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第130話 セバスチャンは鉄板です

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 執事長は俺に派遣された経緯を話していった。

 城付けの執事の1人で、引退間近だった。
 ただ、これまで叶わなかった執事長の座を得られる事から残りの勤めを城付けのベテラン執事か新進気鋭の貴族の執事長として過ごすかを選ぶ事になった。

 そんな事を何故話すのかと言うと、俺達の事を見て執事長として俺に仕えたいと心の底から願ったようだ。

 勿論臨時派遣から正式雇用を許可するのは俺だった。
 国王からの推薦状を渡され、俺に選ぶようにとあった。

 勿論摂政が国王代理として作成していた。

 俺は真っ直ぐに目を見た。
 一瞬ビクンとなったが敵意や悪意は感じられない。

「一応派遣期間は1か月になっております。その間にどうされるかお決め頂ければと存じます」

「いや、城にいる時から仕事ぶりを見ていたよ。だからもう決めようと思う。セバスチャン、屋敷を頼むよ」

「セバスチャンとは?」

「俺の中ではセバスチャンとは執事長の呼び名だよ。まあ役職名って事で」

 ついついセバスチャンと言ってしまったので必死に取り繕うが、受け入れてくれたようだ。

「不肖セバスチャン、身命を賭してお仕え致します」

「そんなに畏まらなくても良いよ。俺なんて元はただの高校生なんだし」

「こうこうせいとは?」

「ああ。俺とカレン、えっと欠損修復をしていた彼女の故郷では、まだ職に就かず、学ぶ者のうち俺達の年代の者をそう言うんだ。特に俺とカレンはこの国の常識が欠如しているから突飛な事を言う事もあるけど、生暖かい目で見たり指摘してくれると有り難いです。それと自分の命を大事にしてください」

「私の都合もありますが、何より既に主様には返しきれない恩があるのです。ですからお気になさらず」

「この町に知り合いや親族でもいるのですか?」

「孫がおります。ご主人様がいなければ早晩屍を晒していたはずだと聞いております」

 俺達は知らぬ所で色々な人から恩を感じられていたようだ。

「じゃあ屋敷の運用についてはセバスチャンに任せても良いですか?因みにセバスチャン自身は自衛する力はあるのですか?」

「30代後半までタワーに挑んでおりました。大分錆びついておりますが、盗賊風情に遅れは取りませぬ位の腕があります」

「よし。じゃあお金を預けておくから、足らなさそうなら早目に言ってほしい。それと女性の使用人には俺の寝床に忍び込んだり性的な奉仕は不要だと言っておいて欲しいんです。それとメイド長は決まっているのですか?」

「いえ。メイド長は決まっておりません。城付けのチーフが一時的にメイド長を致しますが、彼女は1か月後には城に戻ります」

 そうして屋敷の運営について取り決めやルール作りを始めていた。
 途中からイリーヌが加わりさくさくと決まっていったが、正直屋敷なんてめんどくさい。

 色々な事を決めていると面識のない貴族が訪れて来たのだが、入居翌日の事でため息しか出なかった。
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