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第2章

出発

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 夜寝る前に当夜はルナに打ち明けた。
 アモネス、シャクラ、レグナスの3人から結婚を申し込まれ、今の自分の体では彼女達の幸せを考えると、受け入れるべきではないと。ルナは頷いて理解してくれた。

当夜「明日の早朝まだ彼女達が寝ている間にここを立とう。王都とは反対に一旦行くんだ。追いかけて来たとしても反対側だ。そう簡単に見つかるまい。あの子達の未来を考えると俺と一緒じゃないのが一番なんだ」

 どうやら当夜は涙を流していたようで、ルナがそっとハンカチで拭っていた。
 当夜達は荷物をまとめ、出発の準備を行い最後に置き手紙をテーブルの上に置いて、荷物を載せておいた。

 まだ夜明け少し前位の薄暗い中、当夜とルナはそっと部屋を出た。
 宿の主人に急用で自分達は先に王都へ向かうが、残りがまだ滞在すると1泊分を支払って出立し、馬車は残していった。置手紙には1泊分を支払っておく旨を書いておいたのだ。

 一旦逆方向に行き、隣町から別ルートで王都へ向かう事が可能な街道がもう一本有ると地図で以前確認していた。ただ、治安があまり良くないのでお勧めできないとギルドで聞いた覚えがあった。パーティーは次の街で解散手続きを取る予定だ。

 街を出て暫く徒歩で進むと数匹のゴブリンが出てきたが、ルナがあっさり倒す。
 日が昇ってきて段々明るくなってくる。当夜は思い悩んでいた。3人を騙して置き去りにしたのだ。いくら彼女達の為とは言え、書置きだけで黙って出てきたのだ。書置きは机の上に置いた荷物の下だ。すぐには探さないだろう。散歩か何かで一時不在程度で、さすがに朝食に現れなければ異変を感じるだろうが、その頃にはもう足取りは分からず、王都へ向かったと思い追いかけるだろう。そうするとますます距離が離れ二度と出会わない可能性が高くなると思っている。

 心が苦しかった。罪悪感が半端ではないのだ。当夜も3人の事は人として好きだった。善良な娘達で、穢れた自分とは違うと、一緒に居ると彼女達が穢れると本気で思っていた。ただルナはどうしようもない。彼女の生きる術は物理的に自分に繋がっているので離れる=死だからだ。

 4、5時間歩いただろうか。まだ誰ともすれ違わない。まあ途中で野営をした者が居なければそうなるのだ。馬車に追い抜かれていないのが不思議だったが、脇道に入り、ルナと昼食にした。30分位休んだ後再び歩き始める。荷物は武器以外携行していない。だから歩くのは結構早いし、商人の荷馬車よりも早い位だ。
 夕方には町に着いた。この世界に来た最初の分岐路で、どちらの街に行くか悩んだもう一方の街だ。

 街への入場手続きを済ませ、門番に教えて貰った宿に行く。部屋に風呂がある中級宿だ。
 夕食を済ませ入浴し、眠る事にしたが中々寝付かれなかった。やはり3人が気になるのだ。だが既に決断し、決行してしまっている。今更後戻りはできないし、道中追いつかれなかった事を考えると、少なくともこちらに自分達が向かったと当たりをつけて追いかけて来なかった事が分かる。
 そんなこんなで3人娘と別れて最初の夜を迎えたのだ。等屋の頬には1条の涙が伝っていたのだった。
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