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第21話 町に!
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健斗は当たり前だというリサリアの言葉を聞いた後一言も発っせられず、見張りを続けることしかできなかった。
見張りを終えたリサリアはエレナの下に行ったが、彼女のすすり泣く声が聞こえてきた。エレナはリサリアの肩に顔を埋め、嗚咽を漏らしていた。
「初めて人を殺してしまいました・・・」
その言葉を聞いた瞬間、健斗は胸が締め付けられた。
「俺のせいで、あんなことをさせてしまったのか・・・」
健斗は深く動揺し、リサリアの悲しみを感じていた。リサリアは健斗の前では強がっていたのだと理解した。
翌朝、健斗はリサリアの横に座ると、そっと話しかけた。
「リサリア、君がやったことは俺を守るためだったんだな。返すことのできない大きな借りを作ってしまった。でも、本当にありがとう。君にそんなことをさせてしまって本当に申し訳ないと思っている。昨日の俺なら絶対にできないことだったからさ」
リサリアは涙を拭いながらうなずいた。
「ありがとう、健斗様。でも、これからはお互い守り合いましょう。その、そう思うなら・・・」
健斗はその言葉に少し救われた気持ちになり、彼女たちを守る決意を新たにしたが、最後の言葉は独り言のように聞こえなかった。
「これからも一緒に頑張ろう。必ず安全な場所までたどり着こう。」
その後、手持ちの食料を商人たちと分け合い、簡単な食事をとりながら旅を続ける準備を始めた。馬車の中にあったエレナが道中食べるお菓子しか持ち出せず、そのお菓子などを食べて空腹を満たした。商人たちも手持ちの保存食を少しずつ出し合い、体力のない者たちに優先的に分け与えた。体力のある男性たちは健斗にも多く配分し、彼が動けなくなることを恐れた。
健斗が命綱であると理解していたから、健斗も有り難く頂いた。
リサリアは剣を構えて最後尾を守り、健斗はエレナを背負い、商人たちは草や蔦を剣で切り裂いて進んだ。
足元が悪すぎて背負った方が安全だと判断し、エレナを背負ったのだ。主に体力の問題だが、林の中を進むにはエレナの履物が適していなかったためでもある。
魔物が現れたらエレナは地面に降り、健斗がボールを上に投げるとすかさずエレナが健斗にラケットを渡す作戦を取ることにした。
途中オークやボアのような魔物に襲われるも、作戦通りに健斗の打ち出したボールで危なげなく進んだ。その特種な戦い方に戸惑うも、その強さに脱帽していた。
ボールを打つたびに発する健斗の言葉にリサリアはジト目で、エレナはうっとりと見ていた。
イッケーとか、おりゃあーとか、俺のハート・・・完全な中二病罹患者となっていた。
時々小休止を入れつつ旅を続け、林を抜ける道を探し始めた。途中からはリサリアが先導し、健斗はエレナを背負って後に続いた。概ねの方向はリースから聞かされ、彼には太陽の方角などから、進む方向を修正する必要があれば都度指示をするようにお願いした。
やがて、林の出口にたどり着き、開けた草原が広がる光景が目に飛び込んできた。
「やっと森を抜けた。」
健斗はほっと一息ついた。
リースも感謝の表情を浮かべた。
「あなた方のおかげでここまで来ることができました。本当に感謝しています。」
健斗は微笑む。
「皆で協力した結果だよ。これからも一緒に頑張ろう。ってまだ町に入った訳じゃないから、気を引き締めていこう!」
リサリアとエレナも同じ気持ちで、開けたところに出られたことに安堵した。
その後健斗たちは問題なく街道にたどり着き、慎重に周囲を見渡しながら進んだ。日が高くなる頃、ようやく小さな町の門が見えてきた。町は石造りの建物が並び、商人や住民たちが行き交っていた。
「ついに町に来たのか!」
健斗は腕の痛みを感じながら、疲れた顔で呟いた。あの町には捕らえられて連れて行かれ、夜中に這々の体で逃げだしたので、実質初めての町だ。恥ずかしいのでキョロキョロせず、目線だけで町の中を堪能した。もし1人だったら興奮して叫んでいただろうが、今は不安そうにしているエレナが気になり警戒していた。
そんなエレナが少し顔を上げてひとつの提案をしようとした。
見張りを終えたリサリアはエレナの下に行ったが、彼女のすすり泣く声が聞こえてきた。エレナはリサリアの肩に顔を埋め、嗚咽を漏らしていた。
「初めて人を殺してしまいました・・・」
その言葉を聞いた瞬間、健斗は胸が締め付けられた。
「俺のせいで、あんなことをさせてしまったのか・・・」
健斗は深く動揺し、リサリアの悲しみを感じていた。リサリアは健斗の前では強がっていたのだと理解した。
翌朝、健斗はリサリアの横に座ると、そっと話しかけた。
「リサリア、君がやったことは俺を守るためだったんだな。返すことのできない大きな借りを作ってしまった。でも、本当にありがとう。君にそんなことをさせてしまって本当に申し訳ないと思っている。昨日の俺なら絶対にできないことだったからさ」
リサリアは涙を拭いながらうなずいた。
「ありがとう、健斗様。でも、これからはお互い守り合いましょう。その、そう思うなら・・・」
健斗はその言葉に少し救われた気持ちになり、彼女たちを守る決意を新たにしたが、最後の言葉は独り言のように聞こえなかった。
「これからも一緒に頑張ろう。必ず安全な場所までたどり着こう。」
その後、手持ちの食料を商人たちと分け合い、簡単な食事をとりながら旅を続ける準備を始めた。馬車の中にあったエレナが道中食べるお菓子しか持ち出せず、そのお菓子などを食べて空腹を満たした。商人たちも手持ちの保存食を少しずつ出し合い、体力のない者たちに優先的に分け与えた。体力のある男性たちは健斗にも多く配分し、彼が動けなくなることを恐れた。
健斗が命綱であると理解していたから、健斗も有り難く頂いた。
リサリアは剣を構えて最後尾を守り、健斗はエレナを背負い、商人たちは草や蔦を剣で切り裂いて進んだ。
足元が悪すぎて背負った方が安全だと判断し、エレナを背負ったのだ。主に体力の問題だが、林の中を進むにはエレナの履物が適していなかったためでもある。
魔物が現れたらエレナは地面に降り、健斗がボールを上に投げるとすかさずエレナが健斗にラケットを渡す作戦を取ることにした。
途中オークやボアのような魔物に襲われるも、作戦通りに健斗の打ち出したボールで危なげなく進んだ。その特種な戦い方に戸惑うも、その強さに脱帽していた。
ボールを打つたびに発する健斗の言葉にリサリアはジト目で、エレナはうっとりと見ていた。
イッケーとか、おりゃあーとか、俺のハート・・・完全な中二病罹患者となっていた。
時々小休止を入れつつ旅を続け、林を抜ける道を探し始めた。途中からはリサリアが先導し、健斗はエレナを背負って後に続いた。概ねの方向はリースから聞かされ、彼には太陽の方角などから、進む方向を修正する必要があれば都度指示をするようにお願いした。
やがて、林の出口にたどり着き、開けた草原が広がる光景が目に飛び込んできた。
「やっと森を抜けた。」
健斗はほっと一息ついた。
リースも感謝の表情を浮かべた。
「あなた方のおかげでここまで来ることができました。本当に感謝しています。」
健斗は微笑む。
「皆で協力した結果だよ。これからも一緒に頑張ろう。ってまだ町に入った訳じゃないから、気を引き締めていこう!」
リサリアとエレナも同じ気持ちで、開けたところに出られたことに安堵した。
その後健斗たちは問題なく街道にたどり着き、慎重に周囲を見渡しながら進んだ。日が高くなる頃、ようやく小さな町の門が見えてきた。町は石造りの建物が並び、商人や住民たちが行き交っていた。
「ついに町に来たのか!」
健斗は腕の痛みを感じながら、疲れた顔で呟いた。あの町には捕らえられて連れて行かれ、夜中に這々の体で逃げだしたので、実質初めての町だ。恥ずかしいのでキョロキョロせず、目線だけで町の中を堪能した。もし1人だったら興奮して叫んでいただろうが、今は不安そうにしているエレナが気になり警戒していた。
そんなエレナが少し顔を上げてひとつの提案をしようとした。
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