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第1章

第45話 VSオーガ

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 レオンは目の前に魔物がいる事に驚き、更に一瞬だが固まってしまった。身長2.5m程あるオーガと言われる悪鬼だ。
 ハッとなって慌てて後ずさったものだから、階段を踏み外して転がり落ちてしまった。その為、少し後ろから階段を登っていたアイリーンにぶつかってしまったのだ。

 アイリーンの前にニーナがいたのだが、彼女は颯爽とレオンを躱していた。いやいやいやいや!受け止めてやれよ!となるが、アイリーンは尻もちをつき、イタタタと唸っていた。

 そして次の瞬間、キャー!と叫んで横に逃げた。レオンの頭がお股に埋まる形になっていたからだ。今はズボンの為下着を見られた訳ではないが、それでも股間に人の頭が埋まっているのは恥ずかしかった。

 ニーナはやれやれと無様な姿を晒すレオンを見ていた。そしてその頬を炎の弾が掠めたのだが、熱さを感じるまで気が付かなかった。急にレオンがニーナに手を向けて「ファイヤーショット」と1言発したのだ。腕から炎の弾がニーナの背後に向けて飛んでいったのだ。

 オーガが武器を振りかぶり、ニーナの背後を襲おうとしていたのだ。

 レオンの装着した火の腕輪は、念じれば装着者の魔力を消費する事で初級魔法を放つ事が可能だ。魔道具のデメリットは、魔法使い等が放つ通常魔法の倍の魔力を使う事だ。良くも悪くも威力は誰が使っても同じなのだ。

 また、メリットは、魔力さえあれば魔法の未取得者や、その属性に適性がない者でも魔法を放つ事が出来る事だ。腕輪は左右に1つずつ、つまり最大2つ装備できる。

「グモーッ!!!」 

 オーガに炎の弾が命中し、驚いたオーガが唸ったが、レオン達には聞こえなかった。ニーナが炎の弾の飛んだ先を見るのに上を向くと、オーガが顔を手で覆っている。

「なっ!この私がこの距離で魔物の存在に気が付かなかっただと!」

 ニーナは驚きつつ剣を抜いた。レオンも視認するまで魔物の気配に気が付かなかったのだ。

 アイリーンも立ち上がり、どうしたら良いのか?とオロオロしていた。レオンも何とか立ち上がり、グラムを出して身構えてアイリーンを庇うような位置まで階段を登った。

「レオン、火は駄目だ!水か剣を使うんだ」

 そう告げるとニーナは階段を駆け上がり、剣でオーガの脚を斬りつける。

 ニーナは強かった。愛剣を抜くと次々に振るい、分厚い皮膚を斬り裂いていく。

 左脚を斬るとそのまま背後に回り、オーガが振るった棍棒を薙ぎ払う。

 分厚い筋肉が邪魔をしており、少しずつしか斬れない。

 オーガは持っていた棍棒をニーナの頭目掛けて振り抜くが、ブォーンと音がして空を切る。

 しかし、レオンにはその音が届かない。ニーナは階段から離れる方向に移動し、オーガを誘導した。

 レオンとアイリーンが階段を登ると音が聞こえ出した。

 理由は不明だが、遮音結界が生きており、謁見の間から外に音が漏れない。逆もそうだ。謁見の間の外で発生する音は聞こえない。

「アイリーン、ニーナを援護しよう。頭か胸より上を狙うんだ。じゃないとニーナに当たる」

「うん。分かったわ」

 腕輪の使い方は問題なかった。魔力持ちが装着してさえいれば、呼吸をするのと同じレベルで使えるのだ。

「アイスバレット」
「ウインドカッター」

 2人がオーガの頭と胸に向けて魔法を放った。
 すると胸に浅い切り傷が付き、右目にアイスバレットが刺さった。

「よくやった!」

 そしてアイリーンがは見事に左目に刺さった。

 オーガは視界がなくなり、パニックになった為に大振りに棍棒を振り、壁を抉り、破片が散乱する

 更にアイリーンが放った矢は膝を撃ち抜いた。

 レオンは今だと思い、オーガの近くに駆け寄り、水魔法を使う。

「ウォーターショット」

 圧縮された水が直ぐ側で高速で射出される。それを10個以上発生させて半包囲で放ち、シュン!と空気を切り裂く音と共にオーガの体を貫通し、血肉を撒き散らす。

 更にアイリーンの放った矢が、反対側の膝を打ち抜くとオーガは膝から崩れ落ち、ニーナが背後に回り込むとその首を刎ねて決着した。

 するとオーガはキラキラ輝き出し、姿が霞んだかと思うと、そのキラキラが中心に集まると、ピカーン!と光った。そして次の瞬間、そこにはオーガの姿はなく、代りに魔石等のドロップアイテムのみ残されていたのだった。
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