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第125話 不器用な騎士

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 ドアが開かれた時ミラはまだ唖然としていたが、はっとなった時に良い香りがする事にまず気が付いた。
 そして焦点が合わなかった。
 眼の前が青かった。

「1000回目だ!今度こそ受け取ってくれ!もう受け取らない理由もなくなっただろ?」

 そしてついつい受け取った。
 顔からそれを離すと、渡されたのは青いブーケだった。

 恐る恐るブーケを下に降ろすとそこにはネルトンよろしく手を差し出し、見事なほど直角に腰を曲げている騎士団長がいた。

 彼は知っていた。
 何故自分が断っているのかを。
 これまで緩急を付けてプロポーズしてきた。

 1週間毎日訪れたかと思うと1か月音沙汰の無い日もあった。
 そしてこの2ヶ月音沙汰がなく、これまでで最長だった。

 この花は造花だ。
 勿論香水を付けている。
 この2ヶ月音沙汰がなかったのはこれを作る為だ。

 手作りでブーケを渡すのがこの国で身分の高い者が行う最大のプロポーズだ。
 買ってきたのではいけない。
 香水も材料をタワーに自ら取りに行く必要があり、命掛けのプロポーズだ。

 ラミは呆れたが、嬉しくもあった。
 ラミは部屋を見渡し、花瓶にブーケを置くと不器用な騎士の手を両の手で握った。

「俺なんかじゃ君に釣り合わないのは分かっている。俺は君無しでは・・・って!!?あれっ?」

 騎士は断られると思い、必死に食らいつこうとした。
 しかし今までにない温もりを手に感じた。
 そこには無骨な騎士の手を包む女性の手が見えて我が目を疑った。

 立ち上がると目と目が合い、どちらからともなくキスをした。

 しかし・・・
 騎士はドアを閉めていなかった。
 2人がどうしているのか皆から丸見えだった。

 誰かがそっとドアを閉め、その場からそっと離れる。

 そして母君の部屋に集まり、ドアを閉めると馬鹿騒ぎとなった。

 皆が1組のカップルのキューピットになるべく侍女を騙したのだ。
 カレン達がその話を俺の所に持ってきたのだが、初めからノリノリで、知らないのは当事者だけだった。

 ただ、国王が誰かというのはそれとは別だった。

 そんな変?な恋のイベントがあったが、その後翌日には2人が無事に結ばれたと聞いた。

 城には3日滞在して様々な式典に参加したり、研究者等に攻略したタワーについて詳細を伝えていた。
 その間にも屋敷についても話を進めていたが、執事、メイド、料理人といった使用人についてだった。
 各々の長を派遣してもらうので、その人選に追われたりした。
 人選と言っても形式的に面談して採用と告げるだけだった。

 城にいた数日はくたになったが、俺達は屋敷を受け取る為にムランジュの町へと戻る事になった。






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