異世界召喚された俺は余分な子でした

第１章

第10話 盗賊との死闘と運命の少女

　街道から外れて奥に入って行くにつれて、争いの音が大きくなってきた。
　藪や木でまだ争いの場は見えないが、血の臭いがするのと、罵声と怒声、呻き声等が聞こえて来る。

「魔物ではなく、盗賊に何者かが襲われているっぽいな」

　俺はそう呟いたが、心は不思議と落ち着いていた。

「死なないように頑張ろう！」

　思わずそんなふうに呟いた。某魔術師と呼ばれた男のセリフだ。彼のように凄い戦術がほいほいと出す事が出来るのであれば良いのだが、恐らく考える暇もなく行き当たりばったりになり、やはり人を殺す事になるのだろうなぁとため息をついていた。

　普通なら人を殺す事に対し、葛藤をするのだろうが、この時は微塵も迷う事も無かった。後で思い出しても不思議なのだが、やはり俺は壊れているのだろうか？と苦悶をする事になる。

　いよいよ争いの場が見える所にまで来たが、やはり野営中に襲撃を受けたようだ。

　馬車は3台で、荷馬車が1台と、人を乗せる用と思われる馬車が2台見えた。

　そこかしこに死体が転がっており、恐らく20人以上だろうと思われた。死体の中に若い女性もいたが、首には俺に着けようとしていたのと同じ首輪が見えた。

　その女性は殆ど裸であり、恐らく犯された後に殺されたのであろうと思う。酷い事をするものだ。
　服装はばらばらで、冒険者と思われる死体等に混じって、盗賊と思われる軽装の小汚い連中の死体も見掛けられた。つまり一方的な殺戮ではない事を意味する。

　小型の天幕が数幕あり、一つを除いて崩れていた。崩れた天幕の近くには身なりの良いでっぷりとした男が倒れていたのだが、商人か貴族だろうか。
　馬車を物色している盗賊が見えたので、そいつの背後にそっと近付き、首を一気に刎ねた。
　剣術レベルが上がったのか、森での戦いの時に比べるとすんなりと首を刎ねる事が出来た。また、スキル取得のアナウンスが聞こえたので、人からでも取得するんだなと頷いた。

「罠解除を強奪しました」

　馬車の近くで死姦している奴が居たので、そいつも首ちょんぱした。

「鍵解除を強奪しました」

　野営地の一角では、一人の冒険者が三人を相手に戦っており、善戦していた。だが、遂に力尽きてしまった。俺は急いで盗賊の背後に回っていたが、後一歩間に合わなかった。

「ファイアーボール・ファイアーボール」

　2人に投げ付け、あっという間に火達磨にしたが、最後の奴は燃え盛る仲間を見て固まっていたので、俺はその隙に首ちょんぱした。

　林の中からも悲鳴が聞こえてきたが、逃げた者を盗賊が追い掛けていったんだろうなと思う。

　また、唯一倒れていない天幕の方から、女性の叫び声が聞こえてきた。

「いやー！やめてー！誰か助けて！」

「おいおい、大人しくしやがれ！可愛い顔に傷つけっぞ！うへへへへ」

　下卑た男の声が聞こえてきたので、俺は迷わず天幕に駆け込んだ。

　その天幕の中には3人がいて、女性に馬乗りになって己のズボンを下げている最中の男と、入り口と反対側に男が1人いる。そして男に犯され始めている女性がいた。

　その女性は身に纏っている服をたくし上げられ、下着が露わになっていた。そしてその首には隷属のだと思うが首輪を着けられていた。今まさに犯され、純潔を散らされそうになっていた。何故かまだ生娘だと分かる。

　馬乗りになっていた奴は、ズボンを下ろしてこの女性を強姦する事に夢中になっているのか、俺が天幕の中に入って来た事に気が付いていなかった。だが、もう一人の奴は気が付いて誰何してきた。

「テメー何もんだ！」

　そいつは叫んだが、俺はその時には既に剣を振りかぶっており、叫び終わった時には馬乗りになっている盗賊の頭部に剣を叩き込んでいた。そいつは脳漿を撒き散らしながら倒れ、死んでいった。

「統率力を強奪しました。」

　スキル取得のアナウンスが終わると同時に、もう1人の盗賊が投げたナイフが俺の右肩に刺さった。すると血が噴き出し、女性に血が少し掛かった。

　俺はうっと呻き声を漏らすと共に剣を落としたが、咄嗟に痛む左手を無理やり盗賊に向け、アイスアローを３連射した。

　奴は1発目は躱したが、残りの2発が命中し、脚にも当たった為か倒れたので、追撃のアイスアローを放って始末した。

「剣術（二刀流）を強奪しました。」

　いつものメッセージが流れた。
　盗賊を始末したので、襲われていた女性に声を掛けた。

「大丈夫か？立てるか？」

　声を掛けてから一歩近付いた。服は白いワンピースで、年齢は高校生位だろうか。
　金髪のロングヘアーで、すらっとした体型。
　服は捲り上げられていたが、今は必死に整えていた。先程ちらっと見えた感じだと、小さくもなく大きくもなく、手のひらサイズで俺好みの形や大きさだった。

　服は胸元が少し破れているが、襲われている時に破られたのだろう。

　少女に手を触れようとした時に天幕にやってきた者がいて、天幕の中にいる筈の者に対して声を掛けた。

「お頭どうかしましたか？」

　そうして一人が入って来たが、間髪入れずにアイスアローを投射し、そいつの頭部に氷の矢が刺さった。

「隠密を強奪しました」

　するといつものアナウンスが聞こえてきた。座り込んでいる少女に手を差し伸べながら声を掛けた。

「脱出しよう」

　すると俺の方を見て、少女は震えながら身構えていた。

「君をどうこうしようという気は無い。偶々街道を歩いていたら、争いの気配がしたから駆け付けたんだ。見ての通り俺は盗賊では無い。さあ立つんだ」

　差し出した手を少女が掴んだ瞬間に体に電気が走り、痺れが一瞬起こった。俺は何故か運命を感じた。
　少女も同じようで一瞬固まったが、漸く口を開いた。

「はい、よろしくお願いします！」

　澄んだ心地良い声だった。
　立ち上がった少女が怪我を負っていない事を確認したが、ふと見ると片胸がポロリだった。流石に指摘しないとなぁと思い、その胸を指で差し示したが、漸くポロリしている事に気が付き、真っ赤になりながらも慌てて胸を隠したが、芸術品と見紛う程に綺麗な胸だった。