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第1章
第58話 アーリバン国での提案
しおりを挟む俺が直接奴隷にした3人はフリオールの部下で、今は別の馬車に乗っている。
フリオールが語ったその後の話はこうだ。
アーリバン王国は混乱を極め、俺達が召喚された日の夜になり漸く会議を開いたと。フリオールも俺達の顔を直接見た者として会議に参加していた。俺達の事を犯罪者とし、国中に手配書を回す事になった。翌朝隣町の領主の館から全ての町に対して、魔道具による一斉連絡を行う。
その内容は各町の入口に手配書を掲示させる事だった。本来であれば城からその連絡を行うのだが、その魔道具が有るのは王都の場合城にのみある。つまり王都にある唯一の通信手段の魔道具は城ごとなくなってしまったのだ。
その日の夜、国王は国王派の公爵の屋敷に身を寄せる事になった。
フリオールはその屋敷にて行われた御前会議の場で隣国に俺達を捕らえに行く提案をし、その為の許可と通行許可証を取得した。
俺が隣国のクマーシャル王国に逃げ込む可能性が高く、自分が捕えに向かうと。その為の偽装として奴隷を全員引き連れてクマーシャル王国の王都に売りに行く事にするとした。偽装の為に非戦闘奴隷を売払い、その間に戦闘奴隷を使って逃亡者を捕まえる。奴隷を全て売り払うには数週間掛かる見込みになる。
奴隸売買をした実績を残すのは、それはあくまでも逃亡者を捕える為の時間稼ぎなのだが、正式な奴隷商が行商をしていれば、それが偽装行為だとまずバレないだろうと。兵士だと活動出来ないが、奴隷の売買は元々各国との間で行われている事から特に不審がられないはずだ。
今回は屋敷を空にする必要があり、フリオールの商会の職員全員を連れて行き、家族も連れて行く。家族全員で来たとなれば、嘘偽りがないと疑われるリスクが限りなくゼロになるだろうと。
城を失った今、使える屋敷もほぼ無く、無理に貴族から接収すると遺恨を残す為においそれできない。国王も貴族の屋敷に身を寄せるのは肩身が狭く、何かと心苦しいのだ。フリオールが捕縛の旅にでている間、国王がフリオールの屋敷を使えば万事丸く収まるとした。その為にクマーシャル王国に奴隷を売り、別の奴隷を仕入れる許可が欲しい旨のお願いをしたのだ。あくまで別の活動をしている事が露見しない為の偽装だとかなりくどくどと説明したのだという。チョロかったらしい。通常時なら絶対に許可は降りないし、かなり追い込まれており、まともな判断ができず目の前の餌に飛びついたのだろうと言うのだ。
勿論裏切るのではないのか?と家臣の誰かが言ったのだが、その時は屋敷を没収すれば良いと伝えた。例え今いる全員を売り捌いても、屋敷の費用とは釣り合わな過ぎるから、屋敷を失う愚は起こさないと伝えた。
確かに逃亡者を捕える事は最優先事項で、揉めている隣国に兵士を送り込めないので案外あっさりと許可が降りた。国王もどうやって捕縛する者達を送り込むか思案しており、正に渡りに船だった。
屋敷は先祖代々受け継いできた資産だった。
そうして許可が降りた後、馬車と食料だけは用意して貰い、城が消えた翌朝に出発した。溜め込んだ金品、宝石類は奴隷の脚や服に仕込み、馬車の荷物としては怪しまれない範囲の金品しか乗せなかった。また、戦闘奴隷の装備品として国宝級のアイテムを装備させて、実際は戻るつもりがない事がバレないようにした。また、家族帯同は隣国の警戒を緩める為に必要だとし、身辺を調べられると家族構成がすぐにバレる。家族を国元に残していると、家族を人質に取られていると怪しまれるから、密命を帯びていると間違いなくバレると納得させた。確かに過去にそれで間諜だと露見した事が多々あり、家族帯同を認められた。
屋敷の使用人は一旦暇を取らせるとした。とはいえ、それらの人員も連れて来ており、大所帯になっていた。
混乱していたとはいえ、この提案を皆ありがたがり、更に困っている屋敷の確保と一石二鳥だった。そしてフリオールは忠義の者として国王にハグまでされたのだと。城が無くなったから、国王を筆頭に家臣達も正常な判断ができなくなったようだ。
フリオールは名目上は一行の主の為、旅の間はそのように振る舞っていた。また、奴隷全員に本来の俺からの指示を伝えるも、自分も奴隷になっている為に奴隷開放が出来ず、もう1つの指示である隣国の王都に行き、俺に会いに行く事を伝えた。俺なら開放ができるだろうと伝えたとの事だった。
そうして俺達は馬車の人となり王都に向かっていくのであった。
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