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第1章
第56話 商会の厄介事
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最優先事項として、一連の襲撃が何だったのかを知る必要があると判断したので、死体の後片付けや、怪我人のケア等は他の人に任せて、俺は検分や尋問に取り掛かった。
先ずは持ち物の確認をする。
しかし、身分を示したり、手掛かりになるような物は一切持っていなかった。カードの内容も当てにならない。
ずっと黙秘だ。仕方がないので、奴隷商を手招きし少し話をした。
「今回の襲撃の首謀者に繋がる唯一の生き残りだ。ご覧の通り尋問にてこずっている。こいつを奴隷にできないか?あんた確か奴隷商だったよな?」
「はい。私は奴隷商を営んでいました。ただ、ご主人様の奴隷となってからは新たな者を奴隷にする事をしておりませんので、奴隷になった私めにそれが可能かどうか分かりません。それに、ここにいるご主人様の奴隷達の開放が出来ず、隷属紋への切り替えも出来ませんでした。なので、ご命令であるこの者達の奴隷からの開放が出来ず、命令を履行するべくご主人様を探してこちらに来た次第です」
「分かった。試しに奴隷にしようと試みてくれ。今の俺には奴隷関連のスキルが無いからアンタを奴隷にした時のような事は無理なんだ」
「畏まりました。それでは試してみます」
・・・
結果的に奴隷になった状態の奴隷商では出来なかった。
そうこうしていると治療の終わった馬車の乗客が挨拶に来た。但し俺にではなく、ニーナにだ。
乗客を代表して1人の中年の男がニーナの前に行くと、恭しくお辞儀をした。
物腰の柔らかそうな痩せ型で、茶色の髪だ。何処にでもいそうな面構えで、印象は薄い。服は地味だが一般人の着る服の仕立てではない。丁寧な仕事がなされている服を着こなしている。
「まさか剣聖様がこの場においでとは驚きました。この度は我々をお救い頂き誠に有り難うございます。私は王都に店を構えるラフトと申します。以後お見知りおきを」
「アタイよりこっちのレオンにお礼を言っておくれ。アタイ達のパーティーのリーダーだし、あんたらを実際に救ったこの奴隷達の主だからさ。それとラフトって最近王都に進出した大手の商会と名前が一緒だな。ひょっとしてあんたが噂の商会主か?」
「レオン様、これははじめまして。剣聖様の仰る通りラフト商会の商会主をしておりますラフトでございます。この歳でこの数の奴隷を従える奴隷商を営んでおられるとは凄いですな。それよりも剣聖様が他の方と一緒にパーティーを組まれている事の方が驚きです」
さっきからニーナが剣聖と呼ばれているが、あの感じから有名人のようだな。今は知らないという事は伏せよう。
「少し違うがニーナとこのアイリーンで冒険者パーティーを組んでいて、リーダーをしているレオンだ。こちらこそ宜しく。所で何があったんだ?」
「恐らくは私を狙った襲撃だと思われます。商売柄敵も多いのです。我が商会は最近王都で勢力を広げております故、それを面白くないと思う連中が襲ったのでしょう。馬車が壊されましてな。仕方がないので、僅かな手の者だけで乗り合い馬車に乗って王都に帰る所でした」
「そうか。ラフトさんは死体を見る事が出来るか?そういう事なら死体の検分をして貰いたい」
「勿論です」
そうして後を奴隷商とアイリーンに任せ、ニーナとラフトを連れて少し離れた所で死体を出し、カードやら顔が確認出来る者を見て貰った。
かなり凄惨な死体だったが、ニーナはともかく、ラフトも眉1つ動かす事なく検分をしていた。
「やはり間違いなく私を狙ったようです。この者達に見覚えが有ります。王都で2番手の商会の使いを名乗り、王都での商売をやめなければ家族によからぬ事が起きるやもと、脅しまがいの警告をしに来ていましたから」
「分かった。こんな所に長居は無用だし、とっとと王都に向かおう」
そうして皆の所に戻るのであった。
先ずは持ち物の確認をする。
しかし、身分を示したり、手掛かりになるような物は一切持っていなかった。カードの内容も当てにならない。
ずっと黙秘だ。仕方がないので、奴隷商を手招きし少し話をした。
「今回の襲撃の首謀者に繋がる唯一の生き残りだ。ご覧の通り尋問にてこずっている。こいつを奴隷にできないか?あんた確か奴隷商だったよな?」
「はい。私は奴隷商を営んでいました。ただ、ご主人様の奴隷となってからは新たな者を奴隷にする事をしておりませんので、奴隷になった私めにそれが可能かどうか分かりません。それに、ここにいるご主人様の奴隷達の開放が出来ず、隷属紋への切り替えも出来ませんでした。なので、ご命令であるこの者達の奴隷からの開放が出来ず、命令を履行するべくご主人様を探してこちらに来た次第です」
「分かった。試しに奴隷にしようと試みてくれ。今の俺には奴隷関連のスキルが無いからアンタを奴隷にした時のような事は無理なんだ」
「畏まりました。それでは試してみます」
・・・
結果的に奴隷になった状態の奴隷商では出来なかった。
そうこうしていると治療の終わった馬車の乗客が挨拶に来た。但し俺にではなく、ニーナにだ。
乗客を代表して1人の中年の男がニーナの前に行くと、恭しくお辞儀をした。
物腰の柔らかそうな痩せ型で、茶色の髪だ。何処にでもいそうな面構えで、印象は薄い。服は地味だが一般人の着る服の仕立てではない。丁寧な仕事がなされている服を着こなしている。
「まさか剣聖様がこの場においでとは驚きました。この度は我々をお救い頂き誠に有り難うございます。私は王都に店を構えるラフトと申します。以後お見知りおきを」
「アタイよりこっちのレオンにお礼を言っておくれ。アタイ達のパーティーのリーダーだし、あんたらを実際に救ったこの奴隷達の主だからさ。それとラフトって最近王都に進出した大手の商会と名前が一緒だな。ひょっとしてあんたが噂の商会主か?」
「レオン様、これははじめまして。剣聖様の仰る通りラフト商会の商会主をしておりますラフトでございます。この歳でこの数の奴隷を従える奴隷商を営んでおられるとは凄いですな。それよりも剣聖様が他の方と一緒にパーティーを組まれている事の方が驚きです」
さっきからニーナが剣聖と呼ばれているが、あの感じから有名人のようだな。今は知らないという事は伏せよう。
「少し違うがニーナとこのアイリーンで冒険者パーティーを組んでいて、リーダーをしているレオンだ。こちらこそ宜しく。所で何があったんだ?」
「恐らくは私を狙った襲撃だと思われます。商売柄敵も多いのです。我が商会は最近王都で勢力を広げております故、それを面白くないと思う連中が襲ったのでしょう。馬車が壊されましてな。仕方がないので、僅かな手の者だけで乗り合い馬車に乗って王都に帰る所でした」
「そうか。ラフトさんは死体を見る事が出来るか?そういう事なら死体の検分をして貰いたい」
「勿論です」
そうして後を奴隷商とアイリーンに任せ、ニーナとラフトを連れて少し離れた所で死体を出し、カードやら顔が確認出来る者を見て貰った。
かなり凄惨な死体だったが、ニーナはともかく、ラフトも眉1つ動かす事なく検分をしていた。
「やはり間違いなく私を狙ったようです。この者達に見覚えが有ります。王都で2番手の商会の使いを名乗り、王都での商売をやめなければ家族によからぬ事が起きるやもと、脅しまがいの警告をしに来ていましたから」
「分かった。こんな所に長居は無用だし、とっとと王都に向かおう」
そうして皆の所に戻るのであった。
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