上 下
84 / 195
第4章

救出

しおりを挟む
 晃達は急いで20階層を目指していた。時間の問題だからである。イザベラを死なせるわけにはいかないのだ。警戒が疎かになるが、かなりのペースで走っていた。

 ローラン達は団の遠征に付いて行ってもっと下の層まで経験済みだった。そのた為最短ルートが分かっている。戦闘も必要最小限の戦闘に留め、一気に倒す事を優先に戦っていた。

 最初は早足だったが次第に小走りになっていたそして小走りどころか完全にランニングのペースになっていたのだ。

 その甲斐あってか異変を感じてから10分殆どで20階層に来たのだ。幸イザベラの気配はまだしており、生きてさえいればなんとかなるのだ。手足がちぎれていようが大輔にお願いして欠損修復をしてもらえる。大輔は自分は戦う方が似合っていると言ってはいるが、晃からすると完全なチートヒーラーである。

 ほどなくして前方に開けた空間があり、そこに大量の魔物の気配を感じる。
 気配からはどう見てもそこにイザベラがいるのだ。晃は何も考えずに全力疾走でそこに突っ込んでいってしまった。
「何やってんだ!死にたいのか、バカ!」

 ローランが言うが止める事ができなかった。仕方がないので皆晃の後に続く。晃は壁を背に半円形で魔物に取り囲まれていたイザベラと合流する事ができた。魔物達は晃には容赦なく襲ってくる。

 この数日の訓練で晃の戦闘力は劇的に変わっていた。元々ステータス頼みで剣を振ったりしていたが、そこに基本的とは言えちゃんと剣の扱い方や戦いの技が練り込まれている。

 イザベラの周りを少しづつ始末していき、晃はイザベラに背中を向けて周りの魔物達に剣や腕を振り、鎌鼬で次々と屠って行く。少し余裕ができて来て

「イザベラ様なんでこんな所にいるんですか?」

「街で誰かに襲われたのだけど、気が付いたらダンジョンにいたの。袋の中に入れれれていたから少し体が痛むけど、動けるよ!」

 襲ってきているのは狼のような獣達だった。お腹位までの体高があり、犬や狼にしたらかなり大きい。額に角が一本生えておりそれが狼なのではない事がよく分かる。

 いかんせ数が多かった。倒しても倒してもキリがない。仕留め損ねた奴が晃の腕を噛み、足を噛む。血だらけになっていたがそれでも振るう剣を止めない。そう自分がやられれば女神もやられる!そう思ったからである。

 半分程倒した辺りでようやくローラン達が合流した。そこからはあっという間だった。ソレイユたちが鬼神の如く駆逐していく。晃に近づく奴は レヴィが矢で仕留めていく。

 そこからはあっさり駆逐していく。魔石の数から50匹以上だったようである。

 レヴィが慌てて晃を治療していく。レオナはイザベラの護衛だ。ローランが周りを警戒するが、ほどなく晃の怪我も治って行く。

 晃が治療されている間、周辺探索に出ていたソレイユが戻ってきた。


「今のところ近くには何もいないようです。それより晃様大丈夫ですか?」

「みんな僕の方は大丈夫だから。それよりもイザベラ様は大丈夫なの?」

 満身創痍にしか見えない晃がイザベラの事を心配する。イザベラは
「晃くんのおかげで私は大丈夫よ。さすがは私の晃くんね。愛を感じたわ」

 しれっと言う。しかしまだ周りを警戒している状況で、イザベラの言った意味を理解する者はいなかった。ただ、冗談が言えるような状態だったので怪我は特にないのだろうと判断していた。とりあえずころがっている魔石を拾う。床に転がっていて踏むと転倒して大変危険である。稼ぎが欲しいのもあるが、危険な為に回収をどんどんしていった。そして取り急ぎ地上に出ようということになり、先頭がローランとレオナ。続いてソレイユとイザベラ。晃とレヴィが後衛になる。

 そして19階層に向けて歩き始めたが、1分も経たないうちに後方より何かが接近してくる気配があった。身構えるとそこには一人の若者が転がり込んできた。どうやら複数の魔物に追われているようだったのである。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~

青空顎門
ファンタジー
 人の願望や衝動が世界に少しだけ影響を与え、魔法と魔物が存在する異世界アントロゴス。魔物は人の欲動の影響によって少女の形へと変化し、人々はそれを少女化魔物(ロリータ)と呼んだ。その少女化魔物と契約して力を得る少女化魔物征服者(ロリータコンカラー略してロリコン)を多く輩出する村に転生し、イサクと名づけられた主人公。彼は世界の危機に転生者が現れて人々を救う伝説と、実際におおよそ百年周期で転生者が現れて人々を救ってきた事実を知る。前回の転生者が世界を救ってから百年。ほぼ間違いなく、世界の危機に立ち向かわなければならなくなる運命を前に、イサクは少女化魔物征服者(ロリコン)として力をつけていく決意をするのだった。 【少女化魔物は固有技を使う時のみモン娘のようになりますが、通常時は人間とほぼ同じ姿です】 ※小説家になろう様、カクヨム様、ノベルアップ+様、ノベルバ様にも掲載しております。

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

奴隷勇者の転生物語

KeyBow
ファンタジー
 主人公は異世界召喚直後に奴隷にされた後に命じられて魔王を討伐した。 その時に奴隷から逃れる為に転生術を発動するも、不完全で記憶を無くしての転生になった。  本来ありえない2つのギフトを得られており、同郷の者と冒険者をするも、リーダーがその可能性に気が付き、嫉妬により腐らせた挙げ句に暗殺に失敗する。  そして追放された。  絶望の最中一人の女性と出会い、その後多くの仲間を得る。しかし、初めて彼女ができるも、他の少女を救った事から慕われ、思い悩む事になる。  だが、転生前と違い、追放後はハッピーに生きようとするが、そうは問屋が・・・  次から次に襲ってくる女難?と悪意から乗り切れるか?

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

2度追放された転生元貴族 〜スキル《大喰らい》で美少女たちと幸せなスローライフを目指します〜

フユリカス
ファンタジー
「お前を追放する――」  貴族に転生したアルゼ・グラントは、実家のグラント家からも冒険者パーティーからも追放されてしまった。  それはアルゼの持つ《特殊スキル:大喰らい》というスキルが発動せず、無能という烙印を押されてしまったからだった。  しかし、実は《大喰らい》には『食べた魔物のスキルと経験値を獲得できる』という、とんでもない力を秘めていたのだった。  《大喰らい》からは《派生スキル:追い剥ぎ》も生まれ、スキルを奪う対象は魔物だけでなく人にまで広がり、アルゼは圧倒的な力をつけていく。  アルゼは奴隷商で出会った『メル』という少女と、スキルを駆使しながら最強へと成り上がっていくのだった。  スローライフという夢を目指して――。

処理中です...