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第1章

第8話 間に合った!

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 瑞希ちゃんはほっとした感じで岩場から出て来ると、クルッと1回りした。多分間に合いました!アピールかな?ほらスカートは濡れていませんよ!って。

「栃朗さん・・・ま、間に合いましたからね!その、ありがとう。あっ!手が洗えない・・・ううう。カバンの中・・・」

 お兄さんは収納からカメラバックを出した。その中から携帯用のウエッティを1枚出して瑞希ちゃんに渡してあげたんだ。

「えっ?何でこんなのも持っているんですか?」

「これでも腕前はプロ並みのアマチュアカメラマンなんだよ。カメラを触るのに手を清潔に保たなきゃだからさ。それに亡くなった妻に出掛ける時は、必ずウエッティ位は持ち歩きなさいってしつこく言われていたんだ。そうだねぇ、ここは中々見晴らしが良いから、こんな時だけど写真を撮っていこうね」

 ささっと三脚にニコソのD@Xをセットして、セルフタイマーをオン。デジタル一眼レフカメラのフラッグシップモデル!重いんだよな!瑞希の気を紛らす為に敢えて、えっ!?と思う様な事を言ったのだ。

 何故か腕を組んでくる瑞希ちゃん。俺は戸惑った顔をしていたけど、瑞希ちゃんは少しはにかんだ笑顔だったかな。カシャッ!しっかりしたシャッター音というか、ミラーが動くリズミカルな音が心地良い。
 カメラはこうじゃなきゃ。

 クイックシューからカメラを外して収納し、三脚を入れてから岩等も収納していく。

「栃朗さんて、ドラえもんみたい!」

「その心は?」

「私が必要としている物がなんでも出てくるんだもん。でも、ドラえもんじゃなくてスーパーマンかな?」

 一応呑気に話し込んでいるけど、腕がやばくなってきたから休憩をしている。お兄さんは瑞希ちゃんを心配させまいとしているけど、体が悲鳴を上げ始めていた。ずっと同じ姿勢だから節々が、特に背中と腰が痛い。そうそう、スーパーマンの方を希望したいね!タケコプターって柄じゃないから。

「瑞希ちゃん、喉は乾いていない?」

 そう言うと、カメラバックのサイドポケットに入れていたペットボトルのお茶を出した。

「良いんですか?」

「もう1本有るけど、今の所貴重品になるから少しづつ飲むんだよ。もう1本は緊急用だから、いざという時まで開けたくないな」

 彼女が飲んだあと、俺も1口飲む。瑞希ちゃんはあっ?と唸っていた。

「いいかい?僅かながら食べ物を持っているけど、お茶も2人で分け合わなきゃだよ。間接キスとか恥ずかしがらずに交互に飲んでいかないとだから、ね。夜になってから城をどこかに出して、そこで中を漁ったら少しはマシになると思うけど、それまでは必要最低限だから」

「う、うん。私のカバンにも色々入っているから、カバンを見つけたいな」

「そうだね。アイツラは何とか抱えて動いていたけど、瑞希ちゃんのは収納に入れる暇が無かったからな」

「栃朗さんは奥さんがいたの?ごめんなさい」

「あっ。カメラをする時は傷付くから指輪は外しているんだ」

 財布から結婚指輪を出したけど、ゆるゆるではまらなかった。

「あれ?緩いな」

「あっ!確か城ではズボンが下がっていましたよね!?」

「お兄さん若い頃は痩せていたんだよ。あの時はお腹が少し出ていたけどさ。あっ。気にしないで。死別したけど、もう3年も前の話だから。今は趣味に生きる人だからさ」

 瑞希は首を傾げた。さっきは5年前と言ったはずだが、今は3年前と言っていたのだ。

「じゃあ今は特定の女性はいないの?ですか?」

「うん。まあ、幸いかな?帰る事が出来ないってあいつらは言っていたから、もし恋人とかいたら立ち直れなかったかな」

「やっぱり帰れない・・・のですか?」

「少なくとも召喚を実行した奴らは帰る方法を知らないようだよね。一方通行なのだろうね。それはまた後で考えようよ」

 するとドスンドスンと音がした。
 振り向くと1つ目の巨人が棍棒を振りかざしながら、こちらに歩いてくるのが見えた。しかし身を隠すところはない。サイクロプスと言う奴か?瑞希ちゃんがサイクロプスと唸っていたんだ。ゲームはやらないと言っていたけど、分かるんだ!
 瑞希に鑑定を取らせていた事をすっかり忘れている栃朗だったりする。瑞希は鑑定のスキルにより、その魔物がサイクロプスだと見えただけだった。

 ざっと見た感じだと、身長は3mはある。でかい。大人と子供以上の差だな。

「瑞希ちゃん、少し離れて!今から正しい無限収納5段階活用の1つを見せてあげるよ」

 距離は10m程。このままだと無理だな・・・飛ぶか!

 俺は再び飛翔で真上に向かい、そいつを見下す高さに上がったのだった。
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