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第1章

第14話 楽しめないデートもどき

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 シェリーには服を買ってから門番の所に向かう旨を伝えた。ちなみに食事は2人分で銀貨1枚と銅貨2枚だった。宿泊者サービスで半額らしい。

 宿泊しているのは憩いの森亭という宿屋兼食堂というよくある形態だそうだ。
 但し字が読めないけど、看板にそう書いてあるとシェリーに言われた。
 宿の位置は中央広場からすぐの大通りに面した宿が多く集まる一角にあり、3階建ての中級宿だった。但し、中級宿の中でも上の方らしい。

 町の様子は大通りは2階建てで、レンガか木造の建築が多く、時折石造りも見られた。1Fが店で2Fが住居か倉庫になっている感じだった。
 中央広場付近の大通りは商業地区のようだ。
 人口がどれ位かは分からないが、中々活気に溢れており、馬車の往来も多かった。

 あちこちの看板を見てもやはり模様にしか見えないが、れっきとした文字である。

 不思議な事に、王城で貰った冒険者の手引きは読む事が出来た。逆にシェリーに見せたが、何が書いてあるのか分からないと言われた。どうやら以前の召喚者が作成した物の写しのようだ。

という事は以前にも日本人を召喚しているとしか思えんな。魔王が約1000年周期で現れそれに合わせた勇者召喚にしては準備が良すぎる。1000年前の書物が残っているのにも違和感を感じるし、記載内容に違和感が無く、この世界の人が翻訳書を片手に翻訳したような内容では無い。どう考えても日本語を書ける者が書いたとしか思えなかった。まあその当たりはおいおい調べようと少し考え事をしていた。その為、俺はシェリーに引っ張られて行っている感じだった。

 人種は人間が多く、奴隷がそこそこ居るのが気になった。よく見ると人間の奴隷以外に、獣人、それとエルフと思われる耳の尖った者の比率が多く感じた。人間以外の一般人はほぼ見なかったというか、見た覚えがない。ただ、ローブのフードを深く被っているものもそれなりにいるので、気が付いていないだけかもだった。

 すれ違う奴隷の服が気になった。基本的に粗末な服で、先程食堂で見たような貫頭衣が多かった。
 奴隷の服としてはシェリーのワンピースでもまともな方だった。
 もう一つ気になったのは履物。シェリーが履いているのは粗末な草履チックな物で、歩くのに適してるとは思えない代物だ。見掛けた奴隷の足を見ると裸足か粗末な履物が多く、そのような格好がまかり通っている事に怒りを覚えた。この国はろくなもんじゃ無いなと憤りを憶えたものだ。

 目的の服屋には15分程で辿り着いた。5分位と言っていたが、目印を見落としてしまい、途中で引き返した為に時間が掛かったのだ。

 店は40畳位のそこそこ大きな店。
 応対してきた店員は20代前半の可愛いらしいスレンダーな女性。胸は・・・・しかしテキパキと動き、颯爽とした好感の持てそうな感じがした。ただ、シェリーを見ると目がギラギラしていた感じで、ちょっと残念娘に思えてならない。
 今日は俺の服を一着、シェリーのを2着と下着を2組ずつ見繕って貰う事にした。俺の方はすぐに決まったが、やはりシェリーの服を選ぶ時はシェリーに遠慮された。

「いけませんご主人様。奴隷の私如きに滅相も有りません」

 などと言うのだ。恐らく正論を言って諭すのは今は無理そうなので、店員の居る前というのもあるが、取り敢えずシェリーには俺の為と告げた。

「美少女が綺麗な服を着飾ると俺の目の保養になるんだよな。俺のためだからさ-頼むよ!」

 等と誤魔化したが了承したようだ。

「美少女だなんて!」

 シェリーは照れながらではあるが、渋々納得してくれた。俺が買うようにと更に告げたのでほっとしたのか、目が輝き出したように思うのは気の所為では無かったようだ。

 一着は花柄のワンピース、もう一枚は柔らかい生地の膝丈のスカートとシャツを選んで貰った。追加で動きやすい冒険者風のシャツ、スパッツのようなアンダー、その上に履けるスカートをチョイスした。その場で一着を試着し、そのままの格好で店を出る事にした。下着選びはシェリーの分は店員にお任せし、俺の分はその間に選んでいった。全部で金貨5枚と銀貨4枚になった。作りは良さそうな服なので、貨幣価値の参考にしようと思う。

 シェリーの姿は見違えた!やっぱり美少女には綺麗な服が似合うよね!眼福眼福!
 二軒隣に靴屋が有るとの事で、次はそちらに向かった。先程会計の時に奴隷の服を捨てておいてと言い掛けたが、シェリーが嫌がった。

「ダ、ダメです!持って帰ります!」

 強く主張され、思わず気圧されたのもあり了解した。元々の服は買った服と一緒に袋に入れて貰い店を後にした。店を出るとシェリーは謝罪してきた。

「奴隷が生意気を言いまして申し訳有りません」

 ぼそっと呟いたが、俺は片手を上げて了承を伝えた。
 後で気になったので聞いて見る事にした。

「嫌な思いの有る服じゃないのか?」

「ご主人様と初めてお会いした時の服なので、捨てられません」

 上目遣いでうるうるされて言われては、了解と言うしか無かった。
 うーんよく分からんでしょう?この生き物といった感じで、不思議ちゃんだった。

 靴屋に入ったが、店の主はドワーフの職人チックなオヤジだった。
 外を歩くのに適した靴を2人分見繕って貰う事にした。
 旅に適したのが欲しいと伝え、お互い何足か履いて確認し、サイズの近い靴を少し調整して貰ったが、履き心地がとても良かった。
 オヤジは俺の靴が気になったようで、珍しい靴だなと一言言った以外何も言わなかった。代金は二足で金貨3枚だった。

 そのまま新しい靴を履いて門番の所に向かう。シェリーは店を出ると頭を下げてきた。

「申し訳有りません」

「必要な物だから気にしないで」

 そう言うと今度はお礼を言われた。

「ありがとうございました」

 余りにシェリーが恐縮するので、本来は美少女との買い物デートなので気分はるんるんの筈なのだが、俺は楽しめなかった。

 取り敢えず身なりが整ったので、一旦宿に戻り荷物を置いて門番の所に顔を出した。
 門番の所では10名位の兵士が町へ出入りする者達の手続きをしていた。

 シェリーによると昨日対応してくれた門番は40代前半で、ここの小隊長をしていた。
 取り敢えず別室に入るように言われ、先ずはステータスカードを見せてくれと言うのでステータスカードを出した。
 ステータスカードは王城で説明して貰ったが、平字で可能なのは簡単なステータスで、名前、年齢、レベル、職業が表示されている。
 魔法で作られたカードで「ステータスカード取り出し」、「収納」と念じれば顕現したり体内に戻す事が出来る。
 死亡すると殆どの場合は顔から出てくる。
 ステータスカードを確認し、犯罪者では無い事が分かり、次は念の為オーブに手を翳すように言われたが、特に何も反応が無い事が確認出来て門番のおっちゃんはほっとしていた。
 取り敢えず期限が7日間の仮入門許可証を俺の分を発行して貰った。奴隷の分は要らないそうだ。主人の持ち物だからだ。物扱いに絶句したが、異を唱えても仕方がない。
 許可証は7日以上滞在するならば冒険者ギルド等で冒険者として登録すればギルドカードを発行して貰える。その場合、ギルドカードを一度ここに持って来る必要が有るとの事だった。

 調査隊は明日帰ってくる予定なので、明後日にでも来るように言われた。
 少し盗賊団の話をしてきた。

「お前のレベルでよくあの盗賊団の頭を殺す事が出来たな」

 おっちゃんは感心していた。
 結構有名な盗賊団で、頭はレベル50位の猛者だそうだ。
 懸賞金は結構掛かっているというので、期待できるぞと言われた。

 一通り話が終わり夕方の為、急ぎ宿に戻る事にしたのであった。
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