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第3章

第168話 落下拷問

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 俺は壇上に転がっているシャンデリアの残骸や、大きなガラを収納に入れていく。
 次にホウキを収納から出し、小さいガラなどを端に追いやったり、収納から出した土嚢袋の中にガラ等を放り込んだりと、せっせと片付けをしている。

 謁見の間はまだ混乱していて、兵士達は事態の収拾に努めている。
 国王、奥方、王女が不思議そうに俺のしている事を見ていた。
 混乱から動く事が出来ている者は極端に少ない。

 取り敢えずきれいにし、穴が空いた所に板を引き、その上に小さな絨毯を置く。

 また、椅子を出して、壊れた玉座の代りとしてみた。この際しょぼいのは我慢してもらおう。
 そのうち誰かが適当なのを持ってくるだろう?

「あのう、助けて頂いて何ですが、勇者様は何をなさっておいでなのでしょうか?」

 心地の良い声色・・・若い女性の声だ。
 ふと振り向くと、俺のハンカチを握りしめているお姫様がいたが、何故か(うっとりと)俺を見ている。
 俺なんか見ていても仕方がないだろうに。

「ああ、謁見の間が使えないと困るでしょ?取り敢えずしょぼい椅子しか持っていなかったけど、取り敢えずの続きができるでしょ?幸い怪我もないしね!」

 すると異変があった。
 上から矢が射掛けられたのだが、間に合わない。
 収納から出した物で受け止めるしかない。
 剣で切り裂いたり、弾くなんて芸当は無理だ。
 俺は収納から剣を出した!と言いたいが、そうではなかった。

 だが、出したそれを掴んで腕を伸ばしたのだが、国王の感を隠す形でフライパンを出したのだ。
 直後にカーンと間の抜けた音がするも、貫通せずに弾く事が出来た。
 俺がそうしている様は結構間抜けな姿なのだが、気にしてはいけない。

 俺は矢が射られた所を確認した。

「そりゃー!」

 掛け声と共にフライパンを投げた。
 するとフライパンは縦に回転しながら飛んでいく。 
 ブォンブォンと風を切る音がしていたが、程なくしてカーン!と鈍い音がした。

 ぐあっ!と聞こえたが、フライパンと1人の男が落下してきた。
 またもや叫び声が各所から聞こえてくる。

 俺は落下してきた奴を飛んでキャッチする事が出来ず、頭突きを食らわせて横方向に飛ばす形になり、賊は兵士達の所へ向かって行く。

 ガシャーンとの音と共に兵士達にぶつかり、何人かが巻き込まれて倒れていく。
 俺は俺でアイタタタと唸りながら壇上に戻る。

 因みに賊に当たって落下したフライパンは、兵士のヘルムに当たったようで、その兵士は屈んでおり、頭を抱えて唸っていた。

 落下した奴は問答無用で拘束され、ニーナは剣を抜いて警戒をする。

 俺はニーナに頷くと、もう一度天井近くまで飛ぶ。
 すると逃げようとしていた奴がいた。
 クロスボウを持って天井付近の梁に潜んでいたのだ。

 俺はそいつに体当りする形でキャッチし、梁から離れた。
 胸の感触がたまらん!
 ってこいつ女かよ!

「くっ!は、離せ!」

 声も女のそれだ。
 黒い服に目出し帽でよくわからなかった。

「分かった。離すよ」

 そいつはえっ?と唸るも、俺が上にそいつを放り投げる形で腕を広げた瞬間、その女の絶叫がこだまする。

「イヤー!」

 中々可愛らしい悲鳴だ。
 若い女のようだが、俺は真下に向かって飛び、もう一度キャッチする。
 勿論後ろからガッツリ胸を鷲摑みにするのは基本だ。
 うん。中々のモノをお持ちだ。

 そしてもう一度天井近くまで飛ぶ。 

「お前何者だ?誰に雇われて誰を殺そうとした?」

「くっ!こ、殺せ!」

「そうか。堕ちろ!」

 再び上に放り投げるとやはり叫び声がする。

「ギィーヤー!この人でなしがあぁぁ!」

 今度は腕を掴むが、違和感があった。
 多分関節が外れたはずだ。
 その為に苦悶の声が聞こえる。

「早く話さないと、もっと辛い目に遭うぞ!何せあと3本あるからな」

「や、やめてくれ!話す!話すから、何でもするから!お願いだ!これ以上は耐えられない!早く楽にしてくれ!」

「まだ行けそうだな!洗いざらい白状すると誓え!」

「わ、わかっキャ~」

 俺は再度落下させ、キャッチすべく飛び、体自体はちゃんと掴んだのだが、この女の脚が床に当たってしまったからか、ギャー!と絶叫がこだました。

 明後日の方向に曲がっているから脚が折れたようだが、その女は痛みから泣いて震えている。
 脚が折れたのは狙い通りではなく、ミスって折る形になってしまった。
 正確には、胸に顔を埋める事に気を取られた為、キャッチのタイミングが少し遅くなり脚が折れる結果になったのだ。

 ソロソロ心が折れたか?
 結果オーライか?

 俺は人でなしの行為をしている自覚はあるが、短期間で首謀者を割り出す必要があるから、心を鬼にして拷問し、危険を排除する事を優先した。

 組織的な犯行だから次があるのだ。
 俺は壇上で組み伏せた状態だ。
 国王と王妃は冷淡な眼差しで、王女はなんとか見ている。王妃に目を逸らす事を許されなかったのだ。

「治療をして欲しいか?」

「痛い!殺してくれ!頼む!もう耐えられない・・・」

 ニーナを手招きした。

「ニーナ、悪いが治療してくれ」

 俺は痛がり唸るのを無視してタイラップで手足を縛る。
 周りはシーンと静まり返っており、はっとなり目出し帽を脱がせた。

 そこには目を見張る美少女がいた。
 慌てたのは王妃だ。
 俺も動揺した。
 こんな美少女だったとはと。
 歳は15歳前後だろうか。
 そんな子に拷問をしたのだ。
 血の気が引くのが分かる。
 王妃が俺から目出し帽を半ば奪う形で手に取ると、慌てて賊の女に被せた。
 実際に顔を見たのは俺、ニーナ、国王、王妃、王女位だ。

「こ、この者を別室に。許可するまで顔をこのまま隠すように!」

 そうして怪我を治されたが、手足を縛られている女性はこの場から連れ出されたというよりも、担がれて運び出されたのであった。
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