとおっちゃんが首を傾げていた。

「あれ?こんな剣、置いていたかなぁ?」

 おっちゃんは不思議がっていたが、帰り掛けにシェリーに声を掛けた。

「嬢ちゃん、良い主人に買われたな。大事にして貰えよ。それと兄ちゃん、こんな素敵な子をいくら奴隷だからといって無下に扱うなよ!」

 後ろ手に了解と言わんばかりに手を振って店を離れた。

 武器店を後にし、冒険者向けの食料品店で携行食を買う。取り敢えず2日分を確保した。

 そして一旦宿屋に武器を置く為に戻った。念の為2人共ダガーのみを装備してから再度出掛けた。ダガーの鞘と言うか、腰のベルトに付けるダガーを差せる物をおまけでくれたので、早速護身用として身に着けた。
  
   それと布に包んだ野太刀。柄がないのでそのままだと武器として役に立たない。だがしかし、この剣いや、刀が俺にとって長きに渡り愛刀となる事を、今はまだ知らないのであった。
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